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後編

彼の実家に行った折、朋子ちゃんは忙しいらしく不在だったが義母から彼女の結婚が決まったので、結婚式にはぜひ来てねと式に招された。


本人から報告がきてないぞ!私より彼女のほうが、そういったことに興味はなさそうだったのに…。


あのゴロゴロしていた彼女…家事は嫌いで、冬にはこたつの中で寝そべって、せんべいをボリボリ食べつつ、よく日本茶を要求された姿を思い出した。


恋愛や結婚に興味がなく、家事とか全くやらなかったのに、あの子がとうとう結婚か…感慨深かいものを感じる。

そういえば学生時代は学業に真面目に取り組み成績も良かった彼女が、いい相手と結婚するために茶道や華道にも力を入れていたことを思い出した。


本人から詳しく話を聞きたい。


連絡をとろうとしたところ、今は仕事と結婚の準備で忙しいからと、義母が慌てて止めてきたので断念した。


そして朋子ちゃんの結婚式当日。彼女には会えてないままだった。

天気は曇っているけど、雨が降ってないのでありがたい。


受付を済ませプロフィールをもらい待合室にいく。早速プロフィールを開くと、そこには見たことのない綺麗な女性の写真が掲載されており、私は一瞬固まった。


この写真は彼女でよろしいのかしら?

そこには別の人の写真が掲載されていた。


ちょっと最近、目の調子がよろしくないのかもしれない。瞬きを繰り返し写真の下に名前を確認するが、そこには間違いなく朋子ちゃんの名前がある。


しかし、写真は女子アナばりに綺麗な人がいる…私の目の視力はよろしくない上に私の記憶力には自信がない…。


朋子ちゃん…しばらく会わない間に、綺麗になって…これが結婚をするという威力なのだろうか…恋の力なのであろうか…。


私は3回まばきして、もう一度写真を見直す。

はっきり言って別人だ。


急遽どうしても外せない仕事が入り、式に行けないことを悔やんでいた先輩に写真をラインする。


返事は、おおっ!見ない間に綺麗になって、、と、返信がきた。


やっぱり私の記憶力がよろしくないのであろうか…。記憶している顔と別人なんだよな。

まぶたも、一重だったけど、二重になってるし…。


やっと彼がやってきたので、プロフィールを見てもらう。

「これは...」

周りを気にし、声を殺しながら爆笑する。

私の目と記憶力は正しかったらしい…身体が正常に昨日していることはいいことだ。


しかし恋の力で、よっぽど幸せで綺麗になったのかもしれない。

結論を出すにはまだはやい。本人に会うことを楽しみにしよう。


式がはじまった。

彼女の顔を確認すると、私の記憶の中の彼女がそこにいた。

あの写真は別人だよね。


友よ…何故あの写真をプロフィールに載せた…。

まあ、おめでたいので詳しいことは突っ込まないことにしよう。


優しい色合いのドレスに包まれた彼女の姿は可愛いので携帯の写真を撮ると、先輩から式はどう?と、ラインが入ってきた。


行けないことが残念だと悔やんでたので、ドレス姿の朋子ちゃんの写真をラインする。

キレイだねーと返信があった。

プロフィール写真とのギャップにツッコミは入らないのね。


新婦の挨拶で可憐な声が聞こえてきた…。

曇り空が晴れていくような澄んだ声だが、窓の外は小雨が降ってきた。

…私の友達はこんな声をしてたかしら?

私は耳を軽く揉み、耳を澄ますがやっぱりいつもの少し低めの彼女の声とは違う。


隣にいる彼をみると案の定、声を殺して笑っている。

彼女は幸せそうなので、細かいことは気にしないでおこう。


彼女の結婚相手は線が細く知的な感じの男性で、

図太い彼女とは仲良くやっていけそうだ。


式が終わり帰り際に彼は言った。

「くるんじゃなかった…ご祝儀を渡すんじゃなかった…」

なんとなく気持ちはわかなくもないけど…正直な感想すぎる。

「あんなに見栄をはった結婚式ははじめてだ」

そこは同感だ。


結局、彼女ともあまり話はできなかったので、後日に本日来れなかった先輩と一緒に新居におじゃまする約束をした。詳しい馴れ初めは聞けず仕舞いで残念だ。



彼女が結婚して半年後に、改めて彼女の新居に遊びに行く。

あいにくとご主人は仕事で、彼女が嬉々として出迎えてくれた。

いらっしゃいという声は低めのダミ声で、あの澄んだ声は結婚式仕様だったねと納得する。


部屋に踏み入れると、お惣菜のパックの山と、埃と、積み上げられた洗濯物の山が…。


「ごめん、これでも精一杯、掃除頑張ったの」

あっけらかんと笑いながら彼女は言う。


「どこがだよ…」

流石に声に出して突っ込んだ。


「まあまあ、お茶くらい出すよ」


彼女が机の上にあるお惣菜のパックを腕で横に押すと、床に落ちた。


「…その前に、部屋を片付けようか…」

あとから先輩も来る予定だが、この部屋に通すのはダメな気がする。


「掃除は大丈夫なの?旦那さんは、怒らないの?」


彼女はにっこりと笑った。

「うん?言わないよー。」

何も言わせまいとする迫力は…おばあちゃんの笑顔と少し似てる気がした。

ちょっと懐かしい気分にもなるが、おばあちゃん以外にされると、面倒くさい感じがする。


言わないのではなく言わせないの間違いではないだろうか。深くは突っ込ままい。


先輩が来るのだ。サボろうとする彼女を叱咤し、部屋を片付けを勧める。

先輩が来るまで時間がないため、得体の知れないものは捨てていいか謎なので、端に避けておく。あとで朋子ちゃんに分別してもらおう。

1時間ほどかかり、なんとか綺麗になった。


「ありがとう!お茶の用意してくるから、ゆっくりしてて」


あの怠惰な彼女がお茶の用意を…彼女が人として成長した…私は感動に打ち震えたのは一瞬だが、次の瞬間、不安に震えた…果たして彼女はちゃんとしたお茶を用意することが出来るのだろうか?


と、台所へ向かおうとした瞬間、私が持ってきた手作りクッキーと、2リットルのペットボトルのお茶と、コップを2個もってきて、コップに入れてくれた。


お茶は賞味期限がきれてないことをコッソリ確認してからお茶を飲み、安定の美味しさを感じる。


私はホッとした…亡きおばあちゃんが結婚は人を成長させてくれるものだと言ってたのを思い出した。


彼女も大きく成長したなあ…少しだけ感動に打ち震えた。


玄関のチャイムがなり、彼女が玄関に向かう。

先輩をつれて来た。


「先輩、座っててください。コップを持ってきますから」


朋子が台所にいく。


私を見るなり困ったような顔をした。


「結婚式の朋子ちゃんと、今の朋子ちゃんと別人なんだけど…」


「私の記憶では、今の朋子ちゃんと結婚式前の過去の朋子ちゃんは同一人物なのでご安心ください」


「いやいや、意味がわからないよ…」


「結婚式の写真、別人であろうプロフィールの写真と、本人のドレス写真を送ったじゃないですか…」


「ドレス写真は逆光で顔がよくわからなかったから…うん、納得した」


携帯を取り出し写真を確認すると、先輩のおっしゃる通りだ。


「すいません、どうも写真を撮るのは苦手みたいです」


先輩は苦笑いして、座った。


朋子ちゃんがコップを持ってきた。


「ねえ朋子、プロフィールの写真を見たんだけどハッキリ言って、あれは詐欺だよ」


先輩、ハッキリ言っちゃうのね…。


彼女はあっけらかんと笑いながら答える。

「ああ、あれね。綺麗なお見合い写真を撮ってくれるってところにいったら、ああなったのよ」


何故わざわざ、本人がその場にいるのに別人と言わんばかりの加工した写真を使用するのか…。


「そのままの朋子ちゃんの写真でも充分いいと思うんだけど…」


「いや、だってお店の人に目を変えた方がいいですねって言われて、そのほうがいいならよろしくとお願いしたら、ああなったのよ。せっかくなので、そのままお見合い写真として使用したよ」


「お見合い写真として使ったんかい!」


目はその人の魂を表すというのに、変えたら完全な別人じゃんか…。


「うん、そのお見合い写真のお陰で結婚が決まった感じだよ」


「…実際、会った時は何か言われた?」


「ううん、何も。細かいところは拘らないタイプみたい。

ただ、結婚報告に主人の実家に挨拶に行った時は、なんだ!このチンチクリンはっ!写真と違うっ!って感じで出迎えられたけど、言葉には出してないので、こっちも黙ってた」


と笑いながら答えてくれた。


なんというか…朋子ちゃんのご主人の御一家は大らかなのかしら?


先輩も黙って笑っている。


「どういう経緯で結婚することになったの?」


朋子ちゃんが幸せそうに、ご主人が素敵な人で私を見初めてくれて…と、永遠と30分話して別の話になったかと思うと、またご主人との話になるということを3回繰り返すので、先輩は黙って苦笑いしながら相槌をうち、私は話に飽きて魂を半分飛ばしていた。


朋子ちゃんは話したいことを気の済むまで話さないと、気が済まないのだ。


朋子ちゃんの結婚前に、連絡を取ろうとして止められた理由が分かった…。


…そういや、嘘やごまかしは脳を老化させると何かの本に書いてあったのを思い出した。

加工写真も私の脳を劣化させ、私の忘れっぽさに一役買ってるに違いない。


やっぱりおばあちゃんの仏壇の部屋には、画像修正してない写真もこっそり置こう。


世話になった、おばあちゃんの真実の姿だけでも留めておく努力はしたほうがいいのだ。


亡くなったおばちゃんの気持ちより(写真の件について私はおばあちゃんから何も聞いてないし)、いま生きている私の気持ちを尊重するのだ!


結論が出たところで、朋子ちゃんが用意してくれたお茶を飲む。

これはこれで美味しいけれど、おばあちゃんが亡くなってから、しばらく飲んでなかったよもぎ茶が飲みたくなってきた。


意識を完全におばあちゃんへ飛ばしていたら、


「話、聞いている?」

先輩が冷ややかに私を見ている。

その顔は朋子ちゃんの相手を私だけに押し付けるなという顔だ。


「聞いてます」

と、誤魔化すように笑う。

途中までは真面目に聞いていたので嘘は言っていないし朋子ちゃんが幸せなのはよく分かった。


私、朋子ちゃんも、そろそろ気が済んだはずなので、しばらくは黙っていてくれるだろう。

別の話題をふってみる。


「先輩は、LINEのアイコン変えないんですか?

前に送ってくれたご主人さんとの写真はすごく良かったですよ。」


先輩のアイコンは、先輩の後ろ姿のままなのだ。


「顔出しは恥ずかしいし、あの後ろ姿の写真はバレないようギリギリのラインで苦労してスタイルが良くなるように画像修正したものだしね」


「全然、気づきませんでした!」


私は携帯で、先輩のアイコンと先輩のスタイルを見比べた。…差異はわからない。


私は先輩に尊敬の眼差しを送った。

これぞ、正しい画像加工の仕方だ!この誤差は脳の劣化に繋がらない…はず。

少しでも不自然ではない限りの写真を残せるように私も画像写真のプロを目指す!


でもやっぱり、おばちゃんの写真は修正を施してないものをそのまま置くけど。


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