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第6話 供物(くもつ)
「客か。……いや、掃除の時間か」
魔王が指先を軽く弾いた。ただそれだけの動作で、空気が圧縮され、見えない砲弾となって飛来した。狙いはアレンではない。一番後ろにいる、無防備な僕だ。
「――させねぇよ!!」
ドゴォォォォォン!!
爆音が鼓膜を揺らす。僕の目の前で、土煙が舞い上がった。
「ガ、ガイル……?」
煙が晴れると、そこには巨漢の戦士が立ちふさがっていた。
残っていた右腕で巨大な斧を構え、衝撃を受け止めたのだ。
だが、その代償はあまりにも大きすぎた。斧は飴細工のように捻じ曲がり、ガイルの全身からは夥しい血が噴き出している。
「ガハッ……!へ、へへ……。かすり傷、ひとつ……つけさせやしねぇぞ!……」
ガイルが膝をつく。彼は振り返り、僕をちらっと見た。そして、血まみれの顔で笑った。
「よぉ、相棒……。今日の飯、まだ作ってもらってねぇな……。お前の作るシチュー、食べてえな」
「ガイル!喋るな、今ポーションを!」
「いいんだ。……俺はここまでだ」
鉄の巨塔が崩れるように、ガイルが倒れた。
動かない。
ガイルの体が、急速に冷たくなっていくのがわかった。
鉄壁の戦士は、ただの一撃を防いだだけで、その命を燃やし尽くしてしまった。




