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ー 逃国の試練 ー

エリスの軽やかな足音が、ヴェリス王国を離れた道に響く。エリスの知り合いの商人の馬車に隠れ衛兵の検問を抜け出して歩くこと1時間ほどだろうか、検問を出し抜いたときはとても安堵したが、どうもこの世界の気候と日本との気候の違いに苦しむ、それでも旅路は容赦のない日光が照らしているが。信太は彼女の後ろを必死で追いかけた。

「エリス、ルミエ村ってどれくらい遠いんだ?」 俺は息を切らしながら尋ねた。マントの裾が地面の石に引っかかり、転びそうになる。

「んー、馬車なら一日、徒歩だと…2日はかかるかな。」 エリスは振り返らず、道の先を見つめながら答えた。「でも、街道は聖教の検問だらけだから、森を抜けるルートで行くよ。そっちなら魔物は出るけど、衛兵にはバレにくい。」

「魔物か…そっちも大概ヤバいだろ。」 俺は短剣の柄を握りしめた。さっきの石の火花で魔力があるって話になったけど、戦闘の役に立つ気が全くしない。エリスはそんな俺の不安を感じ取ったのか、軽く笑った。

「大丈夫、魔物は私がなんとかする。信太は自分の魔力を信じて、ピンチの時に何か起こせればいいよ。」 彼女はポーチから小さな水晶を取り出し、陽光にかざした。「これ、魔物の気配を察知するのと道を示してくれるやつ。反応したらすぐ教えるから、準備しといて。」

「準備って…何をだよ。」 俺はぶつぶつ言いながら、彼女の後を追った。2時間に差し掛かるほど歩いたところ、徐々に木々が密集した森が目の前に広がってくる。森の奥からは、かすかに獣の遠吠えや鳥たちの声のような音が聞こえる。背筋がぞっとしたが、エリスの背中が揺るぎないのが、唯一の安心材料だった。

(すこしは臆して行ってくれると、気持ちの整理もつくもんだけどなぁ…)


森の入口で、エリスが足を止めた。「ここから先、気をつけて。魔物は夜に活発になるけど、昼にも出てくるし、聖教の斥候もたまに森をうろつく。音を立てないように、ね。」 彼女の声は低く、先ほどの軽い調子とは違った。

俺は頷き、息を殺して彼女の後についていく。木々の間を縫うように進むエリスの動きは、まるでこの森を知り尽くしているかのようだ。彼女が「ルミエ村に伝手がある」と言っていたのを思い出す。エリスはいったい何者なんだ? ただの冒険好きの娘じゃない、ってのは確かだ。

森の奥で、エリスが「少し休憩」と告げ、倒木に腰を下ろした。俺も隣に座り、汗と緊張でぐったりしていた。陽光が木々の隙間から差し込み、彼女は水晶を手に持つと、軽く振って気配を確かめた。

「今のところ、魔物の気配はなし。ちょっと安心だね。」 エリスは笑顔を見せ、干し肉をちぎって俺に渡した。「信太、ヴェリス王国のこと、もっと知っとくべきだよ。じゃないと、灰の民に会っても話についていけないかも。」

「灰の民って、結局どんな奴らなんだ? 聖教から逃げてるってだけで、信用できるのか?」 俺は干し肉をかじりながら、疑いの目を向けた。

エリスは少し考えてから、静かに話し始めた。「ヴェリス王国の歴史を話すと、灰の民のことも分かるよ。ヴェリス王国は、約800年前に『星の盟約』で生まれた。昔、星の力を操る古代の民がいて、彼らは魔法の技術で繁栄してた。でも、星の力は強すぎて、制御しきれなくなったんだ。」

「制御しきれなかったって…どういうこと?」 俺は眉をひそめた。

「星の力は、創造と破壊の両方を生む力。古代の民は、永遠の命とか、究極の魔法を作ろうとして、禁忌の儀式に手を出した。それが失敗して、星の力が暴走。魔物が生まれたんだって。」 エリスは水晶を握りしめ、まるでその歴史を肌で感じているようだった。「魔物は、星の力を歪んだ形で宿した存在。獣みたいなやつもいれば、人間に化けるやつ、霧や影みたいに実体がないやつもいる。」

「それ、めっちゃ怖えな…具体的にはどんなのがいるんだ?」 俺は身を乗り出した。知らないよりは知ってる方が、対処できるかもしれない。

「たとえば、この森に生息する魔物なら『シャドーウルフ』かな?群れで動く魔物ね。遠吠えで人間の恐怖心を煽って、動きを封じる。弱点は心臓だけど、素早くて囲まれると厄介。『ゴースト』は人間に化けて、言葉巧みに騙す。こいつは魔力を直接ぶつけるか、聖なる洗礼を受けた武器でしか倒せないね。あと、『ミストアイ』は実体がないから、魔法か風で霧を散らすしかないよ。共通しているところは倒すと黒い塵になるということと魔石を落とすことね」 エリスは淡々と説明したが、その目は真剣だった。

「魔力で倒すって…俺の火花でどうにかなるのか?」 俺は自分の手をまじまじと見た。あの火花、ほんとに魔力だったのか、いまだ半信半疑だ。

「信太の魔力はまだ弱いけど、鍛えれば化けるよ?私もからっきしだったけど今は全然使えるもの。魔物は感情に反応するから、恐怖や怒りで力を増す。逆に、冷静でいれば弱らせられる。覚えといて。」 エリスは水晶をポーチに戻し、話を続けた。「で、ヴェリス王国の歴史に戻るけど、魔物が生まれた後、古代の民は滅びた。そこに聖教が現れて、『星の力は神そのもの、魔物は神の敵』って教義を作った。今の聖教は、初代ヴェリス国王と結託して星脈の流れを安定させる結界を作って、今に至るって感じね?直近の50年前に10年間つづいた内戦があって魔力持ちの平民を監視してる。」

「監視って…俺みたいのが見つかったら、実験場送りとか言ってたよな。」 俺は背筋が寒くなった。

「そう。聖教は表向きは『秩序のため』って言うけど、裏じゃ魔物の力を研究してるって噂もある。灰の民は、そういう聖教の支配から逃亡した人たち…って聞いてる。魔力持ちの逃亡者や、聖教の秘密を知った人間が集まってる。ルミエ村はその拠点の一つになってるという噂らしいわ。」 エリスは立ち上がり、マントを整えた。「だから、信太が灰の民に会えば、裂け目のことや、元の世界に戻る方法が分かるかもしれない。」

「かもしれない、か。頼りねえな。」 俺は苦笑したが、エリスの言葉に希望を感じていた。現状王国にいたところで、自分の置かれた状況が解決するわけでもない。今はただルミエ村に行く。それが今の俺の目標だった。

「よし、休憩終わり。ルミエ村までまだ遠いよ。」 時間が経ちエリスは水晶を手に、森の奥へ進む準備をし始める。俺も立ち上がり、短剣を握り直す。魔物の話や聖教の闇を聞いて、さっきより緊張が高まっているのか短刀を握る力が強くなる。

突然、エリスが右手で制止する合図をする。

異様な静けさの中で空気が重くなってくる、徐々木々の間から不気味な気配が漂ってくる。エリスが突然立ち止まり、水晶を握りしめた。「…信太、気をつけて。反応してる。」

「反応? まさか魔物か?」 俺は声を低くし、周囲を見回した。木々の影が揺れ、まるで何かが潜んでいるようだ。

エリスは水晶を陽光にかざし、目を細めた。「シャドーウルフ…かな。遠吠えが聞こえる前に、隠れるか戦うか決めなきゃ。」 彼女は剣を抜き、背中を俺に預けるように立った。「信太、さっきの火花、思い出して。ピンチの時、魔力は反応するよ。あと冷静にね」

「火花って…そんな都合よく出ねえよ!」 俺は焦りながらも、石を握った時の感覚を思い出した。強く願う、か。頭に浮かんだのは、どうにかエリスの力になりたいと思ってしまう。彼女がこんな危険な旅に付き合ってくれるなら、俺だって何かやらなきゃいけないのは明白だった。

その時、木々の間から低い唸り声が響いた。赤い瞳が、闇の中で光る。エリスのネックレスが一際強く輝き、まるで戦いを祝福するように俺たちを照らした。

「信太、準備はいい?」 エリスが剣を構え、笑みを浮かべた。

「…ああ、やってやるよ!」 俺は短剣を握り、彼女の隣に立った。その目線の先には赤い瞳が闇の中で揺らめいていた。突然犬のようなの唸り声が森の静寂を切り裂いた。エリスの剣が木々から差し込む陽光に照らされキラリと光り、輝く。信太は短剣を握りしめ、震える足を必死で地面に踏みしめた。エリスの言う「冷静でいろ」という言葉が頭をよぎるが、正直、こんな状況で落ち着けるわけがない。

「信太、右側を警戒して! シャドーウルフは群れで動くから、背後を取られないように!」 エリスが鋭い声で指示を出し、剣を構えたままゆっくり後退する。彼女の目は木々の間を素早く見回し、水晶を握る手には力がこもっていた。

「右、了解…って、どんだけいるんだよ、これ!?」 俺は声を低く抑えながら、周囲を見渡した。闇の中で光る赤い瞳が、最初は二つだったのが、四つ、六つと増えていく。シャドーウルフの気配が、まるで俺たちの恐怖を嗅ぎつけるように迫ってくる。

突然、遠くから低い遠吠えが響き、俺の胸に冷たい恐怖が突き刺さった。エリスが言っていた「恐怖心を煽る遠吠え」だった。体が一瞬硬直し、短剣を持つ手が震える。

「信太、深呼吸! 恐怖に乗っ取られると、アイツ等の思うツボだよ!」 エリスが叫び、俺の肩を軽く叩いた。エリスに触れられた途端に凍りついていた心を少し解きほぐされる。「君の魔力、試すチャンスだよ。火花を思い出して!」

「火花、火花って…!」 俺は必死で石を握った時の感覚を呼び戻そうとした。あの時、ただ「火が出ろ」と願っただけだ。今ここで戦いたい――その思いを胸に、俺は短剣を握る手に力を込めた。「火、出ろ…!」

バチン! 短剣の刃にこぶし大の火花が弾け、ほのかな熱が手に伝わる。火花は一瞬で消えたが、シャドーウルフの動きがわずかに止まった。赤い瞳が俺をじっと見つめ、まるで新しい脅威を測るように一歩後退する。

「やった! 信太、効いてるよ!」 エリスが笑顔で叫び、剣を振り上げた。「シャドーウルフは光に弱い! もう一回、大きな炎をだして!」

「効いてるって…こんなんで!?」 俺は半信半疑だったが、エリスの言葉に背中を押され、もう一度意識を集中した。火花を、もっと大きく、もっと強く。短剣を振り上げ、叫んだ。「燃えろ!」

今度は火花じゃなく、炎が短剣の先で揺らめいた。オレンジ色の光が周囲を照らし、シャドーウルフたちが一斉に唸り声を上げて後ずさる。炎はすぐに消えたが、その一瞬でエリスが動いた。

「今だ!」 エリスが剣を振り下ろし、最も近いシャドーウルフの脇腹を斬りつけた。黒い毛皮から紫色の血が飛び散り、魔物は悲鳴を上げて倒れる。だが、他のウルフが遠吠えを再開し、俺たちの周囲を素早く回り始めた。

「信太、落ち着いて! 囲まれる前に、隙を作るよ!」 エリスが剣を構え直し、ポーチから紫色の石を取り出し、地面に叩きつけた。パァンという音とともに、水晶から淡い光が広がり、シャドーウルフの動きを一瞬鈍らせた。「君の魔力、もう一回! 私の剣と合わせるよ!」

「合わせるって…どうすりゃいいんだよ!」 俺はパニックになりながらも、エリスの動きに合わせようと短剣を握り直した。彼女の剣が光を帯び、ネックレスの輝きと共鳴する。俺も彼女を信じ、炎を呼び起こすイメージに全力を注いだ。「信太、行くよ!」

俺が短剣を振り上げると、さっきより大きな炎が刃から噴き出した。エリスが剣を振り下ろすと、彼女の剣先から放たれた光と俺の炎が交錯し、爆発的な閃光が森を照らした。シャドーウルフたちが悲鳴を上げ、残りの数匹が闇の中に逃げていく。

「…は、はぁ…やったのか?」 俺は息を切らし、膝に手をついた。短剣を持つ手が震え、汗でびっしょりだ。

「やったよ、信太! 初めてにしては上出来!」 エリスが笑顔で俺の背中をバシンと叩いた。「君の魔力、ほんとに化けるかもね。シャドーウルフを追い払うなんて、初心者には無理だよ。」

「初心者って…お前、なんでそんな余裕あんだよ。」 俺は息を切らし苦笑しながら、彼女のネックレスを見つめた。あの輝き、ただの飾りじゃない。それにエリスが戦いの最中に見せた動きや水晶の使い方も、なんか普通じゃない気がする。

「余裕? ふふ、慣れてるだけだよ。」消滅していくシャドーウルフの残骸から一つの水晶を拾い上げて、ポーチに戻しながら言った。「でも、シャドーウルフがこんな近くまで来るなんて森の魔力がいつもより濃いのかも。ルミエ村までの道、もっと気をつけないと。」

「もっと、だと…?」 俺はげんなりしたが、エリスの笑顔に引っ張られるように立ち上がった。「ったく、なんで君と一緒だとこんなハラハラすんだよ。」

「それが私の魅力でしょ?」 エリスはウインクし、剣を鞘に収めた。「さ、行くよ。ルミエ村までまだ遠い。信太の魔力、もっと試したいね!」

俺はため息をつきながら、彼女の後を追った。森の奥はまだ闇に閉ざされているけど、エリスのネックレスが放つ光が、俺の足元を照らしていた。この世界がどんなに過酷でも、彼女と一緒なら、なんとかなる――そう信じられた。


この小説はgrokで生成した内容を含んでおります。

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