第4話 羈絆(きはん)
――信頼しているか、だって?そんなこと、聞くまでもないじゃないか。
あの日、僕を戦いから遠ざけようとしてくれた。それは、誰よりも僕の命を重く考えてくれていた証拠だ。
「当たり前だろ」
僕は努めて明るい声を出した。
「お前は最高の勇者だよ、アレン。ガイルもマリアも、世界一の英雄だ。僕なんかをここまで連れてきてくれた、最高の仲間だよ」
心からの言葉だった。
僕の言葉に、アレンの肩がびくりと揺れた。
彼はゆっくりと振り返った。血と泥にまみれ、苦痛に歪んだ顔。その瞳の奥には、あの日、僕を突き放そうとした時と同じ、悲痛な色が宿っていた。
「……そうか。なら、一つだけ約束してくれ」
アレンは、ぐっと剣の柄を握りしめた。
「もし俺になにかあったら……お前は逃げろ。逃げて、故郷に帰れ。こんな荷物なんか捨てて、畑を耕して、好きな娘と結婚して……1人の人間として、幸せに暮らすんだ」
「え……?」
「英雄なんて柄じゃないだろ、お前は。……普通に生きて、普通に年をとって、幸せに死ぬ。それがお前には一番似合ってる」
それは遺言のようにも聞こえた。国の命令で連れ出された僕を、「ただの人間」として村へ帰そうとしてくれている。勇者としての使命よりも、幼馴染としての友情を優先してくれているのだ。
「なにかあったらなんて言うなよ!魔王を倒して、一緒に帰ろう」
「……そう、だな。うん......そうだ。」
アレンはあらぬ方を向き、微かに笑った。
どこか憑き物が落ちたような、安らかな表情だった。




