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ストっと降り立つとそこにはついちょっと前まで見たことのある部屋の内装が広がっていた。インドア派としてはやはりこちらの方が落ち着く。
「じゃあ紗奈ちゃん椅子に座って待っててー。」
そういうと彼女は書類ケースから1枚の紙を取り出す。
「じゃあここに全部英語で名前とー、住所とー、電話番号を国番号から。あと国籍をここにお願いしまーす。」
ペンを借りて言われた通りに書いてると電話がリリリと鳴る。
「Hello。あ、かいちょー。いつもお世話になってまーす。…うんうん。うん。おっけー。」
受話器を肩で押さえながらパンパンと手を叩き手帳を広げさせて手を使わずにペンを走らせる。
目上目下関係なくこうやって接してくる所は彼女らしい。
私が書類を書き終えると大体同時にリーちゃんが戻ってきた。
「うん。おっけーだね。じゃあ後で処理しとくねー。後は引渡しするね。手貸して。」
あー。そういえば指切ってやるんだっけ。痛かった記憶が。
そう思ってると爽やかな笑顔でナイフを持ってきた。そして私の親指に刃を当てるとグッと力を込められた。
少し痛みを伴い、刃を離すと同時に鮮やかな血の色が親指の腹から流れ出る。
「それじゃあ。」そう言って私に新しい杖を持たせてそれに被せるようにリーちゃんの手が重なる。
「所有権をスズヤサナに渡します。」
重なった手が僅かな光を数秒放ってスッとその光は杖に取り込まれていった。
「おつかれー。これでこの子は紗奈ちゃんの物になったよー。ヒールだけしちゃうねー。」
そう言って切り傷を付けた親指を治してくれた。
「あ、お金渡すね。ユーロなんだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
その解答に私はバックの中から日本で両替したユーロ紙幣を封閉じした銀行封筒ごと渡すと彼女は早速中身を取り出し慣れた手付きで数えて「ちょうど頂きますねー。」と言って封筒に入れ直した彼女はお手製の金庫に入れて新しい杖を桐箱の中に丁寧に納めてくれた。