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ぼくは勇者の荷物持ち  作者: 九条 綾乃


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第8話 勇姿(ゆうし)

「う、あ……ああああああ!!」


 僕の慟哭をかき消すように、凄まじい風圧が巻き起こった。


「おおおおおおおッ!!」


 アレンだ。

 仲間たちの死を目の当たりにした勇者が、咆哮と共に地を蹴った。


 速い。


 砕けた足を引きずっていた姿が嘘のようだ。アレンは残った生命力のすべてを燃やし、白銀の流星となって魔王へと肉薄した。


 キィィン!


 金属音が響く。魔王は玉座に座ったままアレンの聖剣を、障壁で防ごうとした


――その瞬間だった。


「なめるなァッ!!」


 アレンの手首が返り、聖剣がまばゆい光を放つ。

 秘剣『断空』。魔王の障壁がガラスのように砕け散った。


「ほう?」


 魔王の眉が動く。

 驚いた時には、もう遅い。アレンの剣先は魔王の喉元を捉えていた。魔王は咄嗟に首を逸らしたが、その頬に鮮烈な一太刀が入る。紫色の血が舞った。


「チッ、浅いか!」


「……座ったまま相手ができると思ったが。......傲慢だったようだ」



 魔王が玉座から立ち上がった。その全身から、どす黒いオーラが噴出する。空間そのものを圧迫するような覇気。常人なら立っているだけでショック死するレベルの威圧感だ。

 だが、アレンは退かない。


「聖光連斬!!」


 アレンが舞う。それは、傷ついた体とは思えないほど洗練された剣舞だった。

 魔王が放つ漆黒の雷を紙一重でかわし、魔力弾を剣で切り払い、死角へと回り込む。

 

 一撃、二撃、三撃。

 アレンの剣が魔王の衣を切り裂き、その肌に傷を刻んでいく。


 ……強い!


 僕は柱の陰で、息を呑んで見つめていた。


 これが勇者アレン。

 僕の自慢の幼馴染。


 魔王の猛攻を凌ぎ、逆に追い詰めている。いける、今の彼なら勝てる!


「はぁぁぁぁッ!!」


 アレンの渾身の一撃が、魔王の胸板を捉えた。


 ガガガガッ!


 火花が散り、血しぶきが飛ぶ。魔王が数歩、後ろへとたたらを踏む。


「……見事だ」


 魔王が低く呟いた。


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