第15話 逆転(ぎゃくてん)
黄金の奔流が、玉座の間を白く染め上げた。
その光を浴びた瞬間、魔王の顔から余裕が剥がれ落ちた。
さっきまでの傲慢な王の姿はどこにもない。
まるで、天敵でも見るような、底知れぬ恐怖に顔を歪めている。
「もう来たのか!そんなッ!」
魔王の顔は驚愕に強張り、玉座を蹴り倒し、無様に後ずさった。
その目は、僕という存在の奥にある「何か」を見て怯えていた。
アレンに向けていた値踏みするような視線とは違う。
生物としての本能が、僕を捕食者だと認識している目だ。
僕は魔王に歩み寄る。
「なぜ今なのだ!来るな、来るなァッ!!」
魔王は金切り声を上げ、影から現れた最精鋭の魔族たちを僕へとけしかけた。
部下たちが武器を構えて殺到するその隙に、魔王は背を向け、広間の奥にある隠し通路へと走り出す。
世界の半分を統べる王が、今はただの死に怯える小動物のように逃げ惑っている。
「余の盾になれ!時間稼ぎをしろ!」
僕は、見苦しく叫ぶ魔王と、迫りくる魔族の群れを冷めた目で見つめた。
……遅い。
魔族たちが武器を振り上げる動作が、まるで水中にいるかのように緩慢に見える。
悲しみも怒りも、遠い。脳内のノイズが消え、世界が静けさに包まれている。
これが……勇者?




