表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワルモノだれだ?  作者: 棚橋
1/3

プロローグ

 誤字脱字があれば訂正をお願いします。




 昨日ニュースで、ある殺人鬼についての話をしていた。


 何でも、その殺人鬼は幼少期から親に虐待されていて、暴力がいけないことだとは知らなかったそうだ。

 その上、学校にも行かせてもらえなかったため、人との関わり方も分からずに母親に家を追い出され、頼れる宛もなく、当然、金も持ってなかったので、手当たり次第に店を襲ったと言う。

 その時に、店内にいた店員と客の三人を殴り殺したのだ。


 そのことを聞いたコメンテーター達は、その殺人鬼の行為は許されないと言いながら、その殺人鬼に同情を示していた。

 僕自身も、大方同意見だ。

 その殺人鬼が全く悪くないとするのはおかしな話だが、全ての原因が殺人鬼にあるとするのも、また違う気がする。


 罪を憎んで人を憎まず。

 そこまで割り切るのも難しいだろうが、罪人にも罪人なりの事情があるとし、理解することも必要だろう。



「要は、事情があるから聞いてくれと?」


 爽やかな春の気候、……に、早くなる事を祈りつつ、震えるような寒さの中、僕は、親友の高隈(たかくま) 明仁(あきひと)と、クラスメイトの白砂(しらすな) 久美(くみ)とともに学校へと足を進める。

 ……今は久美に胸ぐらを捕まれているせいで止まっているが。


「まぁ、平たく言えばそういうことだね」


 僕の長い前置きから、見事に僕の意図だけ抜き取って見せた親友に戦慄を覚え、心の中で惜しみない賞賛を送りながら答える。


「へー。いったいどんな事情で、私の大切な消しゴムなくしたの」


「それが、実は昨日スリにあってさー。その時一緒にポケットに入ってた消しゴムも一緒に取られたみたいでさー」


 バシッ


「痛っ!何するの!」


「何するの、じゃないわよ!よくもそんな分かりきった嘘を!」


 嘘じゃないんだけどなー。

 人のことを頭ごなしに疑うとは。彼女はきっと、人のことを信じることができない、心の病を患わせてるのだろう。

 僕は彼女を怒らせたい訳ではないので、決して口には出さないが。


 しかし、そのことを口にせずとも、嘘をつかれた思っている久美は、より怒りが増したよう。

 我が愛しの学び舎に着くのはまだ先になりそうだ。




 ようやく久美に開放され、シャバの空気に心を震わせながら進む。

 遅刻はせずにすみそうだが、ギリギリになっては、せっかく早めに家を出ているのに意味がないと思い、足をもう少し急がせる。


「あっ、君、倉坂(くらさか) 幸一(こうい)くんだよね」


 しかし、またもや僕を学校へ行かせまいとする運命の罠が僕の足を止めさせる。

 聞き慣れない声が僕の名前を呼ぶので、不思議に思い振り返る。

 と、そこには昨日お世話になったお巡りさん。


「やっぱりそうだね。昨日言っていた財布が見つかったよ。はい、これ」

 

 そう言って、お巡りさんは僕に財布を渡す。


「ありがとうございます。警察の方にはいつもお世話になってます」


「まあ、これが仕事だしね。あっそうだ、これ、昨日言っていた消しゴム?」


「あっ、うんそう。ちょうどよかった。これ、彼女に借りたものなんだ」


「あー。どうりで女の子の持ち物なのか。はい、どうぞ」


「……えっ、はい、ありがとうございます…」


 嘘だと思っていた久美は、警察官に消しゴムを見て固まっている。

 ふっ、人を嘘つき呼ばわりするからだ。


「おい、二人とも遅刻するぞ」


 そうだった!

 いけない。急がなければ、学校が僕を呼んでいるっ!!






 何で学校なんて行かなきゃいけないんだ!!

 

 まったく、ちょっと課題をやってこなかったからって、一人で教室を掃除させるなんて横暴にもほどがあるよ。

 せっかく帰宅部に所属しているのに、帰るのが三十分も遅くなってしまったじゃないか。


 教師陣の方々にはもっと生徒の時間を大切にするべきだと思う。

 

 僕は、教師陣が大切にしなかった時間を取り戻すため、早歩きで通学路を移動する。


 しかし、今日はどうも上手く行かない日のようだ。

 いつも通り交差点を渡ろうとしたとき、目の前で信号が赤に変わってしまった。そこまで交通量は多くないけれど、小心者の僕では、無視して渡ることもできない。


 信号機っ!君だけはっ、君だけは信じていたのにっ!!!


 まぁ、無生物に怒っても仕方ないし、素数でも数えて気長に待つとしよう。


 ………………………スッ。


 僕が239を、52番目の素数として数えたとき、視界の隅に何かが駆け抜けたように見えた。

 気になって視線を向けると、それは白い猫だった。

 そしてその猫にとって運の悪いことに、猫の進路の先にトラックが通ろうとしていた。


 僕は何もできず、ただ猫の無事を祈ることしかできなかった。


(願わくば、かの猫が無事に極楽浄土へいけますように……)


 が、その猫の死を防がんとする救世主が現れた!


 猫がトラックの前に差し掛かったとき、その救世主が猫を守るように立ち塞がった。

 …ん?

 あっ、僕の学校の制服だ。

 と言うか、僕のクラスメートの………誰だっけ?


 …まぁいいか。

 どーせ、明日の朝刊とかで分かるだろう。

 猫をかばって死ぬなんて主人公のような死因、なかなか面白い記事になるだろうし。


 それにしても、若くして死ぬなんてかわいそうに、人生を楽しみ切れていないだろうに……。


(願わくば、彼の両親が彼に生命保険をかけていますように……)


 いや、もしそうだとすれば彼は当たり屋の可能性が高くなるのか……。


 そもそも、こう言う死因で保険は下りるのか?




 そんな風にのんきに考えていたら、横から物凄い轟音が聞こえてきた。

 トラックの運転手が、僕のクラスメートである………もう、誰か分からないから少年Aでいいか。それで、その少年Aに驚き、急いでブレーキを踏み、避けようと()()()()()()()()()()のだ。


 僕は突然の出来事に反応出来ず、そのままトラックに突き飛ばされてしまった。


 これは、死ぬな。

 直感でしかないけれど、おそらく僕は助かることはなく死んでしまうだろう。それはなぜか確信を持っていえる。


 あーぁ、この死因なら文句なしに生命保険が出るだろうけど、残念ながら僕の両親は、僕に生命保険はかけてないだろうなー。


 それにしても、トラックの運転手もかわいそうに、猫が勝手に飛び込んで来ただけで、自分は何もしていないのにこんなことになるなんてさ。


 彼はどう思うだろうな?

 人を轢いた自分を呪うかな?急に飛び出してきた猫に怒りをぶつけるかな?それとも、余計なことをした少年Aを憎むかな。

 もしくは……………僕を責めるかな?

 

 まぁ、本人達がどう思ったと頃で、運転手も少年Aも今までよりもっと不幸なことに見舞われるだろう。

 こう考えると、非常に僕らしい最期と言えるかもしれない。


 はぁ、そろそろ辛くなってきたな。

 最期くらい、かけがえのない家族との思い出とか、友人との思い出とかを思い出すべきとは思うが、ないものをねだっても仕方がない。

 仕方ないので僕は、僕を轢いた彼らのこの先を案じながら、この短い生涯を終えようと思う。




 まぁ、僕は自分が読めない小説に、興味なんてないけどさ。




 次回はできれば一週後位に投稿しようと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ