ー 逃国の試練 ー
三人は一気に霧の谷の出口を目指し、全速力で駆け出した。ティルの姿を隠す魔法だろうか霧のような煙が揺らめき、三人の姿をぼんやりと隠した。道中の岩壁が迫り、風が耳元で唸る。遠くの狼煙はますます濃くなり、赤い炎の光が強まっているのが見えた。街の叫び声や金属音がかすかに聞こえ始め、エリスの心臓は早鐘を打った。
「くそっ、間に合え…!」ティルが歯を食いしばり、杖を握る手に力を込めると三人を包んでいた光が一瞬強まり、三人の速度をさらに加速させた。
エリスはネックレスの温もりを感じながら、アッシュヴェイルの住民の姿を思い出す。「みんな、待ってて…! 私、絶対に戻るから!」彼女の声は風にかき消されたが、決意は揺るがなかった。
三人は谷の出口を抜け、アッシュヴェイルへと続く荒野に飛び出した。狼煙の黒煙が空を覆い、遠くの街は炎と騒乱に包まれていた。聖教の赤と金の旗がちらつき、灰の民の抵抗の叫びが風に乗って響く。朝の光が煙に遮られ、荒野はまるで黄昏のような薄暗さに染まっていた。エリスはネックレスを握り、瞳に燃える決意を宿した。信太は短剣を構え、刻印の熱を頼りにエリスの背を守る。ティルは杖を掲げ、結界の青い光で三人の姿を隠しながら先頭を切った。
「くそっ、煙の量が増えてる! 街の中心までやられてるぞ!」ティルが叫び、杖の宝石を強く握った。結界の光が一瞬揺らぎ、彼の額に汗が滲む。「敵の数は不明だが、聖教の騎士団クラスが入ってる可能性が高い。斥候だけじゃねえ!」
エリスは唇を噛み、ネックレスの光を見つめた。「リシアさん…みんな、絶対守る! 私、灰の民の名を汚したままじゃ終わらせない!」彼女の声は震えていたが、決意は揺るがなかった。2年間の失敗、灰の民の誇りを傷つけた自責が心を締め付ける。だが、聖壇で得た星脈の力とこれまでの経験が、彼女の心に火を灯していた。
信太はエリスの横に並び、冷静に状況を見極めた。「エリス、焦るな。敵の規模がでかいなら、俺たちだけで突っ込むのは危険だ。リシアや民の戦士と合流して、反撃の糸口を見つけるぞ。」彼の刻印が熱く脈打ち、青白い光が短剣に宿る。「ティル、結界はどれくらい持つ?」
「10分…いや、5分が限界だ! 聖教の魔術師が近くにいると、結界がバレる可能性もある!」ティルが歯を食いしばり、杖を振り上げた。青い光が一瞬強く輝き、結界の範囲を広げた。「とにかく、街の入り口まで急ぐ! そこから状況を見て動くぞ!」
三人は荒野を駆け抜け、アッシュヴェイルの外縁に近づいた。隠れ街は岩壁と密林に守られた天然の要塞だが、今はその防御が崩れつつあった。木造の家屋や市場の屋台が炎に包まれ、灰の民の戦士たちが聖教の兵士と激しく交戦している。聖教の騎士たちは重装鎧に身を包み、巨大な剣や槍を振り回し、民の簡素な武器を圧倒していた。遠くの神殿からは魔術の光が閃き、聖教の魔術師が攻撃魔法を放っているのが見えた。
エリスは街の惨状に息を呑んだ。「こんな…! どうして聖教がこんな大軍で!?」彼女のネックレスが強く光り、星脈の力が彼女の感情に呼応するように脈打つ。「リシアさん、どこ!? 民のみんな、どこにいるの!?」
「エリス、落ち着け! リシアなら街の避難所にいるはずだ。本部も兼ねてる!灰の民の指導者として、民の防衛を指揮してるはずだ!」ティルがエリスに力強く言う、まるで自分に言い聞かせてるような気迫だった。「よし、まずは敵の前線を突破して避難所を目指す。ティル、道を切り開けるか?」
「任せろ! 俺の炎で聖教のやつらを焼き払う!」ティルが杖を振り、青い炎の波を放った。炎は結界の外に広がり、聖教の斥候数人を巻き込んで吹き飛ばした。斥候たちの叫び声が上がり、敵の注意が三人に向けられる。「おっと、斥候の奴らに隠れるのはここまでだ! 行くぞ!」
結界が解け、三人は一気に街の入り口に突入した。聖教の兵士が即座に反応し、槍を構えて襲いかかってきた。信太は短剣を振ると同時に刻印から青白い光が刃に宿り、兵士の槍を弾き飛ばした。「エリス、俺が前を抑える! 後ろを頼む!」
「わかった!」エリスはネックレスを握り、短剣を構えた。同じように光が漏れはじめが彼女の動きを加速させ、背後から迫る兵士を一閃で切り裂いた。彼女の刃には青い光の粒子が舞い、まるで星屑が敵を飲み込むようだった。
「やっぱり、成長してる!私たち成長してるよ!」エリスは興奮と緊張の籠った声で信太を見る、敵と交戦している信太はうなずくことしか出来なかったがそれでも自身の成長が見受けられた。
「ティル、魔術師の位置は!?」
「あの屋根だ! あの赤いローブのやつが指揮してる!」ティルが杖を振り、青い鎖を放って兵士の足を絡め取った。「俺が魔術師を狙う! 二人で道を切り開け!」
街の通りは炎と煙に包まれ、灰の民の叫び声と聖教の怒号が交錯していた。エリスはネックレスの光を頼りに進み、リシアの姿を必死に探した。信太は彼女の側を守り、聖教の騎士が振り下ろす巨大な剣を短剣で受け止めた。火花が散り、刻印の熱が彼の腕を駆け巡る。「くっ…こいつら、しぶとい!」
「信太、右!」エリスが叫び、信太の右側から飛びかかってきた兵士を短剣で刺した。血が飛び散り、エリスは一瞬顔をしかめたが、すぐに気を取り直した。「信太、大丈夫!?」
「ああ、問題ねえ! エリス、突き進め!」信太は騎士を押し返し、短剣を振り上げて鎧の隙間を突いた。騎士が膝をつき、信太はエリスの手を引いて前進した。
ティルは屋根に立つ魔術師を睨み、杖から青い炎の矢を放った。炎は弧を描いて魔術師に迫るが、魔術師が手を振ると赤い光の結界が炎を弾いた。「ちっ、聖教の魔術師のやろう!腐っても魔術師ってことか?!」ティルは結界を強化し、二人を援護しながら魔術師との距離を詰めた。
三人は市場広場を抜け、避難所に近づいた。避難所はアッシュヴェイルの奥にそびえる石造りの建物で、灰の民の信仰と星脈の秘密を守る教会だった。だが、今はその屋根が炎に包まれ、聖教の騎士団が入口を封鎖していた。広場には灰の民の戦士たちが散り散りに抵抗を続けているが、聖教の圧倒的な戦力に押されていた。
エリスは教会の入口で戦う一人の女性を見つけた。リシアだ。彼女は灰の民の戦士を率い、聖教の騎士と対峙していた。白いローブは血と煤で汚れ、腕には深い傷が刻まれている。だが、彼女の瞳は氷のように冷たく、聖教の騎士を一歩も寄せ付けない気迫に満ちていた。
「リシアさん!」エリスが叫び、教会に向かって駆け出そうとした。だが、聖教の騎士団長らしき巨漢が巨大な戦斧を振り上げ、エリスを阻んだ。戦斧が地面を叩き、衝撃波がエリスを後退させた。
「…貴様!あの方の治世を奪う者か!」騎士団長の声は低く、鎧の隙間から冷たい目がエリスを射抜いた。「聖教の名の下に、その命を指し出せ! さもなくば、この街は灰すら残さず焼き尽くす!」
エリスはネックレスを握り、歯を食いしばった。「何言ってんの!?絶対に言う通りにさせてあげないんだから! ここは灰の民の誇り…私の導きなんだ!」彼女のネックレスが爆発的に光り、青い光の粒子が嵐のように渦巻いた。星脈の力が彼女の短剣に宿り、刃が輝く。
「エリス、俺が援護する!」信太が騎士団長の側面に飛び込み、短剣を振り下ろした。刻印の光が刃を強化し、戦斧の柄に深い傷を刻んだ。騎士団長が咆哮し、戦斧を振り回すが、信太は素早く回避した。「ティル、魔術師を抑えろ!」
「まかせとけ!」ティルは教会の屋根に登り、魔術師と直接対峙した。青い炎と赤い光が激しくぶつかり合い、広場に魔術の衝撃波が広がる。ティルの額に汗が滴り、杖の宝石がひび割れそうになる。「くそっ、これなら修行サボるんじゃなかったぜ!!」
エリスは騎士団長に立ち向かい、星脈の力を全開にした。短剣が青い光の刃となり、騎士団長の鎧を切り裂く。だが、騎士団長の戦斧が反撃し、エリスは咄嗟に身を翻した。地面が砕け、衝撃で彼女の体がよろける。「くっ…!」
「エリス!」リシアが叫び、杖から青い光の鎖を放って騎士団長の動きを封じた。「今だ、エリス! お前の力で奴を倒せ!」
エリスはリシアの声に頷き、ネックレスを握りしめた。聖壇での試練、星の導きへの信念が彼女の心に蘇る。「みんな…私、絶対負けない!」彼女は目を閉じるとネックレスが爆発的な光を放ち、青い光の嵐が広場を包んだ。
「私の力を…見せてやる!」エリスは短剣を振り上げ、渾身の一撃を放った。青い光の刃が騎士団長を直撃し、鎧を粉砕。騎士団長が悲鳴を上げ、戦斧を落として膝をついた。エリスは息を荒げ、短剣を構えたまま動けなかった。
「エリス、ナイス!」信太が駆け寄り、エリスの肩を支えた。
「まだ終わってない、リシアさんと合流して、この戦況を立て直す!」
リシアはエリスを見つめ、氷のような瞳に一瞬の温もりが宿った。「エリス…星の加護を得たか。だが、戦いはまだ終わっていない。聖教の主力がまだ来ていない…」彼女は杖を握り、傷ついた腕を押さえた。「民を守るため…共に戦ってくれるか?」
エリスは傷ついたリシアを見てより一層力の籠った瞳を向ける「当たり前だよ!?お世話になったこの町を守ってやる!!」
ティルが屋根から飛び降り、息を整えた。「どぉーだ!俺強いだろ!魔術師はぶっ倒してやったぜ!…だが、聖教の増援が来る前に取り敢えず、ずらかるぞ!」彼の杖の宝石はひびが入り、魔力が不安定だったが、ニヤリと笑って杖を肩に担いだ。
突然、広場に大きな悲鳴が広がる。
叫び声のような声に場にいた人間たちが全員注視をする。
広場に響き渡った悲鳴は、まるで空そのものが裂けたかのような鋭さで、戦場の喧噪を一瞬で飲み込んだ。エリス、信太、ティル、リシア、そして戦う灰の民の戦士たち、さらには聖教の兵士たちさえもが動きを止め、その音の源を注視した。煙と炎に包まれたアッシュヴェイルの市場広場の先に、黒い影が浮かんでいた。いや、影ではない。それは一人の男だった。純銀の鎧をまとい、背中に赤と金の紋章が刻まれたマントが風に揺れる。男の周囲には禍々しい雰囲気が渦巻き、まるで光そのものを吸い込むような不気味な気配を放っていた。
「レオン…レオン・ヴァルティア!」リシアが息を呑み、杖を握る手に力を込めた。彼女の氷のような瞳に、初めて恐怖の色が宿った。「聖教の『大聖導師直轄聖騎士』が…なぜここに!?」
エリスはリシアの異変に気付き、ネックレスを握りしめた。「リシアさん、あの人、誰なの!? 聖教の騎士団長じゃないの!?」彼女の声は震え、星脈の力が不安定に脈打つ。広場の空気が重くなり、まるで時間が止まったかのような圧迫感が皆を包んだ。
信太は短剣を構え、刻印の熱を感じながら男を睨んだ。「リシアさん、説明してください、こいつが聖教の主力なんですか?」彼の声は冷静だが、刻印から放たれる青白い光がわずかに揺らぎ、危険を予感させていた。
ティルは杖を掲げ、額に汗を滲ませながら叫んだ。「主力なんてもんじゃねぇ、コイツ一人が出てくるような案件じゃねぇ…聖教のトップは大聖導師だが、アイツはそのトップの懐刀だよ…最初の軍勢を見て判断すべきだった。ヴェリス王国の正真正銘、最強の騎士様だよ」彼の杖の宝石はひびが入り、魔力が不安定に揺れている。
その時、広場の端からもう一つの影が現れた。少女だった。エリスと同じくらいの年頃で、銀色の髪が朝の光に輝き、エメラルド色の瞳には星のような光が宿っている。彼女は白いドレスに身を包み、首にはエリスと同じデザインのネックレスが揺れていた。だが、そのネックレスはエリスと同じような光を放っていない、まるで加護を受けていないように感じた。
「まさか、セルティアか?!」リシアが少女の名を呟き、杖を握る手が震えた。「なんで!…なぜこんな辺境に!?」
エリスは少女を見て、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。「セルティア…? リシアさん、まさか、第一皇女のセルティア?」彼女のネックレスが強く光り、セルティアのネックレスと共鳴するように脈打った。だが、その共鳴は不協和音のように不安定で、エリスの心を乱した。
セルティアはエリスを見つめ、冷たく微笑んだ。「あなた…やっと会えた。あの方がおっしゃっていた人?私と同じ…。」彼女の声は澄んでいたが、どこか虚ろで、まるで心が閉ざされているかのようだった。「でも、あなたの光は…あまりにも眩しすぎる。大聖導師様の下に降るべきよ。」
「ふざけるな!!!」ティルが叫び、杖を振り上げた。青い炎がセルティアに向かって放たれるが、彼女は手を軽く振るだけで炎を消し去った。ティルは目を丸くし、杖を握る手に力を込めた。「くそっ、こいつ、ただの少女じゃねぇ!」
信太はエリスの前に立ち、短剣を構えた。「エリス、気をつけろ。あの女の子も、あの男も、ただの敵じゃねえ。リシアさん、こいつらの目的は!?」
リシアは唇を噛み、声を絞り出した。「セルティアは…ヴェリス王国の第一皇女。謂えばこの国の次期国王になる者よ、レオンはセルティアの遣いよ…。」
レオンがゆっくりと剣を抜き、広場の地面に向かって剣を振りかざす。その瞬間、地面は亀裂が入り、光が波のように広がった。聖教の兵士たちさえも恐怖に怯え、後退する。レオンの瞳は赤く輝き、まるで魂を焼き尽くすような冷たさを放っていた。
エリスはネックレスを握り、声を張り上げた。「なぜ聖教はこんなことをするの!?みんな悪いことなんてしてない!今日だってみんな小さな幸せを生きてたはず!なのに…」
セルティアは手に胸を当て、冷たい笑みを浮かべた。「そんなものは大政の前には無意味よ、あなたも、私のような立場に立ってみて話してほしいわね。」そう言い終えると同時に彼女の手から黒い光の刃が放たれ、エリスに迫った。
「エリス!」信太が咄嗟にエリスの前に飛び出し、短剣で黒い刃を弾いた。刻印の青白い光が爆発的に輝き、黒い光を押し返したが、信太の腕に深い傷が刻まれた。「くっ…こいつの力、ヤバいぞ!」
「クソだらぁああああああああ!?」ティルが杖を振り、青い鎖をセルティアに放った。だが、セルティアは鎖を一瞬で切り裂き、ティルに黒い光の矢を放った。ティルは結界を張って防いだが、激しい一撃に結界は破れ衝撃で膝をついた。「ぐっ…ごァっ!」
リシアは杖を掲げ、青い光の結界を広場に展開した。「エリス!ここは私が引き受ける!」
彼女の声は力強く、傷ついた腕から滴る血を無視するように杖を握りしめた。結界は広場を覆い、セルティアの黒い光とレオンの禍々しい気配を一時的に押しとどめた。だが、結界の光は不安定に揺れ、リシアの額に汗が滲む。「エリス、信太、ティル…今すぐ逃げなさい! ルミエ村へ! そこなら聖教の追手も届いていないはず!」
エリスはリシアの言葉に目を丸くし、ネックレスを握りしめた。「リシアさん、嫌だ! 置いて逃げるなんてできない! みんなを…リシアさんを見捨てるなんて!」彼女の声は震え、涙が頬を伝った。星脈の力が彼女の感情に呼応し、ネックレスから青い光が爆発的に溢れる。エリスは短剣を構え、セルティアとレオンに向かって一歩踏み出した。「私、戦う! みんなの誇りを守るんだから!」
「エリス、ダメだ!」信太がエリスの腕を掴み、力強く引き止めた。刻印が熱く脈打ち、青白い光が彼の短剣に宿るが、その瞳には焦りと決意が宿っていた。「リシアの言う通りだ! ここで戦っても全滅するだけだ! 生きて、チャンスを待つんだ!」
ティルは杖を握り、結界の外で蠢くセルティアとレオンを睨んだ。「くそっ、エリスの気持ちは分かるが、信太の言う通りだ! あのレオンってやつ、一人で俺たち全員を潰せる! リシアの統領が時間を稼いでくれる今、逃げるしかねえ!」彼の声は苛立ちと無力感に満ち、杖の宝石はひび割れが広がっていた。
レオンが小さく笑い、純銀の剣をゆっくりと振り上げた。「逃げる? 無駄な足掻きだ。灰の民…すべて聖教の神聖なる秩序を壊す存在たちだ。君たちはセルティア様の治世においてノイズになるんだ。」彼の剣から放たれた光の波が結界に衝突し、リシアの結界がひび割れた。衝撃で灰の民の戦士たちが倒れ、聖教の兵士たちさえも恐怖に怯えて後退した。
セルティアはエリスを見つめ、エメラルド色の瞳に一瞬の揺らぎが宿った。「あなたたち…抵抗は無意味よ。レオンの力を感じてるでしょう?。聖教の意志に逆らう者は、皆滅びているのは知ってるでしょう?素直に投降することを勧めるけど…」彼女のネックレスがドス黒い光を放つ、まるでもう一つの星脈の力が流れているかのようだった。セルティアの手から黒い光の刃が放たれ、結界をさらに削った。
「リシアさん!」エリスは結界のひび割れを見て、叫びながらリシアに駆け寄ろうとした。だが、信太がエリスの腰を掴み、強引に引き戻した。「離して、信太!ティル! リシアさんを助けなきゃ! みんなを置いて逃げるなんて、私、できない!」
「エリス、落ち着け!」信太の声は鋭く、だがその瞳にはエリスへの深い信頼と必死さが宿っていた。「リシアさんは俺たちを信じて時間を稼いでるんだ!お前の命が…灰の民の希望も終わる! 生きて、ルミエ村で立て直すんだ!」
ティルが杖を振り、青い炎の壁を結界の外に展開した。「エリス、信太の言う通りだ! リシア婆ちゃんの犠牲を無駄にする気か!? ルミエ村なら灰の民の隠れ家もある。そこから反撃の準備ができる!」彼の炎はセルティアの黒い光を一時的に押し返したが、ティルの腕は震え、魔力が限界に近づいていた。
リシアは結界の中で杖を地面に突き、青い光をさらに強めた。「エリス…お前の光は灰の民の未来だ。私の命など、星の導きに比べればちっぽけなもの。行け…ルミエ村へ!」彼女の声は弱々しく、血がローブを赤く染めていた。灰の民の戦士たちもリシアを中心に集まり、聖教の兵士を食い止めるために武器を構えた。
「リシアさん…リシアさん…!」エリスは涙を流し、ネックレスを握りしめた。彼女の心は戦いたいと叫んでいたが、信太とティルの言葉がその決意を揺さぶる。「私、戦える! リシアさんを…みんなを助けたい!」
「エリス、時間がねえ!」信太はエリスの両腕を掴み、彼女を強引に抱え上げた。刻印の熱が彼の全身を駆け巡り、短剣を握る手に力がこもる。「ティル、道を切り開け! ルミエ村まで全速力だ!」
「了解!この先の外れに馬小屋がある!そこで馬を回収して逃げるぞ!」ティルが杖を振り、青い炎の波を広場に放った。炎は聖教の兵士を吹き飛ばし、一時的に進路を確保した。「エリス、泣くな! お前の光はまだ消えてねえ! 行くぞ!」彼は杖を肩に担ぎ、信太とエリスを先導して広場を駆け抜けた。
エリスは信太の腕の中で暴れ、泣き叫んだ。「離して! リシアさん! みんな! 置いていかないで!」彼女のネックレスは光を放ち、星脈の力が彼女の感情に呼応して揺れる。だが、信太の腕は固く、彼女を離さなかった。「信太、ティル、お願い…戻って…!」
「エリス、頼むから…生きることを忘れるな!誰かが引き継がないと残った人たちは報われない!!!!」信太の声は震え、刻印の光が一瞬強く輝いた。彼の心はエリスの痛みを共有しながらも、彼女を守る決意で満ちていた。「リシアの想いを…灰の民の希望を、お前が背負うんだ!」
レオンの剣が再び振り上げられ、結界が完全に砕けた。リシアは杖を握り、青い光の刃をレオンに放ったが、彼は一歩も動かず、刃を光の波で消し去った。「無駄な抵抗だな、灰の民の指導者よ。聖教の目は欺くことは出来ないぞ。」レオンの声は冷たく、剣から放たれた光がリシアを飲み込んだ。
「リシアさん!」エリスは信太の腕の中で叫び、涙が止まらなかった。灰の民の戦士たちが次々と倒れ、聖教の兵士が広場を制圧していく。セルティアはエリスの逃げる姿を見つめているが、すぐにレオンの側に戻った。
ティルは炎の壁を維持しながら、広場の出口へと突き進んだ。「くそっ、聖教の追手が来る前に距離を稼ぐぞ!」彼の杖の宝石はひび割れが広がり、魔力が尽きかけていたが、ティルは歯を食いしばって走り続けた。
三人はアッシュヴェイルの外縁を抜け、外れの馬小屋へと飛び込んだ。背後では炎と煙が空を覆い、聖教の勝利の雄叫びが響く。エリスは信太の腕の中で嗚咽を漏らし、ネックレスの光が弱々しく揺れた。「リシアさん…みんな…私が弱いせいで…!」
「エリス、自分のせいだなんて言うな!」信太はエリスを降ろし、力強く言った。「リシアさんは俺たちを信じて戦ってくれてる。お前の光が…灰の民の未来なんだ! ルミエ村で立て直して、聖教をぶっ潰す!」
ティルが振り返り、遠くの煙を見つめた。「エリス、信太の言う通りだ。リシア婆ちゃんの犠牲を無駄にしたら、俺たちが灰の民の誇りを汚すことになる。ルミエ村まで、絶対に生きて辿り着くぞ!」彼の声は疲れ切っていたが、仲間への信頼で支えられていた。
馬を引き連れ荒野を抜け、密林の奥へと進む。ルミエ村はアッシュヴェイルから北西に位置する小さな集落で、灰の民の隠れ家の一つだ。聖教の目が届きにくい深い森に守られた場所。ティルは道を切り開き、信太はエリスと同じ馬に乗り走り続けた。エリスの涙は止まらず、ネックレスの光はまるで彼女の心の痛みを映すように弱々しかった。
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