タイラー・サストラーノの行方
もう一話この後に投稿します。22時過ぎを目指します!ブクマや評価を頂けると喜んで頑張ります!よろしくお願いいたしますm(__)m
「ああ、ここでタイラー・サストラーノという男が働いていないか?」
「いえ?そのような者はこちらにおりませんが……その方がどうかされましたか?」
「いない?そんな……どういう事だ?」
「ロバートさんは確かにタイラー・サストラーノと言いました。間違いありません」
イルがメモを見ながらレイズにそう伝えた。
「では、先程タグがここの店のオリジナルだと言っていたのは、どういう事だ?」
「守護を施される方が当店では多く、守護の紋章が見えるのが嫌だという要望が時折ございます。困っていた所、たまたまある方が服を当店にオーダーされた際、このタグも指定されたのです。そこで閃いたのです!相談を持ちかけたら快く当店で使用して良いと言われたので、当店のオリジナルとして縫い付けさせていただいております」
「その、ある方が考案者なんだな。ある方とは誰だ?」
「申し訳ございません。個人情報ですので……それに、タグは当店のオリジナルとして販売許可もいただいておりますので……強いて言うなら当店が考案者となっております」
「……分かった。十分だ。ありがとう」
「いえ、お役に立てず申し訳ございません」
レイズは首を横に振り問題ない事を伝える。リタに目を合わせ、少し整理しようと言った。
「あるお方がタイラー・サストラーノにタグを持ちかけ、タイラーがロバートに持ちかけた。そのタイラーはここに異動するとロバートに言っていたが、実際にはいなかった」
「うん、合ってる」
リタはコクコクと頭を上下に揺らした。
「一方、この店も、あるお方のオーダーでタグを制作。その後販売許可を得てこの店独自の紋章の入れ方として縫い付けている」
「そうだな」
ジルクも頷いた。
「ロバートから聞いた、タイラー・サストラーノという男が言っていたあるお方と、この店のあるお方は同一人物の可能性が高いな」
「そんな気が私もします」
イルもレイズに同意した。
だがこれ以上の情報は得られない。あるお方とは、何者なのだろうか?
4人がうーん、と頭を悩ませていると、店員が良いことを思いついた時のように顔をパアと明るくさせた。
「残念ながら、タイラー・サストラーノなる男の事は分かりません。しかし、当店でもお役に立てることがございます!そちらのお嬢様、店内はもうご覧になられましたか?見たところ旅をなされているご様子!当店であれば、既製品でもお嬢様がお似合いになる服を必ずご用意出来るかと存じます!」
店員はリタに向かって店の衣類について熱弁した。
「えっ、良いです、良いです!足りてます!」
「良いんじゃない、リタちゃん。他に行くところもないし、何か着てみたら?オレあの服着たリタちゃんがみたいなー!」
「そうだな、リタ。ここは良い店だ。アイザックに買ってもらった服ばかり着てないで、何か違うのを買え」
「そうだったのですか?!リタ様、それはなりません!店員さん、すぐにリタ様の服をご用意して差し上げて下さい!」
あれよあれよと言う間にローブをイルに脱がされ、リタは試着室の中に放り込まれてしまった。
せめて脱ぎ着が楽なワンピースで……!と辛うじて伝えたリタは、試着室に店員が戻ってくるのを待つことにした。
待っていること、ほんの数秒間。マダムペネロペ2号のような人が突如試着室の中に現れた!
すると、マダムペネロペ2号が野太い声で雄叫び、もとい黄色い声を上げた。
「あはぁん!失礼いたしますわあん!私はマダムローぺネペでございますわあん!調整を担当いたしますわあ!体は男ですが、心は女ですからご安心くださいませえ!可愛い妖精族のお姫様!!さいっこうだわーん!!」
どこかで聞いたような台詞とそっくり同じだ。手早く着ていたワンピースを脱がされると、背中が大きく開いた美しいドレスに着替えさせられ、ポイッと試着室の外へ追い出された。
「ひゃあ!」
試着室の外に飛び出た衝撃と驚きで、4枚の羽がバッと広がる。
その光景を見た接客担当の店員とマダムローペネぺは息を飲んだ。今2人の目には、リタが大金貨に見えている。
ちょうど隣の試着室から調整し終わり、全身を確認するため外に出て来ていたベスティアも、リタの羽に驚きの表情を見せた。
「綺麗な羽ね……しかも4枚だなんて……!気がつかなかったわ」
リタもずっとフードを被り、ローブを羽織っていたので、妖精族であることに気がついていなかったのだろう。ベスティアはリタの羽を食い入るように見つめた。
「あ、あははは……」リタは気まずそうに開いた羽をサッと閉じ、重ねて枚数が分からないようにした。
「あらあら!あなた本当にお姫様だったのねえん?あはん!光栄だわー!!最高級品を持ってきてあ・げ・る!!ここで待ってなさーい!」
マダムペネロペほどではないが、トストストスと可愛い足音をさせて巨体が店の奥に消えて行った。公爵家ではありません、と言い損ねたリタは、マダムローペネぺが持ってくる服は絶対に断ろう、と決心した。
リタが着せ替え人形になっている間、隣の試着室に戻ったベスティアは1人呟いた。
「人族の伯爵様と、騎士っぽい男に執事と公爵家の妖精族?変な組み合わせね……全員、公爵家のお嬢様の護衛かしら?そんな仲には見えなかったけど……でも羽が4枚……素敵だわ」
ふふふっと嬉しそうな声で笑うと、ベスティアは購入を決めた服に着替え、それを着て帰ることにした。




