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騎士団にて3 日々のTO DO

騎士団での滞在一週間です。「騎士団にて1」で誤字ってました、すみません。

騎士団での労働3日目が終わる頃、リタは保管庫でもう根をあげそうになっていた。


「ううう。サビ残上等とか嘘よ!もっと休憩を下さい!」


1日目は出来るだけ1日のノルマに近づけるため、結局ノルマ達成の人数までしっかり診てしまい、それが終わった時はもう9時を回っていた。


それから2時間、合計40着の防具に施されている守護をまずは完全に消すため、一つ一つを魔法で生み出した小さな竜巻の中に放り込み、摩擦を加えた。表面の守護が消え去ったのを確認したら、次は身体不調の刺繍の解呪を行う。


どうやって解呪するのか分からず、試行錯誤しながらだったので、40着を何の変哲もない良質な防具にしてさらに守護を刺繍し直すまで結局4時間かかり、ようやく夜食をいただいたり、お風呂に入ったりできて就寝する頃には、夜中の3時になっていた。


そして迎えた2日目。人を効率良く診るというのは非常に難しい。午前中に最低でも40人はこなさないといけないのに、演習場に行っても何かと忙しくしている騎士達を指定人数確認する事はできなかった。


お昼に差し掛かり、まだ10人程度しか見れていない頃、一人の侍女に声をかけられた。


「お昼のお茶運びだけ手伝っていただけると分隊長に聞いたのですが……本当によろしいのでしょうか?顧問守護官さんにそんなことしていただいて……」


「あー侍女の仕事も手伝うとは聞いてるし、それぐらいなら大丈夫です。教えてもらえますか?」


明らかにパアアアアという音が似合うくらいに顔を喜ばせ、

「助かりますう!」と侍女は言った。


そんなに喜んで貰えるなら悪くないなと思ったのも束の間、まさか各棟全ての騎士、全員分の昼休憩用のお茶だとは思っていなかった。


お茶を沸かすのに、給湯器が王宮には備え付けられてある。お湯を出すには魔法石を動かす。魔法石は消耗品で、一ヶ月に一回は交換するらしい。所定の場所に組み込んでおけばあとは蛇口を捻るだけなので簡単だ。


万が一お湯が出なかった場合、魔法石を交換する必要があるから、魔法石に設置場所と保管場所も教えてもらった。しかし保管場所に入れるのは防犯上、侍女頭だけが持つ鍵でしか入れないらしいので、魔法石の効果がなくなった場合は侍女頭に報告するのが一般的だそうだ。


魔法石は効果が無くなりそうになると、無くなるまで延々と点滅をするからそれが交換の合図だそうだ。

プロパンガスのような仕組みなのだな、と理解した。


騎士達は昼の時間になるとそれぞれの棟に完備されている食堂で食事を取る。例えばリタのいる棟では一階が騎士団の演習場と団長や分隊長、他隊員の執務室で、あとは防具の保管庫がある。2階に給湯室と食堂で、3階が宿舎となっている。ワンフロア毎がかなり広い。


各棟ではお昼の時間を30分ずつ開始をズラしているので、その間に人数分のお茶を給湯室で用意して食堂のテーブルに置いておく。全棟にお茶を置き終わったら、次は回収だ。最初の棟にまた戻って回収し始める。


リタの仕事はそこまでの筈だったが、途中騎士団長のルークに呼び止められ、3時の休憩時にお茶を運んで欲しいとお願いされた。


3時になってお茶を持っていくと、とてつもなく甘い笑顔でルークは出迎えてくれた。やはり最初のは見間違いではなかったとリタは思った。ついでにお茶を一緒にどうかと誘われたので言葉に甘えてご一緒することにした。


「2日目はどうですか?忙しいですか?」


「そうですね、思った程午前中に診療出来なかったので、午後が忙しくなるかもしれません。昨日のノルマは達成しています。」


「そうでしたか。レイズから聞いているかもしれないが、これ以上人員が減るのは避けたいのです。是非とも顧問守護官殿にはご助力いただきたいと騎士団一同を代弁してお願い申し上げます。」


「ご丁寧にありがとうございます。謹んでお受けさせていただく所存です。キシエーレ様のご体調はいかがです?問題ありませんか?」


「それより、2人でいる時はルークとお呼び下さい。」


「では、ルーク様、とお呼び」


「ルークですよ」


「えっ……ルーク?」


「良くできました。実は私も少しばかり体調が優れないのです。お時間のあるときで構わないので、顧問守護官殿に診て頂くことは可能でしょうか?」


「あ、私も呼び捨てでリタとお呼び下さい。顧問守護官は今だけなので。」


少し考えるフリをして、ルークはリタの名前を呼んだ。


「……リタ」


「はい、なんでしょう?」


リタは呼ばれたからあえて返事を返して見た程度だったのだが、楽しそうに首を傾げたリタにルークは笑顔を向けた。


「普段は顧問守護官殿と呼ばせていただきます。つい照れてしまって仕事が手につかなくなりそうだ。」


「ふふふ、ルークも冗談を言うのですね。では私も普段はルーク様とお呼びしますね。さっきおっしゃった事ですが、ルークの様子を見ながら、診療時間をどこかで取るようにします。」


「ええ、私は最後でも構いませんのでお気になさらず。そして、その……リタ。お茶をありがとうございます。また明日この時間に来てくれますか?」


「もちろん!またご一緒させていただけますか?」


「是非どうぞ、お待ちしてます。」


お茶がなくなったところで会話を打ち切り、お仕事頑張って下さいと言葉を残しその場を退室した。


ルークはその言葉に何やら感激したようで、顔を赤くしてお礼を言っていた。なんだ、やっぱり優しそうな人じゃない、とリタは後で思った。


このようなスケジュールで午後3時までは進んだので、騎士の診療はそれ以降の時間帯に人が集中してしまい、結局遅くまで騎士達を待っている事になってしまった。


その上、午後に人が集中するのを予測していなかったので、午前中に騎士を待っている間に出来たはずの防具の修繕ができず、自前の本を読むだけで終わってしまった。その結果、定時の6時までにノルマがこなせなかった。結局2日目も1日目と同じように、全員診終わった後に刺繍をしてしまい、また3時を回ってしまったのだった。


幸い、3日目は午前中の待ち時間に防具に新たな刺繍を施すことで、診療後に刺繍しなくて済んだ。それでも顧問守護官としての仕事の合間と、1日の終わりに侍女としての仕事を頼まれることがあり、3日目はノルマを達成する頃には夜の11時になっていた。


「ううう。サビ残上等とか嘘よ!休憩を下さい!やっと3日のノルマが終わったわ……喉渇いた……給湯室に行こう」


一階の保管庫で作業していたリタは二階の給湯室に向かうとき、まだルークの執務室から灯りが漏れているのに気がついた。

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