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短編

とある勇者のフルパワー

掲載日:2025/10/22

いつか、どこかで見たような良くある話その2です。


ノリと勢いだけで書いてますので、御笑覧くださればと思います。

「さて、お主には特典付きの転生をあげよう」


 目の前の白髪白髯の見た目お爺ちゃんがあたしの目を見て言う。なんか偉そうだなと思うけど、実際偉い存在なんだと思う。だって最初の一言が、「儂はお主らの世界では神とか呼ばれておる者じゃ」だったから。


 なんで、こんな状況になったかっていうと。


 あたしは川で溺れてた少年を助けようとしたんだけど、逆にしがみ付かれて溺死したらしい。けど、目の前のお爺ちゃんに訊いたら、あの少年は助かったらしいので、それだけはホッとした。


 で、その少年は後に世界を救う発見をする筈だった。その生命を救ったのだという事で特典付き転生を貰える事になったんだけど……


「お主の希望はあるかの?」


 なんて聞かれたので、剣道部でインハイ覇者だったあたしは、


「何でも斬れる最恐の剣士にして下さい」


 なんて、脳筋脳で反射的に答えてしまって。


「お主のその特典、心して使うのじゃよ」


 なんて言われて新たな世界へと転生したのだけど。


 転生先の世界では平民に生れ、生れた時から前世記憶を持っていて、しばらくは羞恥プレイか!? ていう体験もしたけれど。


「えいやっ!」


「参った!」


 五歳になる頃には、街で向う所敵無しの剣の腕前だった。何せあたしの握る木剣は、相手がどんな武器を使おうが、それを叩っ斬ってしまうから。

 剣道部インハイ覇者だった時の剣技は、五歳だったあたしの身体でもいかんなく発揮できてしまったから。


 それからも、あたしは研鑽を積んで前世の時より更に剣技を磨いていったのだけど。

 十五になる頃には王都にもあたしの噂は届いてしまって。ある日、この国の王様に呼び出されてしまった。


「そちの剣の腕、余人の追随を許さぬと聞き及んでおる。今この場で余にも披露してもらおう。我が国最強の騎士である、騎士団長が相手じゃが問題あるまい?」


 なんて、言われてしまって。相手がこの国最強と言われてしまっては、あたしも腕試ししたい欲求が強くなってしまい。騎士団長と手合わせした結果、あたしは木剣で相手の盾も剣も叩っ斬ってしまった。

 この結果に観戦していた皆が絶句していたけれど。後で聞いたところ、騎士団長の剣と盾はダイヤモンドより硬いヒヒイロカネで作られてるって知って、神様良い仕事してる、なんて思ったりしたんだけど。


 やっぱり世の中そんな上手くできてなくて。あっさり騎士団長に勝ってしまたあたしは、


「そちも、この国が今魔王軍の攻撃を受けている事は聞き及んでいると思う。そこで、勇者として魔王軍を殲滅してきてもらおう」


 なんて下命されてしまい。魔王ってどれくらい強いんだろう、なんて思ってしまったあたしは。


「はい、喜んで拝命いたします」


 なって言っちゃって。いやー、若気の至りというのはこの事ね、なんて思いながら。魔王城まで快進撃を続けてしまった。


 そして、今目の前には魔王がいるんだけど。これが、強いのなんのって。あたしも全力を尽したんだけど、相打ちにすら持ち込めなかった。

 何度斬り付けようと、魔王は片手を振るだけであたしの剣を捌いてしまって。

 何度も何度も同じ事を繰り返して。あたしの体力が削がれて、立ってるのもやっとっていう時になって。


「人間の勇者よ。そなたは、人間としては最強かもしれんが、儂の敵では無かったな。そろそろ去ね」


 なんて言われて。


 あたしは、恥辱と怒りに我を忘れて。


 自称神様に言われた事もすっかり忘れて。


 残った体力以上のフルパワーで木剣を魔王に斬り付けたら。


 魔王は驚愕と恐怖に顔を歪めてた。


 あたしの木剣は魔王ごと。


 この世界を真二つに切り裂いてしまってた。


* * *


「お主のその特典、心して使うのじゃよって言ったじゃろうが! このバカモンが!」


 あたしは目の前の、自称神様のお爺ちゃんに思いっ切り叱られているのでした。



お読み下さいました皆様、ありがとうございます。

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