第5話 謁見(えっけん)
「行くぞ。……これで、全部終わらせる」
アレンが合図を送ると、ガイルが残った片腕で扉を押し、マリアが最後の魔力を振り絞って照明魔法を灯した。重厚な地響きと共に、扉が開かれる。溢れ出すのは、肌を刺すような濃密な殺気と、底知れぬ闇。
僕はリュックのベルトを握りしめた。この中には、予備の武器、食料、ポーションがそろっている。
アレンは反対したけれど、僕はここに来てよかったと思っている。たとえ戦えなくても、最後まで彼らの背中を追い続ける。それが僕の選んだ道だ。
アレンが足を踏み出す。その背中が、どこか寂しげに見えたのは気のせいだったのだろうか。
玉座の間は、静寂よりも深い「虚無」に満たされていた。
天井は見えないほど高く、足元には血のように赤い絨毯が、遥か奥の闇に沈む玉座まで伸びている。
そこに、奴はいた。
魔王。
人類の天敵。
漆黒の衣を纏い、青白い肌をした青年のような姿。
ともすれば、人のようにも見える。
だが、生物としての「格」が決定的に違った。
ただそこに座り、頬杖をついているだけ。それだけで、空間が歪んで見えるほどの重圧が僕たちの肺を押し潰そうとしてくる。
「……ふむ」
魔王が、ゆっくりと瞼を開いた。
その瞳は赤く、底なしの沼のように暗い。
視線が、僕たちを射抜く。
いや、正確には先頭のアレンを通り越し、最後尾にいる僕へと向けられた気がした。




