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通知音

作者: 獏

外は風が強く、木々や色んなものがガタガタと音を鳴らしている。

隣の部屋からは妹の笑い声とゲーム音。

1階からはテレビの音と共に家族の笑い声が響いていた。

肝心な僕はというと、待っていた。

あなたからの連絡を。

何もないまま、画面の奥から通知の音がする気配はない。来るはずもなかった。自分からいかないと話せないことは分かっていた。でも、周りが賑やかな中、僕は静かに携帯を見つめあなたからの連絡を待った。

そもそもの話、僕と君はなんの関係性もないただの「よく話す異性」というのが共通の認識だろう。

いや、共通の認識という言葉には語弊があった。僕は彼女が好き、一方的に想いを寄せているから、よく話す異性ところでは無い。


そんな日々を1年と半年、過ごした。

その間何かあったかというと…何も無かったのかもしれない。一緒に出かけたり、以前よりも会話の回数も増えた。進展があるようにも見えるけど、実際のところそうでも無い。たしかに、進展はしてる。しかし、根本的なところが何も変わっていなかった。

季節は夏、外は灼熱の太陽に照らされ陽炎が揺らいだ。1年半前と何も無い、どこかで見たことが、感じたことがあるような景色だった。隣からは妹の笑い声とゲーム音、1階からは家族の笑い声が響いた。

また僕は待った。あの時から、君からの連絡が増えた。小さなことで一喜一憂するなんて、自分も可愛いやつだなと思ってしまった。実際、長く連絡が来ないと心底落ち込んでしまったり、もう諦めようって思ったりもした。でも、たった1件の通知でそんな思いは消え去り、幸せに浸る。

その小さな積み重ねが、僕の感情の器から徐々に零れ出していった。


そしてまた半年が経った。

僕は君へ連絡を送った。なんの意味もない、小さな話を送った。君は喜んで聞いてくれる。

いつの間にかメールから通話へ変わった。

でも、君からの連絡を待つ日々は変わらない。

必ず来る通知音を今日も僕は静かに待っている。


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