第13話 成就(じょうじゅ)
アレンは僕の手を強く掴んだ。
「『お前』が、勇者だ」
アレン。何を、言っているんだ?
「俺は……お前という『兵器』を、無事に魔王の元まで運ぶための……使い捨ての『鞘』だったんだ」
鞘?兵器?
「お前の中には、世界を滅ぼしかねない力が埋め込まれてる。それが勇者の力。それが神の啓示だ。……愛する者の死が、そのスイッチになるってさ」
アレンは血を吐きながら、必死に言葉を紡ぐ。命を削りながら、最期に真実を伝えようとしていた。
「俺が……魔王に勝てば……お前は覚醒しなくて済んだ。ただの荷物持ちのまま、俺の親友のままで……故郷に帰れたのに」
アレンの手が、僕の頬に触れた。指先は氷のように冷たかった。
「覚醒すると、戦いの『鬼』になるって……。優しいお前に、戦いなんてさせたくなかった。……守りたかった、お前だけは」
「アレン、待って!やめてよ」
「……ごめんな。弱くて、ごめん……」
ふっ、と頬に触れていた手の力が抜けた。ドサリと、アレンの手が床に落ちる。見開かれた碧色の瞳は、もうどこも映していなかった。




