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プロローグ

ちょっとずつ書いていっているので、2回に分けます。もう一話今日は投稿しますので……!

獣人族の国へ向けて出発した4人が乗る馬車は、穏やかに森を走っている。


「ねえ、転移って出来ないの?」


「異世界にか?」


「ううん、それは無理だってアイザックから聞いた。そうじゃなくて、この世界の中での話。獣人族の国から人族の国に一瞬でいける魔法陣とかありそうじゃない。ないの?」


「ないな。移動は馬車か徒歩か飛ぶかだけだ。なんだ、もう疲れたのか?」


「うーん、今どこー?」


「なるほど、疲れたんだな」


「リタちゃん!疲れたならほら、オレにもたれなよ!はい!誰かオレと席交代!」


御者の席からジルクが声をあげる。


「それには及びません。リタ様、どうぞ私の肩をお使い下さい」


「ちょ!おま!なんなんだよ!ってかいつ執事なんて雇ったのー?リタちゃーん!」


「楽しいけど、馬車の移動は大変ね」


ワイワイ賑やかな馬車はちょうどアメリゴ都市に入る関所を抜けた所だ。昼休憩を取ったばかりなので全員活力に溢れている。


「妖精族の国の方が近いクロリア地とは正反対の場所に獣人族の国はあるからな」


「時間もあることだし、獣人族の国での日程が知りたいな。御者席に座ってジルクに話を聞いてくる。ついでに交代できるように馬の扱いも教えてもらおうっと」


「リタは座ってていいぞ、女が馬車を引いていると分かれば盗賊に襲われかねない」


「フードを被れば大丈夫!上手くやるわ!」


荷物の中からポンチョを取り出し、バサッと羽織るとフードを目深に被る。


「うーん、そうは言ってもだなあ」


「いいから、いいから!2人はゆっくりしてて!ジルクー!そっち行っても良い〜?」


御者席との間を隔てている布を捲り、ジルクに声をかける。


「おっ、リタちゃん一緒にやる?」


ジルクは手綱をリタに渡す素振りをする。


「うん!教えて!あと獣人族での日程とかも知りたい!」


「いいよーこっちおいでー」


「ありがとう!」


御者席に移動したリタは早速、馬の扱いを教わることにした。


残された2人は互いの顔を目線だけ動かして見合わせ、はあ、とため息をついた。気まずい沈黙が流れる。2人はそれぞれ窓の外を見やり、互いにこの時間をどう過ごそうか頭を悩ませた。


そうとは知らないリタは今馬の扱い方に夢中だ。


「この手綱を引けば止まってくれるのね?」


「そう。早く走って欲しい時はいきなり鞭を入れるとビックリして飛び跳ねてしまうから、事前にある程度速度を上げさせる必要があるんだ。その時は、手綱を上下に振るだけで良い。あとは真っ直ぐ進んでくれるように手綱にあまり力は入れず、方向だけ微調整するのに左右を動かす程度で動いてくれる」


「じゃあ、今は持っているだけで良いのね?」


脇を締めてしっかり手綱を握るが、緩めた状態にしておく。


「うん、その調子だ!」


パカパカ蹄の音を鳴らして馬は歩いている。順調だ。


「ジルク、今日は迎えに来てくれてありがとう。わざわざ来てくれなくても、アメリゴ都市を抜けてから向かうなら、私達が騎士団の宿舎まで行っても良かったんじゃない?」


「ダメダメ!伯爵をこっちに来させるなんて、騎士団の護衛としての責務を担っている以上、体面が良くないんだって」


「そういうことだったんだ。馬車だと時間がかかるし、こっちからそっちへ向かっても良かったのにって思ってたんだ-」


すっかり忘れそうになっていたが、一応レイズは伯爵で貴族だ。騎士が貴族に足を自分の元に運ばせるのは憚られるのだろう。


「クロリア伯爵は初対面のオレにも呼び捨てで構わないっていうぐらい、隔たりのない人だけど、王族や公爵家の依頼で調査する研究者だから。重鎮の扱いなんだよ。ってかいつの間にそんな事になってたの?確かに同行はそっちに任せるとはオレ言ったけど、まさか王族から調査の依頼を受ける形で休業申請してくるとは思わなかったから驚いた!」


「うーん、私もあまり詳しく知らないから分からないんだ。でも、獣人族の埋葬業を学びに行くみたい。きっとレイズがあっちに行ったら学べるような態勢を整えてくれてるとは思うよ。」


ジルクにはどこまで説明しても良いのか判断がつかなかったので、言葉をボカした。必要であればレイズが説明するだろう。


「埋葬業を学びに行くのか!オレ、詳しい事は聞いていないからさー。とにかく道中お守りしろってキシエーレ団長に厳命されて来た。出来る限り安全なルートで進むようにするよ。」


キシエーレ団長ということは、ルークか。ルークは詳しい話を王族や公爵家から聞いているのだろうか?それをジルクに聞いた所で知らないだろうと思い、疑問は口にせず、心の中だけに留めた。


「ねえ、『安全』で思い出したけど、この世界に車ってないのね?」


「ああ、ないな。作るにしても部品が色々あって、専門家でもなければ作れないだろう?」


「そうねえ。でも私は馬車の方が好きだから、ないならないで良いな。せかせかしてなくて。電車とかも正直いらない。便利だとは思うけど」


「魔法でも具現化できるものとそうでないものがあるから、中々簡単にはいかないよな」


「うん。魔力袋みたいに、ほぼ物として扱える魔法って難しいね。衣類は具現化出来るのに。既にある魔法を改良することはできても、新たに何かを生み出すには、なにか法則でもあるのかな?書物伝令は言わば紙を飛ばしてるだけだし」


魔力譲渡も完成させるまでかなり試行錯誤が必要だった。リタの針のお陰で一応形にはなったが、万人が使えるわけではない魔法は果たして完成したと言い切れるだろうか。きっと他にもやり方はあるはずだ。


「書物伝令も互いを認識していなければ発動しないから、なにか法則はあるんだろうな。そうだなあ、乗り物だって具現化できても良いものなのにな」


「出来たら便利だよね。こんな立派な馬が自分の魔力で生み出せたら素敵じゃない?この馬もとっても良い子!」


手を伸ばした距離にはいないので、馬に向かって手で撫でる素振りだけした。


「一応、こいつ魔獣だからな?怒らせるなよ」


「ええ?!いやいや、馬でしょう!」


「比較的大人しい部類の魔獣なんだよ。ただ、臆病なところがあって、怒鳴り声を上げると逆ギレして襲ってくる」


「それのどこが臆病なのよ!」


「怒鳴り声が嫌いな所?名前もそのままで、ウマだし、馬車は最初の異世界人が作ったんじゃね、知らないけど!」


「適当だなあ」


リタの呆れ顔にハハハ!とジルクが笑った。


「ところで最初はどこに向かうの?」

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