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魔力譲渡の原理2 イモータル

「何体も浄化して霊魂になっちゃったけど、でもこの考察を経て、最近ようやく死者を1人、魔力持ちにさせることが出来ました!」


両手を胸の前でパチパチ叩く。


「死者に魔力を流すだけじゃなく、譲渡もできたんだな!何をどうして保持させる事ができたんだ!」


「それも今から説明するね。」


レイズは興味津々で、体が前のめりになっている。


「魔力は生きている者にしか宿らない、もしくは流れない。だから生霊である霊魂は魔力を蓄えることができる。ここまではいい?」


「それは周知の事実だな。」


「つまり保持する器官があるとするなら、霊魂側にあるの。霊魂がそもそも最初から持っている魔力量は皆一定で、大気や食べ物から摂取して量は増やせる。もし体に流れる魔力を増やしたかったら、体に循環する回路を増やす必要がある。回路を増やすには、体を維持するにはそれだけの魔力が必要だと体に教える必要があるの。それが魔力欠乏症だよ。魔力欠乏症に陥るということはその体を維持するには今の魔力循環量じゃあ足りないってことだから。」


「魔力欠乏症に陥れば陥るほど、魔力が増えるのは知っていた。だが、それは回路が増えていたということだったんだな。体を維持するために必要な魔力の回路が増えるのは、ある意味脳みそと一緒だな。記憶する量が増えれば脳のシワが増えるというものな。」


「そう、一緒だね。魔力を流す回路が沢山できるから、体に循環する魔力も増える。だから一度に使える魔法も増えるし、自分の体に流れる魔力量も増える。」


「魔力欠乏症の原理も良く分かった。回路が増える時に体にも負担がかかるから吐き気や頭痛が起きるんだな。魔力と霊魂の関係性はよく分かったが、じゃあ死者とはそもそも何なんだ?」


「私が思うに、死者はあくまで霊魂を生成する機械の役割でしかないんじゃないかと思う。」


「死者が霊魂になるのではなくて、死者の形態を取りながら霊魂を生成しているのか?」


「そうなの。死者になっても実は魂はまだあるのよ。何もないところから死者がどうやって霊魂になるの?説明がつかない。」


「だがあいつらは意思を持たない、そうだろう?」


「死者になると魂はその時点で活動を停止するに過ぎないのよ。意思を持つ霊魂は、死者である間は活動を停止している。霊魂になるには、まず、魂が活動停止に至った原因を除去する必要があると私は考えた。ここまでは完全に私の想像ね。電気と電池、輸血、適合、この辺りで閃いただけなの。」


「電気や電池の知識があって魔力に繋がったのか。ちなみに人が死者になる理由は人の業、罪によるもので、それを浄化しなければ冥土の門をくぐれないからだとネクロマンサーや教会の間では言われているな。」


「人が死ぬのは、体が病や出血とか他にも色々な原因で動けなくなってしまう状態をいうでしょう?でも本当の所は私にも人がなぜ死者になるのかはわからない。そのまま鵜呑みにするのもよくないとは思ったんだけど、教会が言い出したことにも何か理由はあるんじゃないかと、とりあえずは思うことにしたの。とにかくなんらかの要因によって、魂が汚れてしまうのがダメなんだ、魂が汚れると活動停止に至るんだって。」


「死者になって魂を浄化する、とされてはいるからな。」


コクリとリタはうなずく。


「死者の中の魂が完全に浄化されるタイミングで、今まで活動を停止させていた魂が生霊である霊魂に再び変換される。魂が真っ白になって綺麗になると、また魂が活動できるようになる、そういう仕組みであると仮定したわ。」


「死者には魂があるが、魂が傷ついたことで活動を停止している。再び活動するには魂を綺麗にする必要がある、なるほど。あながち間違ってもいなさそうだな。」


「でも魂は綺麗になっても、肝心の体は腐敗が進んでいて現世での活動は難しいでしょ?だから死者は虫魔獣でいうところのプーパなのよ。霊魂は魔獣のファルファッラ。死者も同じように、次の活動形態である霊魂に変態するのよ。」


ファルファッラとは、蝶の形をした虫の魔獣である。プーパは蛹の魔獣だ。プーパ、つまり蛹が羽化すると、ファルファッラ、蝶になる、と魔獣図鑑に載っていた。プーパの前は芋虫で、それはブルーコと呼ぶ。


例えるなら生者は芋虫で死者は蛹なのだ。そして霊魂は蝶だ。


「よく魔獣を勉強しているな」


感心した様子のレイズに、前世も同じ虫がいたことは黙って、へへへと照れておくだけにする。


「さっきも言ったけど、死者が完全に浄化されるタイミングで、体が完全に崩壊して、今まで活動を停止させていた魂が今度は霊魂となって活動を再開する。だから崩壊が霊魂生成のトリガーになってると思ったの。つまり、あくまで死者が魔力を持てる状態にしたかったら、変態する前を維持させれば良い。崩壊の一歩手前で食い止める必要があるってこと。」


「崩壊しないと霊魂が生み出せないんじゃないのかと思ったが、実際には崩壊にも段階が細かくあったと言うことか。」


「うん。そもそも、崩壊しているという状態は、じゃあなんだと思う?」


「体が全て朽ち果てること、かな?」


「でも骨になってもまだ動いている人だっているでしょう?」 


「じゃあ骨も、朽ち果てたら、か?」


「ぶっぶー!」

体の前で手を交差させてバッテンを作る。


「崩壊というのはこれ以上魂が綺麗になれないぐらい真っ白になった状態のことを言います!真っ白になった瞬間、サナギが殻を脱いででてくるように、体が粒子になります!」


「朽ち果てることが崩壊を指しているのではないということか、崩壊と言うから分かりにくいんだ!」


「だって、魂が真っ白になった途端、体が粒子になっていくんだもん!パソコンを工場出荷時状態に戻す初期化と一緒って言ってもわからないでしょう?!」


「余計わからないじゃないか!」


「ほらー!とにかく崩壊=魂が極限まで真っ白、で理解してくれればいいんだよ!」


「わかった、わかった!とにかく魂が真っ白になった途端、変態してしまうんだな!」


「そう!浄化→変態+崩壊→霊魂ということが起こっているとしたなら、浄化から変態に移行するタイミングで食い止める必要があるの。魂が真っ白になった瞬間に変態が始まって崩壊するのだから、真っ白になった所で状態維持させれば、死者の形状を維持しながら霊魂を持った死者が出来る。」


「死者に魔力を持たせることに成功したと言ったが、リタの話を総合すると……魂を持つものが皆魔力を潜在的に持っていて、それが人族の生者だとしたら、魂をもった腐敗した体を持つ魔力保持者の死者は何になるんだ?」


「そうね、なんだろうね?真っ白になってすぐに状態維持をかけたら意思を持った死者が出来上がったから、生者でも死者でもないよね!」


「……え?死者で魔力も霊魂も持っていて意思もあるのか?!一体なんてものを作り出したんだお前は……」


「ちなみに私は不死者と命名しました。」


「そういう問題じゃないだろう……このことは絶対誰にも漏らすなよ。いいか、絶対だぞ。」


「うん、レイズがどうするかは任せるけどね」


「そうして、魔力譲渡が完成したということか。」


「そういうこと!だからその人に魔力譲渡してるのを見てもらうから!それじゃあ、今からその人を呼ぶね!」


「え?!呼ぶって……どういうことだ?まだいるのか?状態維持をまだ継続していたのか?いやいや、魔法だって万能じゃない。状態維持が切れたらそいつだってまた消滅するんじゃないのか?いつ完成させたんだ?」


「一週間前だよ!」


「一週間もずっと状態維持魔法を他者に使い続けるのは結構負荷がかかるから、教会では大量に魔石を置いて行くんだぞ?まさかまだ維持しているってことか?」


「変態前で状態維持した死者は、持つはずのない霊魂を持ってるの。つまりどういうことかというと。」


「いうと?」


レイズがゴクリと唾を飲み込む。


「命名通り、不死者になっちゃったんじゃないかなーって思う。だから状態維持は最初だけで、それ以降はかけてないんだ。」


「はああああああ???」


「イルターティ!来ても良いよー!」


ゴボッ、ザラララララ


どこかで土が盛り上がり、砂が地面に落ちる音がした。


「お呼びですか?」


「うわああ!!どっから出てきた!気配が全くなかったぞ!」


パタパタと体の砂を落としながらレイズの背後から現れたのは執事服を着た男性だ。青白い顔が長いこと日に当たっていないことを窺わせた。


「ど、どういうことだ!なぜ体が腐敗していない?どう見ても普通のちょっと不健康そうな人族じゃないか!ほ、本当に死者だったのか……?」


「状態維持をかけた状態で体に霊魂が多分定着しちゃったんだと思う。霊魂ってさ、霊魂になったら普通は更に浄化する必要があるじゃない?でも私が魔力を流すと霊魂になってからの過程もすっ飛ばして、そのまま一気に浄化できるの。だがら私が魔力を流すとすぐ体が崩壊しちゃうみたいなんだけど、逆に今回はそれが功を奏したの。死者の体が崩壊して、霊魂になってからさらに浄化しなきゃならなかったら、死者の体が崩壊する前の段階で食い止めたところで、霊魂の浄化が完了していないし。ラッキーではあったの。」


「しかし、なぜ意志まで持っているんだ?死者が生成している魂が浄化されると霊魂になり、体が崩壊せずに霊魂が残ると、意思も持ち始めるのか?」


「そういうことだね。普通に魔力を針で譲渡し続けていたら体も一気に修復し始めて、こうなったかんじだよ。その時はかなりの量の魔力を取られて気絶しかかったけど!もう霊魂があるから、状態維持魔法をかけていなくても上手く巡回しているみたい。」


「イルターティと言ったか?」


「左様でございます。」


「お前は今後……どうするつもりだ?」


「私はリタ様の魔力の影響を多大に受けております。まさに私の産みの親と言っても過言ではないでしょう。つきましては、リタ様にお仕えしたく存じます。レイズ様のお屋敷ではございますので、お二人のお世話などさせていただけましたら幸いです。許可を頂けるのでしたら、ですが。」


「生前の記憶はないのか?」


「ある意味ございます。魂が浄化されただけで、体の記憶は残っておりましたので。リタ様の魔力で体の修復が完全に行われて色々と思い出しました。とは言え、魔力の扱いやすさもさながら、体の丈夫さも生前とは全くもって異なります。それに、一度魂が浄化されているからか、記憶の自分は今の自分とは全く別の存在であると認識しております。」


「イルターティは生前の名前か?」


「いえ、リタ様に名をいただきました。教会での登録もなしに、リタ様に名を呼ばれた瞬間、この世界に認識されてしまったことには驚きましたが……以前の名は名乗れなかったので既に消滅しているのでしょう。私はとある貴族に仕えていたしがない執事にございます。私の出自も一応貴族ではございますが、今となっては意味もないでしょう。リタ様から聞く限り、私は数百年以上も死者として浄化も進まず、いたようです。」


「リタの説から推察するに、よほど魂に傷がついていたのだろうか?」


「分かりません。ですが、私は貴族でありながら、魔法が使えませんでした。存在自体を秘匿され、貴族学院に行くこともなく家庭教師から教育を受け、十ニ歳から執事として別の貴族に仕えてはおりましたが、結局心を病み、自ら命を18歳の時に断ちました。」


「すまない、辛いことを思い出させた。無神経だった、許してくれ。」


「レイズ様がお気に入なさるようなことではございません。それに、記憶としてはあっても、全く別人のことを話している気がするのです。とうの昔に名が消滅していることもその要因の一つではないでしょうか?私はもうイルターティでございます。どうぞ、イルとお呼び下さい。」


「分かった。イルがリタに仕えることを許可する。今後の仕事はまた追々話そう。よろしく頼む。だが土に潜るのはやめてくれ。お前の部屋も用意させる。」


「ありがとうございます。承知いたしました。死者の名残か、落ち着くんですよね。ですが、今後は控えます。」


「それで?イルが意思を持った後でも更に魔力譲渡を行ったのか?」


「うん。意思が発現してからは針を杖代わりにして魔力譲渡を詠唱したの。だから針を体に入れることなく譲渡はできたんだ!意思を持った相手に、もちろん躊躇はしたんだけど、イルが絶対大丈夫って言うから、手伝ってもらっちゃった。」


「イル、なぜそう言い切れた。」


「リタ様は私の母みたいなものですから。母が困っていたら、助けたいでしょう?」


「根拠はなかったんだな、はあ……」


目を泳がせて、どうしようか少し迷っているようだ。


「イルは私の魔力にすごく影響を受けてる。真っ白な霊魂に私の魔力を流し続けたことが影響しているんだと思う。でもレイズもやってみる価値はあると思うの。」


そうだな、とレイズは腹を括った。


「やってみるしかないようだな……」

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