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日常系ネガティブワールド  作者: 神楽坂かぐら
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第四話  つまりは自分次第  つまらなくても自分次第

 二日目の学校は朝から下校まで寝てしまったせいで、職員室で先生にこっぴどく怒られて精神が疲弊していた。

 だが、しっかり睡眠を取ったおかけで体力は有り余っていることに資料運びを手伝わされている道中に気づく。

 ーーこれは何を運んでいるのだろう?

 明日みんなに配るプリントを職員室から教室に運ぶように言われた。

 そのプリントが気になり、ふとプリントに目をやる。

『二年三組委員会一覧』

 なんだ、明日委員決めなのか。だるいな。

 まぁ、俺には関係ない話だからいいや。

 そう思い、視線を逸らそうとした瞬間、信じられない文字が見える。

 ーー委員長 高山陵 天道桜

 はっ?

 一瞬立ち止まり、頭が真っ白になる。

 何故、委員を決めても居ないのに名前が書かれているんだということと何故、委員長が俺なのだという事が思考の全てを占領していた。

 これは何かの間違いだと思い、急いで職員室に戻る。

 職員室の扉をおもむろに開く。

「先生っ!委員会一覧の委員長の所に俺の名前が書いてあります!おかしいですよ!」

 先生は顔色一つ変えずに口を開く。

「なにがおかしいのだ?委員長」

 自分が呼ばれた感覚は一切なく、目の前の女性教員が何を言っているのか理解出来ずにいた。

「へっ?いやっ、だから......」

 と、言いかけた手前言葉を飲み込む。

 待てよ......昨日の記憶を思い返す。

 ーー明日は委員会の......。

 (キンコーンカンコーン)

「まぁ、明日でいっか。それでは解散!」ーー

 (まさか昨日の終礼の時に言いかけていた言葉って、委員決めのことだったのか?)

 事態をのみ込んだ時には既に遅かった。

 先生はようやく理解した俺の顔を見て

「お前が悪いんだ。断らなかったからな」

「いやっ、断れないでしょ!!」

「嫌だったらいいんだぞ?その代わり、自分で自分の言葉でみんなに言うんだぞ」

 この人はわかっている。俺にそんなマネができっこないと。心底下衆な女だ。

「わかりました。委員長でいいです」 

「おう!物分かりがいいな!それじゃさっそくプリント運んどいてくれ!」

「はい」

「運び終わったら帰っていいから。よろしく!」

 そう言われて、再び職員室を後にする。

 教室にプリントを運ぶ最中、これからの事を考えていた。

 さっきまでは体力が有り余っていたのに不思議と体力がなくなっていた。

 ーー委員長って何をすればいいんだろう。

 それはそうと、これは相当厄介なことになったぞ。

 (委員長って、そういえば二人だっけ?)

 と、思いプリントに記載されている委員長の欄の自分の名前の隣に目をやった。

 (天道桜......って、えぇ!?) 

 そう。一緒に委員長を努めることになったもう一人のクラスメイトはあの人気美少女の天道桜だったのである。

 正直、ただでさえ委員長というだけで嫌な上に人気者の美少女と一緒となるとこれは荷が重すぎる。

 加えて、周りの騒がしい連中に絡まれないとは言い切れない。

 俺は、今日の自分ほど恨めしいと思ったことは今までに一度もないだろう。

 このプリントに修正を加えて書き直そうかと思ったが、クラスの人の名前を誰一人知らない。

 唯一の友達の加藤は体育委員という、人によっては委員長よりも面倒くさい委員だったので、委員長と体育委員を書き換えるよりかはそのままの方が良いと判断し、やはり諦めざるを得なかった。

 (まぁ、穏便に仕事をまっとうすれば案外、楽で平穏に過ごせるかも)

 という希望だけが心の拠り所ではあったが、実際に一年の委員長の感じを見てみると確かにそこまで仕事をしている印象はなかったのであった。

 (よぉーし、こうなったら意地だ!男の意地をみせてやる!)

 誰も居ない自分のクラスの教室に着き、教卓の上にプリントを置き叫ぶ。 

「俺は委員長になるっ!!」

 こう言って、恥ずかしさが追いつく前に帰宅する二日目の放課後であった。

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