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ベスティアの手違い

今日も、もう一話投稿します!何時になるかわかりません、すみません、頑張ります。

今日でテイラー街を離れ、獣人族の国にようやく入る。


今日も1日馬車を走らせ、次の街、獣人族の国の一番端にある街を目指す。そこから小さな街を何回か経由して1週間も走らせれば、王宮に着く。


馬車に4人は乗り込み、まだ朝なので、リタが御者席に座り、馬車を引くことになった。それでも念のため、ローブを羽織り、フードを目深に被ることは忘れない。


街中なので、ゆっくりと馬車を走らせる。関所近くで今から獣人族の国に向かう、他の馬車も多く停車している。


関所を通りすぎるその時、道の端で口論をしている者がいるのにリタは気がついた。


「そんな!今日帰るから席を空けておいて、と言ったじゃないですの!」


「先着順で、予約は不可だと言っただろう!」


「でもあのとき、優先的に席は用意しておいてくれるって言ったじゃない!」


「先着者を優先的に案内すると言ったんだ!それに既に出発の時間は過ぎている。その上、見ての通り満員だ。乗客を待たしているんだ。悪いが、他をあたってくれ」


「そんな!他って、どこにいるんですの!他の馬車も3日先まで埋まっていると言っていて……ここで1人で3日も空きを待つなんて……!ちょっと!ねえ!あと私1人ぐらい乗れますでしょう?!」


侍女の格好の上からローブを羽織った女性が怒っている。乗り合いの馬車に向かってなんとか乗せて貰おうと頼み込んでいるようだ。


しかし断られたらしい。親指の爪をガジガジ噛んでイラついた様子が見える。


「チッ、予定外だわ。早くここを経ちたいですのに」


去って行く馬車に向かって毒を吐いているのは、一緒に仕立屋のベロサルトを出てきた獣人族の女性だ。


リタは思わず女性に声をかけた。


「昨日お店で一緒だったベスティアさんですよね?大丈夫ですか?」


「えっ?!……あなたは昨日の!……ええ、そうなの。ちょっと手違いがあったみたいですの!オホホホホ」


「手違い?馬車に乗れなかったの?」


「え、ええ、まあ……お気になさらないで下さいな」


馬車を止めたことで異変に気がついたレイズが布を捲って馬車内から御者席に顔を出した。


「どうした、リタ?馬車が止まったようだが、何かあったか?」


「昨日のベスティアさんに乗り合い馬車の停留所でバッタリ会っちゃった!馬車を乗り過ごしちゃったんだって〜」


リタはなんの気なしにレイズに状況を説明した。


「そうか、災難続きだな。それじゃあ、せめてもの幸運を授けよう。同乗して良いぞ」


女性の服を事故とはいえ、汚してしまった罪悪感をまだ引き摺っているレイズは、救いの手を差し伸べることにした。


「いいよな?」


一応レイズは他の3人にも確認した。

あるお方の侍女とボカされてはいるものの、ベロサルトと取引がある以上、身元も悪くない筈だとして、反論する者はいなかった。全員がコクリと頷いたのを確認して、レイズはベスティアに声をかけた。


「乗ってくれ。せめて他の乗り合い馬車が出ている街まで送り届けよう。行き先は獣人族の国だろう?」


「いえ、自分で何とかしますので……」


「え、でも今、3日待たないとって言ってなかった?」


リタは心配して先程の口論を思い出して伝えた。


「そ、それは、その……今の時期、予約でどこもいっぱいで……さっきの方に席を予約したはずが、彼は予約を受け付けていないらしくて……!その上他の馬車は3日先までいっぱいだと……」


「俺達の身元が心配なのか?安心しろ、俺達は獣人族の王宮に呼ばれている。リタ、手紙の紋章を見せてやれ」


「ああ、うん」


インベントリをポシェットの中で見えないようにタップして、王宮からの手紙を取り出す。


ほら、とリタは手紙の紋章部分を強調してベスティアに見せた。


「ま、まあ!なんてこと!」


ベスティアはそれを見て青ざめた顔をして、口をあわあわ震わせた。

ベスティアの行き先も獣人族の国だ。もしここで(かたくな)に断ってしまったら、獣人族の国で再会してしまった場合、疑いの目を向けられる。同じ方向だったのに、なぜあれほど拒んだのか追求されては困る。そう判断したベスティアは、渋々同乗を申し出た。


「わ、わたくしも獣人族の国に向かいますの。それも王宮方面へ……。申し訳ありませんが、次にあなた方が立ち寄る予定の街までで良いのです。同乗させていただけませんこと?報酬はお支払いいたしますわ」


「報酬なんて結構だ。昨日は散々迷惑をかけたからな。ローブも丁度良さげで安心した。さあ、乗ってくれ」


レイズは馬車の扉を開け、ベスティアを招き入れた。


「よ、よろしくお願いいたしますわ」


「ベスティア様とお呼びすればよろしいでしょうか?」


馬車に入ってきたベスティア手を差し伸べ、最初にイルが声をかけた。


「はい、名前で構いませんわ」


名前呼びを許すのは親しい間柄の者だけだが、お世話になるのでせっかくの申し出を拒むのも失礼だと思い、ベスティアは名前呼びを許可した。


「私はリタ様とレイズ様の執事でございます。イル、と申します」


「俺は王宮騎士団所属のジルクだ。リタちゃんの護衛だ。よろしくね、ベスティア嬢」


「えっ!」

ジルクがあまりにもラフな格好をしているのでまさか王宮騎士団所属の騎士だとは思わなかったのかもしれない。ベスティアは驚いた顔を一瞬見せたが、すぐに笑顔になり、

「そうでしたの」と言い直した。


「俺は昨日紹介したな。俺はレイズ。クロリア地のネクロマンサーだ。よろしく頼む、ベスティア嬢。ちなみにリタは俺の……助手だ」


「私がリタだよ!ベスティアさん、よろしくね!ネクロマンサーの補佐をやってるよ!」


「ええ、リタさんもよろしくお願いいたしますわ」


4枚の羽を持った妖精族の公爵令嬢はなぜ伯爵でしかも人族の元で働いているのだろう?そう疑問を口にしかけたが、あまり深く関わりたくないベスティアはその疑問を飲み込んだ。


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