第11話 散壊(さんかい)
その瞬間は、永遠のように長く、瞬きよりも短かった。
魔王の手から放たれた無数の黒い槍が、アレンの体を貫いた。防御など意味をなさなかった。鎧ごと肉を抉り、骨を砕く鈍い音が、静まり返った広間に響き渡る。
「が、ぁ……ッ」
アレンの口から、大量の血が噴き出した。膝から崩れ落ちる。支えを失った体は、糸の切れた人形のように石畳へと倒れ込んだ。
それを見た魔王は、もう僕たちに興味を失ったかのように背を向けた。
「アレン!!」
僕は絶叫した。
もう、言いつけなど守っていられなかった。
僕はリュックを背負ったまま走り出し、血の海に沈む親友の元へスライディングするように滑り込んだ。
「しっかりしろ!今、回復薬を……!」
震える手でポーションの蓋を開けようとする。けれど、アレンの血に濡れた手は滑り、うまく開けられない。焦りが指先を凍らせる。そんな僕の手を、アレンの冷たい手が弱々しく覆った。
「……いい、んだ……もう。逃げろ。あいつが後ろを向いてるあいだに……」
「よくない!嫌だ、死ぬな!お前は勇者だろ!?約束したじゃないか、一緒に帰るって!」
「……はは、勇者、か……」
アレンは自嘲気味に笑い、虚ろな瞳で天井を見上げた。その目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。




