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ワルモノだれだ?  作者: 棚橋
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第一話




「はぁっ、はぁっ、、、……っ!」

(バタッ)


 何もない無機質な白い空間の中、隣では八歳、つまり、今の自分と同い年の子どもが、地面に手をついて倒れる。


 どうやら彼は魔力が尽きたようだ。

 と言うのも、今僕と彼(正確には彼らだが)は、魔力を貯蔵する魔道具に魔力を込めて、魔力切れを起こさせることで魔力量を増やす訓練を行っていて、その結果魔力が尽きたものは、彼のように立ち上がることすらできないような疲労に襲われるのだ。


 既に彼以外の子どもは同じように倒れていて、ついさっき、その彼が倒れてしまったので、もう立っているのは僕だけになってしまった。


 …そろそろか。


 そう思った矢先、この何もない部屋の中に、唯一存在する扉が開かれる。

 その扉から、見慣れた顔の男が入ってくる。

 その男は迷わず僕が立っている目の前まで歩み寄って来る。


「マルス、やはりお前が一番の成功作のようだな」


 男は満足そうに微笑んだ。


 僕も満面の笑顔で答える。


「うん。君も含めてね」


 僕の言葉を聞いて気分を害したのか、先ほどまでの満足そうな表情はどこへやら、途端に不機嫌そうにこちらを睨む。

 蛇に睨まれたカエルとはこの事だろう。

 僕はあまりの恐怖に、喋ることすらままならない。


「減らず口は相変わらずのようだな」


「おかげさまで。ここでの辛い訓練の成果だよ」


 この男はこの施設の管理者で、僕たちにこの訓練を課している張本人だ。


 ちなみに、捨て子だったらしい僕を拾って育てたのもこの男で、いわば育ての親みたいなものだ。

 まぁ、物心がつく前、用は()() ()()()()()()()()()()()()()のことは、よく覚えてないので確かとはいえないが、嘘をついても仕方ないのでおそらく本当だろう。


 それに育ての親と言っても、愛情なんてないので実質他人のようなものだ。

 アー、サミシイ。


 僕との問答に飽きたのか、背を向けて去って行く。


 しかしその時、僕の隣で倒れてた彼が突然立ち上がり、あの男のめがけて飛びかかろうとする。

 しかし、その試みは成功することはなく、取り付けられた首輪により魔力切れを起こし倒れた。

 また倒れてしまったみじめな彼を残しあの男は去って行く。


 ちなみに彼につけられている首輪は、事前に禁止されている行動をとると、電流が流れて着用者に激痛を与えるというものだ。

 それと着用者の魔力を使うので魔力を補充する必要はなく、また、着用者の魔力が少なかった場合は、さっきの彼のように必然的に魔力切れが起きるので、どちらにしても行動を制限できる仕組みだ。


 当然僕にも同じものがついている。

 あの男が(自分の子)に愛情を持っていないことが、よくうかがえることだろう。




 その後、僕も魔力切れを起こし、その後もいつも通りの訓練メニューをこなし、唯一の休息の場である自室に戻った。






 ……おかしい。

 そろそろ僕が目が覚めてから、二時間がたとうとしている。

 僕がこの部屋にいられる時間は、大体五時間だ。それくらいになると、あの男の部下がこの部屋に現れて、訓練に連れて行くのが常だ。

 しかし、体の調子から考えて、四時間は寝たはずなので、僕がこの部屋に入ってから、少なくとも六時間は経っていることになる。


 僕が今の状況でどうすればいいのかを決められないまま、また一時間過ぎていく。


 このままではらちがあかないので、一度部屋の外を確認しようと決意する。


 が、しかしその必要もなくなった。

 何故なら、血に濡れた研究員。つまりあの男の部下が僕の部屋に駆け込んできたからだ。

 彼は誰にやられたのか、片腕を失っていた。

 かわいそうに、彼の哀れな姿に涙を禁じ得ない。

 ついでに笑いも。


 腕の痛みにより正気を失いかけている彼に、今何が起こっているのか尋ねた結果、今施設が襲撃されていることが分かった。

 それも強盗などではなく、国から正式に要請された兵士のようだ。


 まぁ、この施設で行われていることは、どう繕っても人道的な行為ではないので、国で禁止されていて当然だ。

 むしろなぜ、今まで誰も派遣されなかったのか不思議なほどだ。


 そうだ、もっと早く来たらこの辛い生活から早く解放されたのに。

 まったく、ここから出たら、国の上層部に文句を言ってやる!

 ついでに菓子折と、お世辞をいくつか用意するが、断じて彼らにゴマをするためではない。


 どの道ここで得られるメリットも、なくなってきたと感じていたとこだし、タイミング的にはちょうどいい。

 そう考え、ここを出ることを決意する。


 と言うわけで、必要なくなった研究員の彼の頭を踏み潰す。

 特に意味はない!!


 当然、あの男の部下を攻撃することは命令違反なので、電流が流れ、激痛が走る。


 まぁ、それだけのことでしかない。

 無理矢理体を操ったり、死んだりしない。

 ただ痛みを我慢すれば、なんてことはないこの魔道具に、改めて呆れを覚える。


 ただ、鬱陶しいことには変わりない。


 右手で魔道具に触れる。

 この魔道具には意思があるのか、流れる電流が一層強まる。

 これ以上強まると、死にはしないが危険なので、指先に魔力を込めて首輪を握る。

 途端、首輪はパキッと気分のいい音を発して壊れた。


 長年窮屈に思っていた首輪が壊れたので、僕はこの上ない開放感に浸る。




 さぁ、この施設ともお別れだ。

 ここから僕は人生の新しい一歩を踏み出すんだっ!!!


 そう思い、一歩を踏み出すと、幸先悪く死体を踏んでしまった。


 ん?

 よく見るとこの死体、頭部がない。


 ひどいっ! 誰がこんなことをっ!






 ……………………………行こうか……。

 虚しくなった僕は、足早にこの部屋を去った。

 もう動かない、愛しの(研究員)を残して。




 なんとか一週間以内に投稿できました。

 この調子で投稿できるように頑張ります。

 

 誤字脱字があったり、おかしな文があったら、教えてくれるとありがたいです。

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