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異世界に転生した。知識チートと言えるほどのことは無理だったけど創作活動してたらなんかブームになった。

作者: 下菊みこと

私は白百合 雪乃。


ある日信号無視してきた酔っ払いの運転するトラックに轢かれて、目が覚めたらこの世界にいた。


私は乙女ゲームは嗜んでいなかったので確証はないが、おそらくこの世界は乙女ゲームの世界観の場所だと思う。


だってやたらカラフルで美形な人が多いし、髪型も独特な人が多いし中世ナーロッパ風の世界観だし。


でもさすがナーロッパだけあって、中世っぽい雰囲気なのに衛生観念や文房具や生活レベルはほぼ現代日本と大差ない。


雰囲気と、建物と、あと身分制度がヨーロッパ風なだけ。


紙もペンも色鉛筆も使えて、魔法を駆使すればそれをコピーして製本化もできる。


そんな世界で私は公爵家の娘で、第二王子の婚約者で、緑の髪に赤い瞳のきつい顔立ちの女の子だから多分悪役令嬢だと勝手に思っているが…前世で楽しんでいた創作活動、今世でもしたいな。


ちなみに今世の私の名前はリリー・スノー・ランス。


まだ七歳のお子ちゃまだ。


婚約者は第二王子殿下で、第二王子殿下の名前はクラヴィス・コンスタン・ドナシアン。


第二王子殿下は優しくて、黒髪黒目のイケメンで、イケボで、文武両道で、ちょっと歳の差があって五歳上の十二歳だ。


一方で私は、前世であまり真面目に勉強していなかったので知識チートは無理だったが…幸いそれなりに第二王子妃教育はこなせて、勉強免除は無理だったが毎日先生に理解と覚えるのが早いと褒められる。


もしかしたら、この身体…悪役令嬢のスペックが高いのもあるかもしれない。


ということで順調に第二王子妃教育は進み、知識チートは無理だったがそれなりに上手くいき、それを同じく優秀な第二王子殿下に褒められて私も第二王子殿下を褒めちぎって仲良くできて、悪役令嬢かも知れないのに第二王子殿下との関係も良好。


両親や兄は私を溺愛してくれるし、家は栄えていて、後継の兄も優秀だから今のところなにも問題ない。


なので、創作活動に充てる時間ができた。


時間があるならやってみよう。













紙と色ペンはこの世界でも簡単に手に入る。


色ペンで漫画を描くのは難しいが、なんとか頑張って漫画を作ってみた。


内容は前世で作った一次創作の同人誌と同じものだが、前世の経験を継承しているためよりクオリティーの高い仕上がりになった。


そしてそれを魔法で製本化してみた。


ちなみにこの世界では魔法は貴族にしか使えず、魔法にもさまざまな制約があるがこういう生活に密着した魔法は結構便利だ。


商人がチラシとか配るのに、貴族に頼んでお金を払って刷ってもらうとかもまあまあある。


とにかくそれで、魔法で漫画を製本化して増産できた。


一次創作の創作活動としては良い出来の漫画になった。


それを試しに親と兄に見せてみる。


三人は黙ってそれを読み進めたが、読み終えると急に泣き出した。


「え、お父様?お母様?お兄様?どうしたの?」


「我が娘がこんなに天才だとは…」


「第二王子妃教育を、苦労しつつも完璧にこなすから天才だとは知っていたけど…ここまでとは思わなかったわ…」


「まだ七歳なのにこんな画期的な創作物を生み出すなんて…流石すぎる」


ということで、なんか知らないけどめちゃくちゃ感動されて製本化した漫画を両親の伝手で売ってもらえることになった。















思ったより、漫画の影響はすごかった。


この世界にはまだ漫画はなかったらしく、流行りに流行った。


流行りに乗っていろんな人が漫画を描き始め、私は元祖漫画王と創作界隈に崇められるようになった。


それからも私は漫画を描き続け、すべて飛ぶように売れて人気になり、収入もたくさん入ってきた。


私はその収入を三分の一両親に渡し、三分の一兄に渡して三分の一を孤児院や養老院に寄付した。


残念ながら創作活動で忙しく慰問はできなかったが、寄付だけでも喜んでもらえているらしい。


「お嬢様、孤児院の子供達や養老院のお年寄り達からまた感謝のお手紙が来ていますよ」


「わあ、すごいいっぱい。しかも嬉しいことばかり書いてある。生活水準も上がったみたいで本当に良かった」


「お嬢様は本当に貴族の鑑でいらっしゃいますね」


「あはは、ありがとう。それほどでもないけどね」


そして第二王子妃教育も苦労は多いが、先生曰く無事スムーズに進んでいるらしい。


「リリー様は本当に素晴らしい方でいらっしゃいます。まさに第二王子殿下の妃に相応しいお方です」


「いえいえそれほどでも…教えてくださる先生のおかげです」


「なんと謙虚な…心も美しいとは、感服致します」


「いえいえいえ…本当にそれほどでも…」


第二王子殿下もそれを受けて、優秀な子だと私を褒めてくださって、私もそんな優しい第二王子殿下を褒めちぎり慕っている。


「クラヴィス殿下は本当にかっこいいです!文武両道なんて凄すぎます!」


「ふふ、ありがとう。でもリリーだって、すごくよく第二王子妃教育を頑張ってるじゃないか。偉い偉い」


「えへへ」


「それに創作活動も順調だね。我が国の第二王子妃が国民にとって人気者になるのはいいことだよ」


「それなら良かったです!」


公爵家も安泰で、本当に全てが上手くいっていた。















そして迎えた十八歳。


第二王子殿下は二十三歳だ。


そろそろお互い結婚適齢期。


そんな時に、私に突然妹が出来た。


ピンクのふわふわロングの髪に、水色の瞳の童顔美少女。


ボンキュッボンの身体つきの私と違い、スレンダーで守ってあげたくなる可憐な子。


名前はオルテンシア・スノー・ランス。


ついにヒロインが来たか!第二王子殿下を取られたらどうしよう!


と私は内心修羅場。


一方で母と兄も、父に隠し子がいたことに修羅場っていた。


妹は父がこっそり囲っていた愛人との間に生まれた娘で、妾腹とはいえ父の子で間違いない。


魔法で血のつながりも確認した。


だが本人は、いきなり貴族の仲間入りをして戸惑うばかりで驕る様子もない。


素直で優しい良い子だとわかるから、なおのことヒロイン適性は高いと思われる。


そんな妹だが、貴族としてのマナーや教養をこれから身につけなければならないので大変そうだ。


そんな妹なのだが…。


「お姉様!お姉様があの人気漫画家って本当ですか!?」


「うん、本当だよ。ただ、第二王子妃になったら忙しくなるから続けるのが難しくなるかもしれないけど」


「なら私、引き継ぎたいです!弟子にしてください!」


「ええ…」


ヒロインは悪役令嬢を嫌うものだと思っていたが、妹は私に懐いてきて漫画の教えを乞うてきた。


だが教えてほしいというなら教えよう。


私たちは夜な夜な創作活動を二人で行い、オルテンシアをアシスタントとしてこき使いつつ漫画の描き方を教えてあげた。


結果、私が第二王子殿下に嫁ぐ頃にはオルテンシアは立派な一次創作活動者…漫画家となっていた。


私のつけてあげたペンネームで、私の後継者と大々的に披露して本を出させたらこれがまた飛ぶように売れて一躍人気漫画家になったオルテンシア。


そんなオルテンシアもヒロインだからか要領がいい子で、その頃には貴族としてのマナーや教養が身についていた。


さらに、この頃にはようやくお母様やお兄様も自分の気持ちに折り合いをつけてオルテンシアと仲良くするようになっていた。


漫画という共通の趣味のおかげらしい。


やはり漫画は世界を救う…!


「お姉様、お姉様のおかげで夢だった漫画家になれました…!」


「おめでとう、オルテンシア。ところで貴女、恋はしないの?婚約者がいないフリーなんだから、そろそろ婚活しないと」


「あ、そうですよね!漫画に夢中で忘れていました!」


「素敵な人を見つけるのよ」


「はい!」


そして私は結局、オルテンシアと敵対することもなくむしろ懐かれたまま第二王子殿下の元へ嫁いだ。


「リリー、君と結婚できて嬉しいよ」


「クラヴィス殿下、私もです」


「空いた時間があれば、たまには僕にも構って欲しいけど…創作活動も続けていいからね」


「クラヴィス殿下、大好き!」


多分悪役令嬢のはずだけど、全然悪役令嬢せずに終わった。


でもこの後、ヒロインっぽい妹が隣国の第五王子を引っ掛けてきたりと乙女ゲーム的展開もあったから多分私が悪役令嬢だったのは間違いでもないんじゃないかな。


漫画と前世の記憶に救われたな、私。

ということで如何でしたでしょうか。


この主人公、勘違いではなく本当に乙女ゲームの悪役令嬢に転生してました。


ヒロインである妹は転生者ではありません。


他にリリーの周りには転生者はいませんでした。


でも、本人が善良かつ己の道を行っていたので悪役を全力回避していましたね。


本当の悪役令嬢リリーであれば、全力でオルテンシアを虐めてお屋敷から追い出そうとするのですが…全然そんなことにはなりませんでしたね。


むしろ家族が打ち解けるのにリリーが貢献したようなものでした。


少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。


ここからは宣伝になりますが、


『悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!』


というお話が電子書籍として発売されています。


よろしければご覧ください!

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