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騎士団にて5 最終日

今日はもう一話投稿します!

スケジュール感を掴んでから、初めの3日間ほど遅くまで働いていることはなくなった。そうして迎えた7日目の最終日、今は午後3時過ぎだ。ルークには既にお茶を届けたあと。


既にノルマの防具はすべて刺繍が完了し、健康が一番!ということでしっかり『健康祈願』の思いが刺繍されている。流石に漢字で刺繍するのも変だなと思ったので、最初の1着に王宮騎士団の紋章を丁寧に入れたあと、今や得意の『複製』でさっさと午前中に終わらせた。


最初の3日間は『複製』のコツが掴めず無駄に魔力と糸を浪費した。複製を唱える度に魔力と糸が消費されるものの、防具に刺繍が現れないのだ。手紙を複写した時の『コピペ』は刺繍には適用されず、もはや何も起こらなかった。仕方がなく全て手で縫ったため、時間がかかった。


複製するには、その元となる刺繍糸やそれを操る針に魔力を込めて縫うのではないのかもしれない。『執筆』で手紙を書いたときのように、防具の方に傷をつける要領でやるのはどうだろう。指先に魔力を込め、指で防具をなぞるようにして紋章を描く。それに刺繍糸を這わせるイメージで針と刺繍糸に魔力を込める。そして詠唱だ。


『複製』


「出来た!所定の手順がある上に想像力も必要ときた。これはやりがいがあるわね!業務効率化のためなら、この世界での社畜歴☆数ヶ月のリタ・サルヴァドール、やります!」


スムーズにこれをイメージして、詠唱で実行するのは意外と難しい。結局リタが慣れてスムーズに複製出来るようになったのは、4日目が終わる頃だった。しかしこれで残りの3日間、防具に割く時間が減る分時間に余裕が生まれる筈だ。

そうして最終日までに防具の整備は完了したのだった。


あとは騎士団員の体調を見るだけとなり、最終日に残ったのは王宮魔術士達が所属する研究棟だ。幸い在籍者全員が不調を訴えてはおらず、30名を見れば十分だとルークから前日に言われていたので、防具の整備がない分余裕を持つことが出来た。


人族で魔法を使える者は皆貴族で、魔術士と呼ばれている。その理由は、魔法を行使するよりも、人族の編み出した魔術を多用するからだ。


なんでも魔法陣を利用することで、魔族や妖精族並みに威力のある魔法を発動できるらしい。ただ、魔術はどうしても記述に時間がかかることから戦闘で用いることは少なく、トラップを仕掛けたり、ある程度戦略の基使用する必要がある。


かと言って魔法が決して使えないというわけではないので、戦の前線に立つこともある。日々魔法陣と魔法の融合技術を研究する部隊、それが王宮魔術士だ。所属も王宮騎士団になる。


研究熱心なものが多く、殆どはいい実験体が出来たと自分の体に様々な魔術を施し解決していたらしく、定時の6時までには30名を診きることができた。


「一週間終了!明日帰る用意しなきゃ。荷物をまとめよう。明日朝、最後にルークとジルクに挨拶してから帰ることにしよう。」


三階の自分の部屋でブツブツ言いながら予定を組み上げていると、扉がノックされた。


コンコン


「はーい!どなたですか?」


「俺!ジルク!」


「入っていいよ〜」


「リタちゃん!帰る前に打ち上げしよう!」


ジルクが入室するなり直ぐにリタに声をかけた。


「打ち上げ?楽しそうね!」


「ホマロターブス食いに行こう!」


確か伊勢海老だったな、と思い、想像して涎が出てきた。明日は騎士団ジルクの分隊の一部が休暇の日らしく、ジルクも休みらしい。


「それは良いな、私も参加させてくれ。」


「団長!どこから湧いて出て来たんですか!」


いきなり現れたルークにジルクは驚きの声を上げ、素早く後ろを振り返った。


「直ぐ後ろに最初からいたが?顧問守護官殿も、よろしいでしょうか?」


「もちろんです、ルーク様。楽しみにしておりますね。」


「ルーク様?!ええ?!」


2人を見合わせてどうなっているんだとジルクは混乱している。


「他にも顧問守護官殿に礼を言いたい奴はいるだろう。そいつらも呼んでやれ。時間は8時から開始だ。」


「二人っきりで行こうと思ったのに〜。承知致しました。調整致します!決まり次第、休みの者に伝えておきます!」


ルークが去って行ったのを確認して、ジルクはふうと息を吐く。


「ここリタちゃんの部屋だぞ?もしかして団長もオレと同じこと言いに来たのかなあ?」


「そうかもね!じゃあ荷造りしたら行くから、どこに集合する?」


「この棟の入口前で待ち合わせして、一緒に馬車で行こう!他の奴らには現地集合にしとくから!」


「今は7時ね!じゃあ、あと30分したら下に行くよ。」


「了解!じゃあオレ皆に言ってくる!」


「はーい!」



身なりを少し整えてから下に向かうと、既にジルクが冒険者の出で立ちで待っていた。隣にはルークもいる。


「ルーク様もご一緒されるのですか?」


「ええ、ご迷惑でなければご一緒させて下さい。」


ルークも普段の騎士団長の服を脱いで、ラフな白いシャツと濃紺のパンツ姿だ。


「迷惑です!オレはリタちゃんと2人で馬車に乗りたかったのにー!」


「異性が2人っきりで馬車に乗るだなんて、騎士としてあるまじき行為だな。仕方がない。私が同行してあげよう。」


「すごい説明口調なんですが!それ今思いつきましたよね?!」


「さあ、ジルク。案内せよ。」


「分かりました!案内いたしますよ!もう!」


2人の掛け合いを聞いてクスクス笑うリタに、ルークは甘い微笑みを返した。


「リタちゃん先をどうぞ。」


「ありがとう!」


ジルクは馬車の扉の横に立ち、リタに手を差し出す。


その手を取り、リタが馬車に入って右側の奥に座ると、ジルクも隣に座ろうとした。しかしルークが扉側は私が守ると言い張り、結局ジルクはリタの斜め左前に、ルークがリタの隣になった。


「せめてリタちゃんの目の前の席に……」


ジルクがそう抗議すると、またルークに騎士が扉側を守らずしてどうすると窘められ、ジルクは諦めた。


感心した様子でリタはキラキラした目でルークを見つめる。その目に気がついたルークは、

「私達が扉を守るから安心して座っていて下さい。」と微笑みながら言った。


さすが騎士団長、日頃から心構えが違う!リタは感心しているが見当違いである。


今日はホマロターブスが美味しい店にしただとか、騎士団員50名ぐらいが集まっただとかの雑談をジルクがしていると、馬車が街に到着した。

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