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ミモザ〜秘密の恋〜  作者: 夜影 月雨
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飛べない羽

 彼女と別れ約10ヶ月がたとうとする頃、彼女とは職場は同じだったが業務的な事以外は全く話すことがなくなっていた。

周りが不思議に思うぐらいに。だけど、もう全てを受け止めると決めたからには徹底的に話すことはなく日々を過ごしていた。

 

 そして、ようやく二人目の子供が無事に産まれた。女の子だ。

一人目の子供が産まれた頃のあの感情が湧いてきて、心から俺は幸せを噛み締めていた。


 人差し指をだすと饅頭のような小さい手でギュッとしてくるその感じ。


めちゃくちゃ愛おしい。

妻にもこんなにもかわいい子供を一生懸命産んでくれてありがとうと感謝をした。


愛おしいとゆうものはこうゆうものなんだ。と少しでも前に進んでいる自分がいた。

これからしっかり家族を大事に、守っていかないといけない。

とさらに気を引き締めた。

妻には、俺自身そおやって気を引き締めると良くないと昔よく言われていたが、これからこそはと思う。


 前に進むんだ。


 俺は変わるんだ。


 成長するんだ。

と思えば思うほど、

やはりそのよく言われることはその先からずっとその通り。

何もかも全て逆効果。

自分的にはよかれと思ってもそれが駄目だったりでそれ続きで滑りまくる。


 その事もちゃんとわかっていた。結果自分本位なんだと。何をするにしても相手の気持ちをまず考えないと。自分が褒められたいがためにやる。自分が好きだから尽くす。そう思われてもしょうがない。

 

 なぜ、上手く行かない。妻の事好きなのに滑りまくって迷惑かけてる。

子供にもそうだ。

やっぱり俺はダメ人間だ。


 あの別れるって決意したあの日から10ヶ月で羽ばたこうとした羽はすでにボロボロになっていた。それもそうだ。自分勝手なことをして、勝手に好きな人を作り、愛し合い、そして自分勝手に別れ、家族の輪の中に入ろうとしてもそう簡単に羽は元に戻らない。

 空からも見ているのだろう。何も努力もしてないお前に自分自身で羽ばたける力なんかあるわけないし、羽ばたけたとしてもこっちにこさせるかと言われているようだった。


 もう胸に刺さっていた痛い物もとれたと思っていたが、そう簡単には取れていない。

逆にここまで粘っていた自分もすごいと思えるぐらいだ。


 そんなに甘くない。

 本当の大切な物。本当の幸せな物を手にし、実感するまであと一歩のところまできていたが、ここで罰は下った。


その罰を受け入れ全ての自分の思いを投げ捨て、それでもなお立ちあがり、全てと向き合っていけるものがまたスタート地点に立たせてもらうことができるのだろう。


 俺にその覚悟を乗り越える力がなかった。


思えば思うほど、罰の勢いは増していき、俺の心はズタボロになっていた。

会社に通っても罰。家にいてもどこにいても罰。

職場の皆からは子供が産まれたこと祝福されるがそれが辛く、死んだような笑顔をすることしかできなかった。


 いつかの朝。

人間と関わることに参っていた俺は、まだ誰もいない職場の事務所で負のオーラを漂わせながら、作業していた。

次のプロジェクトの会議に向けての作業。全然はかどらない。

何も頭に入ってこない。


 朝の誰もいない静かな時間。


事務所の扉がゆっくり空いた。扉に対して俺は背を向けて作業している状態だったから、ゆっくり空いた音にも気づかなかった。

 

 あ...


 あの時の...


あの甘い香り...


扉が開いた時の風とともになびいてきた。


振り返るとそこには来るはずのない、俺が今一番愛している小春がそこにいたのだ。

 

 

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