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第9話 採点(さいてん)
魔王の体には無数の切り傷があり、血が流れている。しかし、魔王の表情に焦りはなかった。あくびを噛み殺すように、彼は傷口を手で覆った。すると、見る間に傷が塞がり、煙となって消えていく。
超速再生。
「貴様の剣技は素晴らしい。人間という種の限界点に達していると言ってもいいだろう」
魔王はアレンを見下ろす。そこにあるのは、強敵に対する敬意などではない。よくできた玩具を見るような、冷徹な「評価」だった。
「だが、それだけだ」
「なに……ッ!?」
「余は幾度も蘇り、貴様のような『勇者』気取りを何千と葬ってきた。貴様もまた、歴史に埋もれる無謀な『噛ませ犬』の一匹に過ぎん」
魔王の手から漆黒の魔力が溢れ出し、巨大な槍の形を成していく。その魔力密度は、先ほどまでの比ではなかった。
「勇者とは、理を超越した存在だ。誠に恐ろしい。だが貴様は、所詮は枠の中の優秀な戦士。……余興は終わりだ」
絶望的な力量差。アレンの全力の剣技も、魔王にとっては「人間にしては頑張った」程度の評価でしかなかったのだ。それでも、アレンは剣を下げなかった。
「黙れ……!俺は、俺たちは必ず勝つ!」




