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鬼帝国編 7

 隠し通路を抜けたユエの周囲には、大量の木箱が置かれていた。開けられた箱や掛けられている布の隙間からは、怪しげな武器の数々が覗いている。


「此処は武器庫ですわ。この国で使われている武器は、ほとんどが魔力を使っていますの。この国に多量の魔力が流れているのは、それを使う為です」


 言いながら、エミルは木箱の一つを開け、中に入っていた小さめの銃をユエに手渡した。ユエは断ろうとしたのだが、エミルに少し睨まれ、渋々受け取る。


「要らないよ、これ」


「何を言ってますの?この国に流れているのは、闇属性に近い魔力ですのよ?貴方は光属性の力を持っているようですけど、それで歯が立つと思います?それに、貴方は魔力も持っていないようですし」


 ユエは黙り込んでしまう。

 光がある限り闇は必ず存在する。光属性の力では闇属性の力には到底適わない。闇属性の力に適う力といえば、また違った系統にはなるが、霊力というものしかない。残念ながらユエは霊力は持っていない。ルイの無属性の力ならば、闇属性の力だろうと何が相手だろうと恐らく勝てるのだろうが…。


「闇属性同士なら力はほぼ均衡、光属性の力よりは役に立ちますわ。そうでしょう?」


 そうはっきりと言われては、もう返す言葉がない。ユエは諦めて銃を身に付けていた長剣と共に、腰のベルトに差しておいた。彼が銃を仕舞う様子を見ながら、エミルが使い方を説明した。

 彼等がそんなやりとりをしていると、武器庫の外の様子を窺っていたサリナが手招きをしていた。


「今なら誰もいないわ、行きましょう」


 先に歩き出したサリナの後に続き、ユエ達も城の中の通路を行く。暫く歩いている内に、不意に城が大きく揺れ、外から騒々しい物音が聞こえて来た。


「な、何なの?」


 ユエが壁に手を付きながら問うと、サリナはあっさりと答えた。


「今、リュクスの指揮するグループに城を攻撃させているのよ。勿論、死人が出ないように気を付けさせているわ。城門を破って中に入ったら、デヴィドを捕らえて…」

「降伏させるんでしょ?言わなくてもわかるよ」


 ユエが半ば呆れたような声で言うと、サリナは肯定の言葉を述べた。思っていたよりも過激なやり方に、ユエは急いだ方がいいのかもしれないと感じた。あれだけ派手に外の攻撃をしているのならば此方の行動に気付く可能性は低いが、何時までもデヴィドが一方的な攻撃を受け続けている訳がない。必ず衛兵や軍人を向けて来るだろう。そうなれば、無血では済まされなくなる。関係のない街の住人までもを巻き込んだ内戦になってしまうかもしれない。それだけは避けたいところだった。城にいるルイも確実に巻き込まれ、危険に晒されるのだから。

 城の中を見回し、ユエは溜息を吐く。今までも旅の中で内戦に巻き込まれる、ということは経験していた。だが、今回は彼一人が巻き込まれた訳ではない。仲間であるルイもそうなのだ。彼だけならば、今のように内戦が酷くなる前に、この国を出ていただろう。しかし、ルイがいる以上、いざとなったら戦う覚悟も必要か――ユエの思考が其処に至った所で、彼はふと、先日現れたDユエのことを思い出した。


――彼奴は、まだこの国にいるんだろうか。


――もし、彼奴が先にルイを見付けたら…。


 あのDユエのことだ、会えば確実にルイの魔力を根刮ぎ奪うだろう。そして、今度は彼がルイを攫うかもしれない。今までにルイを殺そうとした動きは殆どない上、Dユエは以前、彼女を殺せなかった。彼女の命は少なくとも奪われないと思うが、彼女を助けに来たユエの命は、絶対に奪いに来るだろう。そうならない為にも、何としてでも誰よりも早くルイを見付けなければならない。

 そう考えて意識を現実に戻した所で、ユエの視界に見知った者の姿が、一瞬だけ映った。同時に、ユエは背筋が凍り付くような感覚を感じた。数歩前の通路を横切ったのは、紛れもなく、彼と同じ姿の者。

 ユエは慌てて走り出し、その後を追い掛ける。サリナ達が声を掛けて来たが、もうユエの耳には届いていなかった。


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