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ー 逃国の試練 ー

森をさらに進む中、エリスが小さな清流のそばで足を止めた。昼前の陽光は影を潜め月光が水面に反射し、彼女のネックレスが静かに輝く。信太は疲れ果てて岩に腰を下ろし、息をついた森の重い空気とシャドーウルフとの戦いの緊張がまだ体に残っている。

エリスは水晶を手に持つと、軽く振って魔物の気配を確認した。

「よし、しばらくは安全そう。」 エリスは水晶をポーチに戻し、清流のそばにしゃがんで水をすくった。「信太、ちょっと休憩。ルミエ村まではまだ遠いけど、ここなら少し落ち着けるよ。」

「落ち着くって…さっきのシャドーウルフで心臓止まるかと思ったわ。」 俺は苦笑しながら、冷たい水で顔を洗った。エリスのネックレスが水面に映り、まるで星のようにきらめく。

エリスは水辺に座り、膝を抱えて空を見上げた。「ねえ、信太。ヴェリス王国のおとぎ話、聞いたことある?」

「おとぎ話? いや、俺、この世界に来てまだ1日目だぞ。聖教が怖いとか、魔物がヤバいってことしか知らないよ。」 俺は肩をすくめたけど、彼女の声の柔らかさに少し興味が湧いた。「どんな話だ?」

エリスは小さく微笑み、清流のせせらぎに耳を傾けながら話し始めた。「ヴェリス王国には、昔から伝わる物語があるの。『王の選定』ってやつ。千年前、星の崩壊で古代の民が滅びた後、この大地は混沌に飲み込まれた。魔物がはびこり、人々は希望を失ってた。そんな時、星脈に選ばれた一人の若者が現れたんだ。のちにヴェリス王国の初代皇帝になる人なんだけどね?」

「選ばれた、って…なんかRPGみたいだな。」 俺は笑ったけど、エリスの真剣な目に気圧された。

「信太が言ってることはよく分からないけど。そっちの世界だとあーるぴーじーっていうのね?」 エリスはくすっと笑い、話を続けた。「その若者は、星脈の力を宿した『星の遺産』――特別なレガリアを持ってた。それが、ヴェリス王国の初代国王になる証だった。レガリアは、持つ者の心を試すんだって。欲や恐怖に支配された者は、その力を制御できずに自滅する。でも、純粋な意志と勇気を持つ者には、星の力を操る力を与えた。それが鏡と剣と宝石を埋め込んだネックレスなんだって」

「ネックレス…?なんか、お前のネックレスだったりしてな?」 俺は半分冗談で言ったけど、エリスがネックレスに触れると、彼女の目が一瞬揺れた。

「ふふ、まさか。このネックレス、ただの貰い物だよ。育ての親からもらったけど、そんなすごいものじゃないって。」 エリスは軽く笑って誤魔化したけど、ネックレスを握る手には少し力が入っていた。「でも、このおとぎ話、子供の頃から大好きだった。伝説のレガリアを持った若者が、仲間と一緒に魔物を倒して王国を建てるなんて、ワクワクするでしょ?」

「へえ、お前も子供の頃は普通に夢見てたんだな。」 俺は彼女の笑顔に釣られて笑った。エリスって、いつも自信満々で無鉄砲に見えるけど、こういう話をする時の彼女は、なんか無垢な感じがする。

エリスは水面に小石を投げ、波紋を見つめながら続けた。「聖教は『王の選定』をただの物語って扱ってるけど、昔はもっと大事にされてたらしい。初代国王は、レガリアを使って魔物を封じ、ヴェリス王国を建国した。でも、聖教が力を持つようになって、王家の話はどんどん薄れていった。レガリアの話も、いつしか忘れられたんだって。」

「忘れられたって…なんか勿体ないな。そんなカッコいい話なのに。」 俺は水面に映る月を見ながら言った。「で、そのレガリアって、今どこにあるんだ? まだどっかに眠ってるのか?」

エリスは少し考えて、首を振った。「さあね。聖教が隠してるって噂もあるけど、誰も本物を見たことないよ。もしかしたら、ルミエ村の灰の民が何か知ってるのかも。灰の民って、聖教が隠した歴史に詳しいらしいから。」 彼女はネックレスを軽く叩き、笑顔を見せた。「ま、レガリアなんてものがなくても、私と信太なら魔物くらい倒せるよね!」

「いやいや、さっき死にそうだったんだからな!今年で29歳のご老体にムチを打つような真似をさせないで下さい、本当に勘弁して下さいよマジで」 俺は笑いながら突っ込んだけど、エリスの言葉に妙な安心感があった。彼女が星の欠片の話にこんなに夢中になるなんて、なんか意外だった。

「ねえ、信太。」 エリスが急に立ち上がり、いたずらっぽく笑った。「王の選定の話、続きがあるよ。レガリアのネックレスは、一人じゃ輝かない。導き手がいて、信じる心があって、初めて本当の力を発揮するんだって。どう? 私と一緒に、おとぎ話みたいな冒険、やってみない?」

「おとぎ話みたいな冒険って…お前、ほんと無茶振り好きだなぁ…。」 信太は笑いながら立ち上がったけど、不思議と胸の奥で何か熱いものが湧いていた。「別にあてもないからな、エリス。ルミエ村行って、灰の民に裂け目のこと聞いて、ついでにお前のネックレスの話も暴いてやるよ!」

エリスの笑顔が、清流の水面に映る月より眩しかった。「それでこそ、ダストである信太ね! さ、行くよ。森の奥、もっと試練が待ってると思うから、覚悟して!」

彼女は剣を握り直し、森の奥へ進む。俺は短剣を手に、エリスの後を追った。彼女のネックレスが月光に輝き、まるで星の欠片のような光を放っていた。エリス自身が気づいていない秘密が、あの輝きに隠されている気がしてならなかった。


森に入ってだいぶ時間も経ち野宿もした。戦いのあとだと体が緊張するのか眠ることにも時間がかかって疲労が抜けない。そんな状態の中、疲労と共に何時間も足を進めていると、森の木々がまばらになり、遠くに開けた平原が見えてきた。エリスが足を止め、水晶を手に持つ。「…よし、魔物の気配はなし。森を抜けたよ、信太。」

「マジか! やっとか!」 信太は安堵の息を吐き、汗で濡れたマントを脱いだ。だが、エリスの表情が硬いままなことに気づく。「…どうした? 何か変か?」

エリスは眉を寄せ、平原の先を見つめた。「ルミエ村はあの丘の向こう。でも…なんか、嫌な予感がする。聖教の斥候が近くにいるかもしれない。」 彼女はポーチから小さな望遠鏡を取り出し、丘の頂上を観察した。「…やっぱり。馬に乗った騎士がいる。聖教の紋章だ。」

「聖教!? なんでここに!?」 信太は声を低くし、木の陰に身を隠した。心臓が早鐘のように鳴る。

「たぶん、何かあったんだ。ルミエ村へ向かってる。」 エリスは望遠鏡をしまい、剣の柄に手を置いた。「ルミエ村に行くには、あの丘を越えないといけない。でも、正面突破は無理。騎士は三人、馬に乗ってるから速い。」

「三人…どうすりゃいいんだよ。」 信太は短剣を握りしめたが、魔力の火花や風で騎士を倒せるイメージが湧かない。シャドーウルフとは勝手が違う。

エリスは少し考え、目を輝かせた。「…よし、陽動するよ。信太、私が騎士を引きつけるから、その隙に丘を越えてルミエ村に走って。村の入口に古い井戸があるから、そこに隠れて待ってて。」

「陽動!? お前一人で!? 無茶だろ!」 信太は慌ててエリスの腕を掴んだ。「俺も一緒に戦う! 魔力だって、なんとか使えるだろ!」

エリスは信太の手を優しく振りほどき、笑った。「信太、ありがと。でも、私の方がこの辺の地形を知ってるし、騎士を撒くのは得意なの。ルミエ村にたどり着くのが大事でしょ? 信じなよ、私を。」 彼女のネックレスが一瞬強く輝き、まるで彼女の決意を映すようだった。

「…、わかった。けど、絶対無事で戻れよ!」 信太は渋々頷き、エリスの目を見つめた。

「約束!」 エリスはウインクし、ポーチから小さな煙玉を取り出した。「これで騎士の目をくらますよ。準備できたら、丘に向かって全力で走って!」

エリスは灰色の石を地面に叩きつける、濃い煙が一気に広がった。彼女は剣を抜き、わざと木の枝を折って音を立てながら、平原の反対方向へ走り出す。「聖教の犬ども!」 彼女の叫び声が響き、馬の蹄の音が遠ざかっていく。

信太は煙の中を抜け、丘に向かって走った。足がもつれそうになるが、エリスの「信じなよ」という言葉が頭を駆け巡る。丘の頂上にたどり着き、振り返ると、遠くで煙と騎士の影が動いているのが見えた。エリス、頼む、うまく逃げてくれ…!

息を切らしながら丘を越えると、眼下に小さな村が見えた。ルミエ村だ。木造の家々が点在し、畑や風車が静かに揺れている。ヴェリス王国の喧騒とは違い、どこか穏やかな雰囲気が漂う。だが、村の周囲には簡素な木の柵があり、武装した男が数人見張っている。

信太はエリスの指示を思い出し、村の入口近くの古い井戸を探した。苔むした石造りの井戸は、すぐに目についた。信太は周囲を警戒しながら井戸の陰に身を隠し、息を整えた。エリスは無事か? 騎士に見つかってないよな? 不安が胸を締め付ける。

だいぶ時間が経っただろうか、遠くから軽い足音が聞こえてきる。信太は短剣を握り、身構えた。小刻みに震える短剣をもう一度握りなおす。

だが、井戸の向こうから現れたのは、汗だくで息を切らすエリスだった。彼女のマントには泥と葉っぱがつき、髪は乱れているが、怪我はなさそうだった。

「エリス! 無事だったのか!」 信太は井戸から飛び出し、彼女に駆け寄った。

「ふふ、約束したでしょ? 騎士は森の奥まで引っ張って、川沿いで撒いたよ。」 エリスは得意げに笑っていたが今も息を切らしている、追手が激しいことが伺える状態だった。額の汗を拭う。「信太、よくルミエ村まで来てくれたわね。さ、村に入ろう!」

「待て、ちょっと休めよ! 無茶しすぎだろ!」 信太はエリスの腕を掴み、彼女の疲れた顔を見た。だが、エリスは笑顔を崩さず胸を叩く

「大丈夫、私、こういうの慣れてるから。ほら、行くよ! ルミエ村の灰の民が、信太の元の世界への鍵を持ってるかもしれないんだから!」 彼女は信太の手を引き、村の入口へ向かった。

村の門番が二人を怪しげに見つめたが、エリスだと理解すると、男は小さく頷き、門を開けた。「…入れ。だが、変な真似はするなよ。」

信太はエリスに目をやり、ますます疑問が深まった。ルミエ村もそうだがエリスは何者なんだ?明らかに普通じゃない。灰の民との繋がり、ルミエ村への伝手、エリスは一体何を隠してるんだ?

ルミエ村の中心には、大きな木造の集会所があった。エリスは慣れた足取りで集会所に向かい、扉を叩く。扉が開くと、髭を生やした中年男が現れた。革の鎧に身を包み、腰には剣が下がっている。男はエリスを見て、驚いたように目を細めた。

「エリス…! 生きてたのか!心配したぞ!」 男は笑顔になり、エリスを軽く抱きしめた。「お前がヴェリスを出たと報告を受けて、2年間ずっと消息不明だったぞ。セレナ婆さんが心配してたんだ。」

「ふふ、ジークおじさん、相変わらず元気そうね。…セレナさんのところにも顔出さないと」 エリスは笑い、男の胸を軽く叩いた。「ジークさん、この人は信太。ダストで、魔力持ちなの。それで、灰の民を探してるの。裂け目のこと、知りたいんだけど。」

ジークと呼ばれた男は信太をじろりと見て、顎を撫でた。「ダストで魔力持ち、か。珍しいな。…まあ、入れ。つもる話もあるだろう。大丈夫奢るぜ」

集会所の中は、簡素だが暖かい雰囲気だった。木のテーブルには地図や書物が広げられ、壁には武器や魔術の道具が並んでいる。数人の男女が信太とエリスを警戒するように見つめるが、ジークが手を上げると静かになった。部屋の隅では、数人が注がれた麦酒やハーブ酒を木製のジョッキを片手に、静かに話し合っていた。火炉の炎が揺れ、部屋に温かな光と煙の香りを添えている。

しかし、どことなくなぜかピリピリしている。なぜだろうか?

ジークはエリスをテーブルの一つに案内し、信太には荷物を置く場所を従業員であろう女性に指示し、案内させる。「お前、荷物をあそこに置いてきな。」 ジークの声に、信太は頷いて一時的に離れる。

ジークはテーブルに置かれた水差しからハーブ酒を注ぎ、エリスに杯を差し出した。「ほら、エリス。久しぶりだ、軽く飲め。ルミエ村のハーブ酒、ヴェリスの安酒よりマシだろ。」 彼は自分の杯を手に、軽く笑ったが、その目は真剣だった。

エリスは杯を受け取り、香りを嗅いで小さく微笑んだ。「ジークおじさん、相変わらずお酒好きだね。…でも、こんな時に飲んでていいわけ?」 彼女は杯を軽く傾け、苦みのあるハーブ酒を一口含んだ。喉に広がる熱が、森での緊張を少しだけほぐす。

「いいさ。酒は頭を冷やすもんだ。聖教の目が厳しくても、こうやって仲間と杯を交わす時間がなきゃ、村のみんなもダメになっちまう。」 ジークは杯をテーブルに置き、声を低くした。「エリス、ルミエ村の今を話したい。お前がヴェリスで何をしてたかは知らねえが…戻ってきたのは、ただの偶然じゃねえよな?」

エリスはネックレスに触れ、杯を握る手に少し力を込めた。「…偶然かどうかは分からないよ。信太を助けたのも、なんか、放っておけなかっただけだし。」 彼女はハーブ酒をもう一口飲み、目を細めた。「けど、ジークおじさん。灰の民って、まだ聖教と戦う気でいるんだよね? …セレナさんがいつも言ってたわ、『真実は星の光の中に隠れてる』って…その真実、灰の民が守ってるんでしょ?」

ジークは杯を口に運び、ゆっくりと飲み干してから答えた。「俺も詳しくは知らねぇ。聖教はヴェリス王国の歴史を歪めて、星脈の力を独占しようとしてる。灰の民はな、ただ逃げてるわけじゃねえ。古代の民の知識、レガリアの秘密、裂け目の役割…それらを聖教の手から守り、いつかこの国をもとあった形に戻そうと動いてるってことは知ってる。」 彼はテーブルに地図を出し指さすと、声をさらに低くした。「ルミエ村は拠点の一つだが、最近、聖教の斥候が近づいてきてる。時間はそう多くねぇと思う。村の奴らもピリピリしてるのもそれが原因だ。」

エリスは集会所へ入った時の緊張感は聖教の動きが活発になってきたからかと感じた。

「村もそんなに下手なことは出来ねぇ、下手すると聖断が下って村を襲うことがあるかもしれない、そうなれば俺もばあさん連れてどこか遠くに行かないといけないな。最近だと村を離れる人間たちが増えた。外の斥候見たろ?村が監視対象になってるのは間違いねぇな…しかし、最近の聖教はあまりにも動きが活発になってるな隣村にも調査が入ったらしい…」

ジークは少なくなったハーブ酒が入った杯に視線を落とす。調査と言っているが、いちゃもんに近い疑惑を掛けて村に入り村民の何名かをヴェリスに連れていき拷問に近い形での尋問を行う。

エリスはハーブ酒の残りを一気に飲み干し、杯をテーブルに叩きつけた。火炉の炎が揺れ、彼女の金髪に赤い光を投げかける。「ジークおじさん、聖教のやつら、なんでそこまで必死なの? レガリアとか裂け目とか…そんなに怖いものなの?」

ジークは新しいハーブ酒を瓶から注ぎ、杯をエリスに滑らせた。自分の杯にも酒を満たし、深いため息をついた。「…怖えんだよ、聖教の連中にとっちゃな。レガリアや裂け目は、聖教の支配をひっくり返す力を持ってる可能性があるらしい。古代の民が残した力は、聖教の教義じゃ『神の御業』ってことにされてるが、実際は制御しきれねえ力だ。」 彼は杯を手に持ち、火炉の光を見つめた。「聖教はそれを独占しようとしてるが、ダスト…なぜか奴らはダストを徹底的に潰しに掛かる、多分だが奴らの計画にはダストは計画が狂う何かがあるんだろう。だから、村々に『調査』って名目で圧をかけて、怪しい奴を片っ端から潰そうとしてるんだ。」

エリスはジークの言葉に目を細め、滑らせられた杯を手に取った。ハーブ酒の香りが鼻をくすぐるが、彼女の心は聖教の非道な行いに囚われていた。「…ダストが聖教の計画を狂わせるって、どういうこと? 信太みたいな人が、なんでそんな脅威なの?」 彼女は杯を軽く傾け、酒の苦みを味わいながらジークを見つめた。

ジークは杯をテーブルに置き、火炉の揺れる炎をじっと見つめた。「わからねぇ、事実として分かっていることは聖教の奴らはダストをひっ捕らえてる。俺が知ってることはこの点だけだな…」

信太が荷物を置いて従業員に案内されながら、エリス達が座っているテーブルに座る。真剣な面持ちで何を話しているのか気になるところだったが、会話を邪魔するわけにはいかない

「信太、戻った! ちょっと話してたけど、飲む? ルミエ村のハーブ酒、結構いけるよ。」

「いや…今はいいかな。なんか、かなり真剣な雰囲気だし。」 信太は苦笑し、テーブルの地図やジークの鋭い目に視線を移した。「聖教の話、ちょっと聞こえたけど…ダストがそんなヤバい存在って、マジかよ?」

ジークは信太をじろりと見て、杯を手に取った。「マジだ、若造。お前が魔力持ちなら、聖教の目にとまるのは時間の問題だ。ルミエ村は一時的に安全だが、聖教の斥候がうろついてる。村が聖断を受けねえよう、俺たちも慎重に動かなきゃならねえ。」 彼はハーブ酒を一口飲み、信太に視線を固定した。「エリスが連れてきたってことは、お前には何かがあるのかもしれねぇ、が下手なことをすると聖教の奴らがこの村への調査が入る。」

エリスは神妙な面持ちでネックレスを握りる、信太に軽く肩をぶつけた。「ほら、信太! ジークおじさん、暗い雰囲気だと悲しい雰囲気になるだけだよ!何か食べるもの無いの?森を抜けてきたからお腹減っちゃって」

彼女はハーブ酒を飲み干し、杯をテーブルに置いた。だが、その目はジークの言葉を反芻するように、少し曇っていた。

ジークはエリスの言葉に小さく笑い、杯を手に取った。「食い物か。相変わらず腹ペコだな、エリス。よし、厨房に何か残ってるか見てくる。…だが、若造。」 彼は信太に鋭い視線を向け、声を低くした。「エリスが明るく振る舞ってるが、聖教の目はすぐそこだ。変な動きはするなよ。村の皆が、お前みたいなダストを匿うリスクを背負ってるんだ。そこは分かってるな?」

信太はジークの視線に耐え、拳を握った。「…分かった。俺、目立たないようにする。エリスに迷惑かけたくない、村の人にも。」 彼はエリスを見、彼女の曇った目に気づいた。

「エリス、大丈夫か?」

エリスはハッとして、笑顔を取り戻した。「あ、うん! 大丈夫、ただ…ジークおじさんの話、ちょっと重かっただけ。聖教がダストをそんなに恐れてるなんて、信太って、めっちゃ重要人物なのかもね!」 彼女は無理やり明るく振る舞い、テーブルの上に置かれた空の杯を弄んだ。「ねえ、ジークおじさん、セレナさんに話してよ。セレナさん、…まだルミエ村にいるんだよね?信太の件とかいろいろ、直接聞きたい!」

ジークは厨房へ向かう前に立ち止まり、深いため息をついた。「セレナ婆さんか…ああ、分かってると思うが、村の北の外れに住んでる。小屋で薬草育てて、ひっそり暮らしてるよ。体が弱ってきてるからお前の顔を見せたら元気が出るだろう、夕方の配達もあったから寄った時に婆さんに話しておくよ、婆さんが何か知ってるかもしれねぇからな。」


集会所でのジークとの会話は、信太がこの世界に来てから新たな疑問を生み出す結果になっていた。灰の民に関する情報は村民にはほとんど伝わっていないようで、まるで意図的に隠されているかのようだった。ジークが注文した簡素なパンとスープで腹を満たした後、ジークとは別れ、エリスと信太は村で聞き込みを試みたが、村民は口を閉ざし、決定的な情報は得られなかった。


この小説はGrokにて生成した文章を含んでいます。

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