ロバートの不調の原因
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イルに急かされてようやくシャツを脱ぎ、上半身裸になったロバートはシャツをテーブルの上に置いた。
ぶっきらぼうに、ほら脱いだぞというと、リタにシャツを押しやった。リタはそれを受け取り、検品し始めた。
どこかに紋章がないか隈なく探してみるが、それらしきものは見当たらない。王宮騎士団の防具にあったような、服の裾に縫い付けられた紋章を探すが、そういったワンポイントの縫い付けは見当たらない。
しかし、なんの気なしに触っているだけでは分からないが、集中すると平民にはないはずの魔力を微かに感じることができる。
一体この魔力はシャツのどこから発せられているのだろうか?
リタがシャツを引っ張ったり、裏返したりしていると、首筋にあるブランドがネームタグに目が言った。
「首筋にあるこのブランドネームが書いてある縫い付けのタグって一般的にあるものなの?」
その疑問に答えたのはロバートだ。
「ああ、目新しいだろう?守護を施すのに、紋章が服の胸あたりや裾に縫われることは良くあるが、デザインを損ねることもあって不評だったんだ。だから自分の店の商品だと刻印がてらに縫い付けられる場所が限られていてな。縫製の外注先で担当者に相談していたら、別の客がどうしているか教えてもらったんだ」
「そう、一般的ではないのね。担当者の別のお客さんはなんて指示を外注先に出していたの?」
「首筋に細長い短めの布を縫い付けて、そこに守護を縫い付けている、とのことだった。それをうちも採用させて欲しいと言ったら、客先に聞いてから返答するとその時は言われたな」
「それで?」
「数日後、進捗を聞きに行ったら、許可がおりたとかで、既にうちの屋号が書かれて出来上がっていた。そのブランドネームタグがどうかしたか?」
リタはそれを聞いてブランドネームタグに集中すると、お店の屋号が書かれた刺繍を解いてみた。
『ナイフ』
自分の手をハサミにしても、縫い付けられた刺繍を切るのは難しいと判断し、針を手袋から抜き出し、風魔力を針に纏わせ、ナイフの先端をイメージする。
針の先端を縫い付けられた糸の上にあてがい、表面の刺繍だけが切れるように、慎重に針を右から左へ移動させる。
『ナイフ消失』
「おいおい!切っちまうのかよ!」
「タグの裏面に怪しいところはなかったの。それならこのブランドネームの刺繍で原因が隠れてると思って」
表面の屋号の刺繍だけ上手く切れたようで、チクチクと短い糸が縫い目から飛び出している。邪魔な糸を指で何本かグッと抜き取ると、表面の刺繍と同じ屋号が書かれた刺繍が出てきた。見た目は同じだが、先ほどより明らかに魔力を感じる。
「見つけた」
「まじで?!リタちゃんの睨んだ通りじゃん!」
ジルクは原因が見つかったことに喜んだ。
「紋章ではないのか。厄介だな」
一方レイズは眉を潜め、難しそうな顔をしていり。
パッとみただけで、魔力が縫い込まれているのか分からないだけ確かに厄介だとリタも思った。
「でも、ブランドネームタグをちぎっちゃえばいいのよ。前回より楽だわ!」
ロバートがいるので、どことは言わずにボカす。
リタは再度針をナイフにすると、ブランドネームタグと服の間の糸を切り取り、服から切り離したそれをテーブルの中央においた。
「だが、魔力が縫い込まれていれば普通ならすぐ気がつくだろう?」
レイズはじっとテーブル中央に置かれたそれを見つめている。
「相手は平民よ。感じることは確かに出来るだろうけど、これはほんのおまじない程度で、私もこのシャツが怪しいと思ってなかったら全く気がつかなかった。それに、誰かがこんな手間のかかる物を平民の服に縫い込むだなんて、想像できた?それに平民では気がつけないほど微かな魔力しか感じないわ。果たして騎士団が先だったのか、それともこのお店が先だったのかは分からないけど」
ジルクがテーブル中央のネームタグに手を伸ばし、集中すると、確かにと声を漏らした。
「さあ、ロバート様、ご理解いただけましたか?これを知ってしまった以上、貴方をここには置いておけません。身柄を騎士団に引き渡させていただきます」
「ちょっと、イル!その言い方だとロバートさんが何か悪いことしたみたいじゃない!」
「でも、そうだな。触りだけしか知らないにしても、この街に置いておくのは情報漏洩防止の観点からまずい。とにかくここにある服は全て回収して、一度派出所に送る必要があるな」
ぐう、と呻き声を上げ、ロバートはがくりと肩を落とし、自分の膝の上に両肘を置く。するとそのまま頭を両手で支えて項垂れた。
「衣類は明日受け取りに来る。整理する必要がありそうだから今日はこれで失礼する。自分の荷物はその後でも構わないが、いつでもこの街を離れられるようにしておいてくれると助かる」
ジルクはそう告げると派出所でちょっと仕事してくる、今日は先に帰っておいてくれと言い残し、先に店を出て行った。
「1人で全てをこなすのは大変だろう、不動産関係は俺が代行しよう」とレイズが言うと、魔力袋から紙とペンを取り出した。
レイズは普段、ベストの内側にあるポケットに魔力袋を入れているらしい。ベストの内側ポケットからズルズルと魔力袋を取り出してから紙とペンを取り出した。
「ここに直筆で、店と家の売却手続きについてレイズ・クロリア伯爵に委任すると書いてくれ」
ロバートが伯爵という言葉にビクッと反応した。ペンと紙を目の前に置かれ、一瞬戸惑いをみせたロバートだったが、もう逃げ場はないと諦め、震える手でレイズに言われた通りのことを黙って記載した。表情からは何も読み取れない。放心状態になっているのかもしれない。
カタンと寂しげな音を残してペンを置き、震える両手で紙をレイズに手渡した。机の上に置かれたペンをサッと回収すると、レイズも席を立つ。
「じゃあ、俺も行ってくる。適当に宿に帰るから、イル、リタを頼んだぞ」
「承知いたしました」
残されたイルとリタは、ロバートとマリーの表情を窺った。
すると、可愛らしい音が店に響いた。
くううううきゅうううるるるる
「あ!マリーお腹減っちゃった!」
戯けた口調で言ってはいるが、少し引きつったような、苦笑いをしていることから、わざと明るく振る舞おうとしているのが分かる。
長く話し込んでいたようで、気がつけばお昼の時間は既に過ぎていた。
マリーはロバートほど痩せ細ってはいないが、リタが知っている6歳児と比べるとずいぶん小柄だ。個性もあるだろうが、家庭状況を鑑みるに、栄養が不足していると見て良いだろう。
「もう……食い物が家にはないんだ……買いに行こう」
ロバートはだらけて猫背になっていた背中にぐっと力を入れ、席を立とうとスツールを引こうとした。




