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おまじないの効果を維持する方法

今日はもう一回投稿します!8時半を目指します><

あらかた店内は片付き、明日荷物を騎士団に渡すだけとなった頃にはもう日が暮れていた。遅めの昼食を取った事で、夕食の時間も過ぎて作業していたのだ。


店内は片付いたし、流石にもう夜も遅いという事で、お開きとなった。


「作業中も不調を訴えることもなかったし、当分は大丈夫そうですね」


「ああ、全てはリタ様のお陰だ。本当にありがとう」


ロバートは頭をリタに下げ、お礼を言った。


「いえいえ、当然のことをしたまでです」


「リタ様になら、一生ついて行くぞ!ワッハッハ!」


「お断りいたします。食材はあるので、後は自分で出来ますね?では、お疲れ様でした」


「イル殿もありがとうな!」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、バイバーイ!」


「また明日来るから、じゃあね!」


ニコニコと元気に手を振るマリーを後に、リタとイルは宿屋に向かって歩き出した。


歩いている途中でイルがやっと聞ける、といった様子でリタに話かけた。


「リタ様、なぜロバート様に魔力回復薬を使われたのですか?」


「普通、平民が魔力回復薬を飲んだらどうなるの?」


「平民にとっては体力回復薬も魔力回復薬も同じか、もしくはそれ以下の効果しかありません。私も生前、魔力が使えないのに、魔力回復薬を飲めば好転するのかと思い、飲んだ経験があります。しかし、何も起こりませんでした。体力が僅かに回復しただけで、同じ量の体力回復薬を飲んだ方が、体力を回復する面では効率が良かったほどです」


「食べ物からは魔力を補充できるのに、ダイレクトに魔力回復薬を摂取しても何も変化が起きないのね。魔力回復薬は回路があって初めて作用するんじゃないかしら?」


「なるほど、つまり摂取方法に問題があると」


「そう、回路がないなら直接魔力の源に注入すれば、と思ったの」


「しかし、魔力を補充するほど魔力を消費する機会は平民にはありません」


「ううん、ロバートさんはあったのよ。確かに、ロバートさんは30歳前半で、その歳で亡くなる人も多い。でも、衰弱死にはまだ早いと思わない?」


「平民の平均寿命は貴族と比べれば早いのは早いですが……リタ様はどのようなお考えがあるのでしょうか?」


「あの、おまじないの刺繍よ。あれがロバートさんの魔力を吸い取っていたのではないかしら?」


「あの刺繍が魔力を吸い取っていたとして、平民に効果があるだなんて思いもしないのでは?」


「うん。だってそもそも平民が守護の施された防具を身につける機会が普通はないでしょう?」


「そうですね。平民が着用することがあるとすれば、王宮騎士団に所属の平民ぐらいですね……」


「王宮騎士団に所属する平民は普段から魔法石を身につけているでしょう?それがあるから守護の効果が発揮されていると考えられているわ」


「確かに。一応、平民にも守護防具は効果があるとされていますが、魔法石を持っていることが前提です」


「でも、実際には魔法石を持たない平民でも効果があったでしょう?」


「つまり、どういうことでしょうか?」


「だから実験だったのよ。つまり、誰かが私と近い考えを持っているってこと。人族の平民が魔力を持たないこと、それに霊魂や魔力について、何らかの疑念があるんじゃないかしら」


「これは、あの細い布を縫い付ける事を思いついた外注先の『別の客』を調べる必要がありそうですね」


「うん、ジルクとレイズに報告しなくちゃ」


2人で頷き合うと、少し早歩きになって歩み出した。



宿屋に戻り、先に二階の部屋を確認するものの、まだジルクとレイズは帰ってきていないようだった。先に夕食をイルと済ませて、部屋に戻っておくことにした。


シャワーを浴びている間、レイズが戻ってくるまでイルが同室で待機してくれるというのでそうして貰った。


そうこうしている間に時間は過ぎていき、2人は夜の11時になってもまだ帰って来ない。


「リタ様をお一人で眠らせるわけには行きません。書物伝令を送り、今日はジルク様とレイズ様のお二人でお部屋を使っていただきましょう」


「うん、そうだね。じゃあ、イル、連絡をお願いしてもいい?」


「……かしこまりました!」


フワッと天使にような微笑みでイルは了承する。心なしかキラキラが増したようにも見える。


イルがサッと書物伝令をレイズとジルク宛に送ると、隣の部屋で軽装に着替えてくると言ってリタのいる部屋を出た。


しばらくして着替え終わったイルがリタの元に戻って来た。左手にあるのは恐らくジルクとレイズから帰って来た書物伝令だろう。イルが部屋の正面扉の鍵を閉める。


「2人から返事返ってきた?」


「了解、とのことことです」


「そう。じゃあ、もう寝ようっか!」


「灯りを消しますのでベッドにお入り下さい」


「はーい」


イルはベッドにもごもご入って行くリタを微笑ましく見つめ、灯りの魔道具に手を触れた。


「おやすみ、イル」


「おやすみなさいませ、リタ様」


イルはベッドに入る前に、一言詠唱した。


『燃焼』


手元に持っていた、2人からの手紙を手っ取り早く燃やす。



レイズからの手紙には、こう書いてあった。


『もうすぐ不動産屋との話がつく。すぐに帰るから、リタに待っていてくれと伝えてくれ』


これに対してイルは、無理です。リタ様のお肌に影響が出ますので。ゆっくり帰ってきて下さい。と返事しておいた。


ジルクからは、こう返ってきていた。

『明日派出所に送る荷物の説明とか騎士団長に連絡とかしてたら時間かかっちゃった!すぐ帰るから今日の部屋割り……』まで読んでグシャっと潰したので他には何が書いてあったのか分からない。どうせどうでもいいことだろうと予想をつけ、ジルクにもレイズと同じ内容の返事をしておいた。


最後に、今日は私が一緒に寝ますので、と付け加えて。


抗議の書物伝令がこれ以上来ては困るので、リタ様はもうおやすみだとも書いておく。これでもう送っては来られないだろう。2人がこの手紙をグシャっと潰すのが目に見えるかのようだ。


イルは手紙のやり取りを思い出しながら暗闇の中で、

「ふふふ、リタ様は僕がお守りしますからね」小声でそう呟いた。しかし寝つきの良いリタは既にすぅすぅ、寝息を立てている。


仄暗い独占欲にそっと蓋を閉じ、イルは眠りが訪れない代わりに、体の活動を停止させ、目を閉じたのだった。

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