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前編

近頃は楽しそうに恋愛や結婚の話をしている友達が増えてきた。


幸せそうや友達を見るたびに、恋愛…いいなあと思うものの、図書館で借りた本や雑誌に夢中になり、ああ…幸せ…とウットリその世界観に浸ってしまい現在にいたる。


そのまま付き合う相手もなく、29歳になってしまった。

それでも友達が貸してくれた少女漫画で恋愛のレの文字くらいは学んでいると自負している。


…そして最近、物忘れが激しい。

過去に借りた本をまた借りてしまった…文芸書を前に借りたが、今度は同じ作品の文庫化したやつを借りたのを最初の10ページほど読んで気づいてしまった…幸いなことに内容はあまり覚えていなかかったので楽しめたが、自分のウッカリ具合に不安を覚える。


最近、記憶力が低下していると友人である朋子ちゃんに相談したところ、アンタの場合は元々だよと、まだ認知症になる年齢でもないよねと、見事にスルーされた。

同じ本を二回購入したわけでもないので私の懐は傷んでいないし、気にするのも面倒になってきたので、この件は一旦忘れよう!


そんなある日、何かと気にかけてくれた先輩に久しぶり会った。結婚が決まったよ。

式はあげないけど報告しておくねと、歯に噛んだ笑顔と柔らかい幸せオーラで、こちらまで自然と顔が綻んでくる。


語らずとも、先輩から自然と醸し出される暖かい空気に魅了されてしまった。

真の幸せとはさほど語らずとも醸し出されるものなのかも…。

先輩と一緒にいるだけで幸せな気分になってくる。


ついでに、先輩にも物忘れが激しいことを相談してみた。

「貴女はもともとウッカリさんだけど…。

物忘れかなあ。適度に運動してる?食事はよく噛んで食べてる?早寝、早起きしてる?気になるなら基本的な生活習慣を見直してみれば?」


とのお言葉を頂いた…小学生に戻った気分だが、どれもクリアしていない気がする。


気まずい…。

「改めて、気を付けます」

曖昧に笑って先輩と別れた。



家に帰って今で一息ついていると、おばあちゃんがヨモギ茶を入れてくれた。

子供の頃は独特の癖と苦味が駄目で人間の飲み物ではないと拒否しまくってたが、思春期におばあちゃんが美容にも身体にもいいわよとマメにニコニコと勧めてくるので、チョビチョビ飲むようになり、今は普通に飲めるようになった。


窓越しに庭に生えてるヨモギが微かに揺れている。

思い返すとお茶代を節約したくて飲まされていた節もある。

正直、ヨモギ茶の効果のほどはよくわからないが、マメに飲むようになって以来、肌の調子はいいような気もする。


気づけば色々なことをおばちゃんに洗脳された…食べ物も好き嫌いの多かった私にさりげなく嫌いなものを食べれるように誘導してくれたし、バランスの取れた食生活ができるのもおばあちゃんのおかげ…ありがたや。


お茶を飲みながら、ぼーっと今日の先輩の様子を思い出す。なんだろう…円を描いたような先輩の周りオーラ…愛と平和で幸せですと言葉ではなく雰囲気で語っていた…。


「結婚いいなあ」


と、思わず言葉が漏れ出ていた。


すると、おばあちゃんが、たんぽぽが咲いたような笑顔を私に向けた。

「あら、いいタイミング。

あなたも年頃だから、私の友達にいい人を紹介してくれるよう頼んだばかりなのよ。

釣書と写真を用意しといてね。」


私の了承なしに頼んだんかい!

と思ったもののナイスタイミングだ!

これは、さっそく婚活しろという天の掲示。

「おばあちゃん…紹介してもらったから、先方の顔を立てて、断っちゃダメとかっていうパターンとかないよね?

紹介してもらうなら気楽な感じがいいんだけど…」


前に読んだ恋愛小説に取引先の紹介されて、うっかりお見合いしたら、断りづらい状況に追い込まれた話を

思い出して確認をとる。


おばあちゃんが一瞬黙り込んだように思えたけど

「そんなに深く考えなくてもいいわよ。写真もスナップ写真でいいし気楽に考えて」

と、ニッコリ答えてくれた。


「それじゃあ、写真と釣書を用意するね」

善は急げだ。


自分の部屋に戻り手元にある写真を探していく。

写真写りが悪い…。

写真屋さんで撮影してもらった成人式の写真微妙だ…。

というか、そのお金は目をつけていた漫画を購入するのに回したい…。


本人以上に写りのよい写真がないかと探すものの、微妙な表情のものばかり。


半目だったり、引きつった笑みを浮かべる状態の自分の写真を何枚もみるのは、なかなか辛いものがある。


とりあえず探すのを諦めて携帯で慣れない自撮りにチャレンジしたものの、結果は語るべくもない。


写真を修正しようとなれないチャレンジするが別人になってしまう。


このしょうもない写真に写った私がありのままの私なのだ…仕方ない…あるがままの己を受け入れよう…。


諦めて写メを消去した。


写真の自分に精神的なダメージは大きくベッドに倒れ込こむ。

現実逃避のため読みかけの小説に手を伸ばそうとすると携帯のメール音が鳴った。


メールを開くと、先輩から写真が送られてきた。

突然、結婚相手に写真屋さんに連れて行かれたらしい。

お相手とのいい写真撮れた!と、2人の笑顔が素敵な画像が送られてきた。

1ミリ単位で動きを指定されて撮影に1時間かかって体力も精神も疲労困憊だったで、オッケーがでて、ホッとしたところに撮られたのよ!と、嬉しさ溢れでている。


普段はいくら綺麗な写真を撮ってくれるにしても1時間もポーズを指示され続けるのは面倒くさいと思ってしまうのだが、このタイミングでこの写真を見せられると羨ましい気持ちが増してくる。


この幸せオーラにあやかりたい!

どこの写真屋さんか尋ねると、今日の夜に撮影にでかかけて1年ほど帰ってこないとのことらしい。


がっくりと肩を落とすと、床にはイマイチな自分の顔が大量に散らばってる。


まだ半分も探せてない。


この写真が私の真実の姿…がっくりだ。

ついでに素敵なお相手に会える可能性も遠ざかっていく感じがする。


リビングに行き、鬱々と

「写真はなんでもいいの?」

おばあちゃんに聞くと、

苦情は受け付けませんという迫力がある微笑みと共に

「なんでもいいけど、出来るだけ写真写りのいいやつね。」

と釘を刺され、心の中で涙を流す。

落ち着こう。

鏡を見て思うのだが、絶世の美女には及ばずとも、あの写真ほど酷い顔はしていないと思う。


1人で探すのも疲れてきた。

ここは客観的な意見も必要だ。私

の真の美しい姿を見つけるために近くに住んでいる友人である朋子ちゃんに頼るしかない。


連絡を取り後日に行く了承を得ると、束の写真を用意する。


さっそく、朋子ちゃんに来週会う約束をとりつけた。



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