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アゼルの守られし秘宝3

~シーザー宅~


挿絵(By みてみん)



周囲には一軒家が立ち並び、時間も朝というには遅い時間。家の窓からは洗濯物を干している人もいれば近所の子供たちが住宅街を走り回っているのがあちらこちらで見られた。



子供たちが外で気にせず遊べるのも守りの剣があったのはもちろん、騎士団に努めている男たちが周囲に家を構えているのも大きいのだろう。



ネロ・シャルロット・ガンダルフの3人は北西街にあるシーザー宅へ来ていた。



「ここがシーザーさんの家ね、確か結婚してるってことだけど、はっきり伝えた方がいいのかしら」



シーザーは騎士団に努めているということもあり、奥方はきっと覚悟はしているだろうが・・朝早くから冒険者が家に来る、しかもまだ旦那は帰って来ていない時点で何か事件に巻き込まれてというのは察せられてしまうので気遣うことも難しい。




コンコンコン




「はーい」




「ちょ、ちょっと何勝手にノックしてんのよ!!!」



「えーだってここまで来て待っててもしかたないじゃーん?」



ネロは特に悩む様子もなく、シャルロットが悩む時間も与えずにノックした。



扉が開くと中からは30を過ぎたぐらいと思われる女性が現れた。これはシーザーの奥方かと思いシャルロットが口を開ける



「騎士団から雇われてる冒険者ですが、シーザーさんは帰ってこられてますか?」



「ぼ、冒険者の方ですが、主人は朝方帰ってきましたけど・・何かありましたか?」



奥方はシャルロットがシーザーのことを聞くと何かあったんだと察したようで緊張し姿勢を正した。



「ええ、実は今朝教会にて遺体で発見されました。その・・詳しいことは教会にて対応するとのことです。私たちは今回の事件について騎士団から要請を受けました。辛いですがシーザーさんのことについて聞かせていただけますか?」



「え・・だって・・朝、彼は帰って来て・・」



「その朝会ったと思われる人は恐らくレッサーオーガがシーザーさんに成りすましたのでしょう、奴らの特性である相手の心臓を喰らうと姿を変えられる・・そしてなぜそこに行きつくかは・・」



ガンダルフがそういうと奥方はショックでしゃがみこんでしまった。


それはそうだろう、今朝方帰ってきた旦那が旦那ではなく殺した犯人が化けていると聞かされれば・・



数分後、か若干だが気分が落ち着くと立ち上がり冒険者の方を向いた。



「落ち込んでいるところ悪いが早急に手を打たないとシーザーに扮している奴が何をしでかすかわからん、協力してほしい」



「わ、わかり・・ました、どのような・・ことでしょうか」



「まず帰ってきたシーザーは何かいつもと違う点はあったか?」



「はい・・今考えると何を話しても上の空のような答えしか返ってきませんでした・・」



レッサーオーガが扮している場合、付き合いの関係や旧交を記憶していない、仕事を忘れたかのように振舞ったりする。



「あとは・・何か荷物を持っていなかったか?」



「長い包みを持っていました、何と聞いても神官長から預かったものと言っていたので特に気にしていませんでした」



ああ・・これはきっと守りの剣を包んでいたのだろうと3人は確信した。



その後シーザーの奥方と話したがカジノに最近行っていると話してくれたがそれ以外はこれといった情報がなかったため、一旦3人は騎士団の詰め所に向かうことにした。







~騎士団詰め所~



騎士団の詰め所に戻るとサイモン宅へと向かったチームは先に戻っていたようだった。冒険者たちはお互いの情報を共有する、やはり一番驚いたのはシーザーに成り代わったレッサーオーガが朝方町中にいたことだった、しかも守りの剣と思われるのを背負いながら。そしてサイモンは家にはいなかったようだが隣に住む老婦がサイモン夫婦はあまり仲が良くなく、奥さんは貧民街にある歓楽によく出入りしていると話してくれたそうだ。


カジノと歓楽街は詰め所からそう遠くない場所にある、そこは娯楽があふれる場所、しかし反対を見れば貧民街、まさに天国と地獄が隣り合わせにある。負けたものがそのまま近くに捨てられるよう用意されているのか、はたまた一攫千金を狙う輩が多く来られるように態々隣に作ったのか、どちらにしろ建てた人物は頭のネジが外れているのだろう。



「そのカジノにサイモンがねぇ・・とりあえず今のところそこしか目星はないから行ってみましょうか」



「そうですね、シーザーの行方も今のところ分かりませんから行きましょう」



シャルロットとレゴシがそういうと他の冒険者も同感と頷く。部屋を出てカジノに行こうとすると何名かの団員に護衛致しますとの声をかけられた、大勢で行くのは調べるのに不便だと感じ丁重に彼らは断った。



余談だが騎士団の詰め所から近いということもあり団員の何名かはパトロールという目的で出入りしている。もちろん私服でだが・・そんな彼らは仕事中だが自分も着いていきます!と声を上げてしまう、がしかしながら声が大きい。部屋の中にいた団長に丸聞こえだった。そのあと彼らが笑顔で訓練という名の矯正を団長自ら行っていただけたのは言うまでもない。






~カジノ前~



冒険者たちがカジノへ向かっていると小さな少女が花を売っていた。着ている服は布切れ同然のようで貧民街から出てきたのがわかる。少女は今日食べるものもないのだろう、1輪1ガメルで一生懸命販売していた。だがしかし行き交う人全てに声をかけているわけではなさそうだ。そして冒険者の何名かはどっかでみたことあるような・・といいながら少女に近づく。



「お、お花はいりませんか?1輪1ガメルとなっています」



「ん~お嬢ちゃんどっかでみたことあるような・・あー!思い出した、前にあぶねーシート売ってた子だろ!!」



したっぱはそう叫ぶと少女はポカーンとした顔をしていた、どうやらどういうものを売ってたのかわからず売っていたらしい。そう、少女は以前危ない薬を売っている組織に騙されて商品を売っていた。今回も同様に悪い奴にいいように使われているようだった。



「ということはまさか・・・な、なぁ嬢ちゃん、花ってもう1種類あるのか?」



「あ、はいありますよ、1本100ガメルです!」



「高すぎぃ!!100倍じゃねーか!!」




少女は笑顔でもう1つの花を冒険者たちに見せる。したっぱが顔を近づけ匂いを嗅ぐと甘ったるいような・・脳をとろけさせるような・・気持ちよくなっていくような・・



「オラッ!」



カインはしたっぱの頭を殴った。白目をむいて倒れるが顔はニヤけたままになっているのが一層シュールに見えた。



もう1つの花はどうやら気持ちよくなってしまう成分をふんだんに吸収させた花のようだ。これを誰かが少女を使って広めようとしているらしい。今この子を捕まえても同様の子が増えいたちごっこになってしまうのは目に見えている。



「お嬢さん、普通の花を1輪くれないかな?」



「うん、わかったー1輪1ガメルだよー」



「ほら、1ガメルだ。そういえば花をお嬢ちゃんに渡してくれた人が探してたから戻った方がいい」



「え、ほんと?わかった、すぐ戻るね、買ってくれてありがとう、またねー」



ガンダルフは1本花を買うとなぜか見ても聞いてもいない"花を探していた人"をでっちあげて少女を帰させた。危ない花を売っていたまま野放しにさせたくない気持ちはあるが、少女を捕まえても何の意味もない為現状は放置ということなのだろう。しかしガンダルフが花を買う前にニヤニヤしながら硬貨に魔法をかけているのをシャルロットは見ていた。


「あんた・・お金に魔法かけてたでしょ・・」


「戻った際に何もなくてもこんな危ないもの売ろうとしている奴が居たら幼児が無くても売り上げは回収するだろうと思ってね、ちょっとばかりマーキングをね」


「あんたから何か受け取るときはディスペルマジックをかけてもらってから受け取ることにするわ・・」



「さて・・花の問題は置いといてカジノに行こう」



ガンダルフの魔法に呆れ、震え、冷や汗、色々なことを思い返してどんよりした冒険者達はカジノへと向かった。





~カジノ~


挿絵(By みてみん)



「いらっしゃいませ、本日は何名様で遊ばれて行かれますか?」



そう扉を開けると清潔感溢れ、髪はオールバック、スーツと呼ばれる黒い服を着こなした男が必要以上に礼儀正しく案内をする。中は若干薄暗く、昼を過ぎ夕方に差し掛かる前ということもあり中には遊んでいる客はいなかった。


「遊びに来たんじゃないんだー、ちょっと聞きたいことあってサイモンって人がよく遊んでるってきいたんだけど」



ネロがそう男に聞くと男の態度は一変した。


「知らねえなぁ」



ドスの効いた声で店主が答える。緊張感が凄まじい。


 殺人の依頼のやり取り、と言われても納得できるぐらいに、漂う空気が痛い。ピリピリとしていて、穏やかさの欠片も無い雰囲気。先ほどの態度が全て無くなったかのように男はソファーへ乱暴に座って煙草を吸い始めた。

冒険者達は思わず男がが持つものを確認してしまった。もしかしたら小刀や短刀でもポケットから出したのではないかと思う程、恐ろしく早い動きだった為に。



「でもここに入り浸ってるってご近所さんが言ってたよ、嘘ついてるってことはやましいことがあるってことだよね、ねー昨日来てない?」



しかし、ネロはそんな男の剣呑な雰囲気にも動じない。むしろ、更に煽り始めた。



「チッ、えらく生意気なガキだなオイ。1000ガメル払うってんなら情報を教えてやってもいいぞ?」


男は素直に知っていると言ったが情報量をたんまりもらおうと提示してきた。

とてもじゃないが1~2か月働かなくていいお金など払えない、ましてや報酬がいくら入ってくるのか分からない騎士団からの依頼だ、もしかしたら金ではなく名誉を与えるという報酬になりかねなくもない。


「ここはカジノだったな・・・それならダイスで勝負しないか?負けたら倍払おう」


「な・・倍だと・・」


「だが私が買ったらタダで情報をもらおう、どうだ?」


男は2000ガメルがもらえるかもしれないということで頭がいっぱいだ。最近は騎士団がカジノで目を光らせている為(実際は遊んでいるが)、阿漕なことが出来ず売り上げも伸び悩んできたところだ。

しかも1000ガメルで追っ払おうと吹っ掛けたのだが倍もらえるとなると話が変わる。近くにある歓楽街には久しく行けていない・・そしてここで2000ガメルもらえれば今日終わった後にでも・・



「いいだろう、ダイスで負けたらタダで情報をやろう、だが負けたら2000ガメルだ」


男は欲望のままにガンダルフからの勝負を受けることにした。

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