表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/164

闇の世界

リタはディアブロに弄られている羽の感覚に耐えながら、コクリと頷いた。リタが顔を赤らめ、震える瞳でディアブロを見つめる。吸い込まれそうな程に澄んだエメラルドの様な瞳をディアブロは胸を高鳴らせ、見つめ返した。


リタの唇が艶々と美味しそうに熟れている。力強く自分の唇をそれに重ね合わせたくなる衝動に駆られる。リタを抱き寄せて腕の中に囲い込んでしまいたい。首筋に顔を埋め、肺いっぱいリタの匂いを吸い込みたい。


ディアブロは嫁に迎えない限りそれを教えるつもりはなかった。噎せ返る様なリタの甘い香りにクラクラする。ディアブロは、それを言えば応じてくれるのではないか、という発想が頭をよぎった。その行為に応じてくれることを期待して、ディアブロはつい言ってしまった。


「1つは簡単だ。お前のココに俺を差し込んでアレを魔力と一緒に注げばいいんだよ。ただ注げば良いのではなく、前戯が重要なんだけどな」ディアブロはそう言うと、羽と太腿から手を離し、両手でリタの腰を掴んだ。ニヤリとさせた口元からは赤々とした舌を覗かせ、ペロッと自分の唇を舐めた。体が密着し、恥ずかしさが頂点に達したリタはもう耐えられなかった。


「ふぁあ!もう、やめてよ!」リタが声を荒らげたその時、アイザックがヴァンピーロと共に戻って来た。魔王の姿はない。


「リタさん!」


アイザックは慌ててリタとディアブロに走り寄り、リタをディアブロの脚の上から下ろした。無事リタはアイザックによってディアブロから引き剥がされた。息を荒らげ、目を潤ませるリタにそっとアイザックはジャケットを掛ける。


アイザックはキッとディアブロを睨みつけた。


「お戯れが過ぎませんか。リタさんは人族側のネクロマンサー補佐として既に働いていらっしゃいます。人族側の異世界人となりますので、手出しはお差し控えいただきたい」アイザックはこめかみに青筋を立て、怒りで体が若干震えている。出来るだけ怒りを表さないよう、冷静を装おうとしているのが窺える。角が立たないよう、言葉を選び努める辺り、流石は大人だとリタは安心感を覚える。


「ネクロマンサーの補佐だと?これだけの魔力をそんなことに使わせるつもりか。人族は馬鹿なのか?たとえ異種族の混血を嫌う人族の王家とは言えど、4枚羽の妖精族ならば混血も糞もないだろうに」引き剥がされたことも気にせず、ディアブロはするっとリタの腰に手を回す。


「私が好きでネクロマンサー補佐をやっているのよ?ディアブロにそんなこと言われる筋合いはないわ」腰に回された手をちくっと抓るが、ディアブロに動じた様子はない。可愛いことをするものだ、と言う目で優しくリタを見つめるだけだ。先ほどの人を弄ぶような目から一転、優しい目元に変わったことでリタは一瞬どきっとする。


「なるほど、こいつの知的好奇心を煽って、妖精族に向かうのを引き止めたか?自分の種族の国に向かった方が待遇も良いだろうに」先程、リタが闇の世界について反応を示した事で、ディアブロはリタの興味の対象を察した。その上、ネクロマンサーの補佐として人族で働いているという。ディアブロはリタが自分の知的好奇心を満たすために人族に止まったと解釈した。逆にこの知的好奇心を利用できるとも思う。リタを見つめていた目から、ギロッと眼光鋭くアイザックを睨む。


「人族の王家はリタさんにそんなことはしていませんよ。全てリタさんの意思です。さあ、リタさんから離れてください」


アイザックが再度リタとディアブロの間に割って入ろうとした。ディアブロはアイザックに向かって苛立たしげに悪態をついた。


「邪魔だな」パチンとディアブロが音を鳴らして指を弾いた。すると、目の前にいたアイザックの姿が一瞬にして消えた。


「え?!」驚いたリタはディアブロの顔を見る。ディアブロは表情を一切変えずに、アイザックがいたはずの場所を興味なさげに見ている。それはまるで息を吐いただけのような自然な行動だったと錯覚させた。それほどまでにそこにディアブロの感情は見えなかった。その所為でディアブロがアイザックに何かをして消し去ったということを理解するまでに数秒掛かった。リタはアイザックの姿が見えなくなり、数秒後ようやくハッとしたようにディアブロを責めた。


「酷い!アイザックをどこにやったの!」


リタの声を聞いても、ディアブロはさも当然とばかりに首を傾げている。埒が開かないと判断し、リタはヴァンピーロに助けを求めた。


「ねえ、ヴァンピーロもディアブロに何か言ってよ!」


「はあ……ディアブロ殿下、アイザック様はどちらへ?」聞くのも面倒くさいと言わんばかりにため息をつき、ヴァンピーロはディアブロに尋ねた。リタはこの様子を見て、ヴァンピーロはアイザックに何が起こったのかを知っているのだろうか?と疑問を抱いた。


「邪魔だから闇の世界に行ってもらった」闇の世界?まさかここで闇の世界が関係してくるの?とリタは理解が追いつかない。


「そんな簡単に違う世界の扉が開けるの?」


「厳密には、闇の世界に通じる部屋に飛ばした。そこに降り立つと自動的に飛ばされる」


「なんでも良いから、とにかくアイザックさんを返して!」今詳しく原理を聞いている心の余裕はない。それは後回しにして、アイザックを闇の世界から取り戻すことが可能なのかどうかを知る方が先決だ。


「返す?あれを返して欲しいのか?」


「アイザックさんはあれじゃない!か・え・し・て!ディアブロ酷いよ!もう、嫌いになっちゃうよ……」何をどう言えばディアブロがアイザックを返す気になってくれるのかわからないので、闇雲に言葉を発する。幸い、最後の『嫌いになっちゃう』が効いたようだ。


「ぐっ!そ、其方に嫌われるようなことをしたつもりはなかった。すまない」


あれ?素直……違う違う!自分の利益にならないことをしないだけなんだわ!そうよ!騙されないんだから!とリタはディアブロに一瞬惑わされそうになる。


「じゃあ、早く返して。今すぐここにアイザックさんを出して」


「それはできない。こちらから迎えに行かないといけないのでな」


「はあ?!それって、こっちが迎えに行ったら、今度は私たちを迎えに行く誰かが必要になるんじゃないの?」


「まあ、そうなるな。基本的には一方通行だ。そもそも、闇の世界に落ちた者を取りに行く必要がないからな」


「ええ?!どうするのよ……」なんでそんなことをしたんだ、この馬鹿王太子は……。考えなしにもほどがある。リタはアイザックを失ったと思い、目に涙を浮かべる。


「この場合、人の求愛行動を邪魔する側に非がある」自信満々にディアブロは言う。よく見るとヴァンピーロも後ろで、これはお館様が悪い、と頷いている。


「求愛?!今のが?!」納得がいかない!リタは思わず声を荒らげた。


「魔族は求婚者に対して如何に快楽を与えられるかが重要視される。試さなければ分からないから、まずはヤルしかないだろ?」何を言っているんだ、当然だろ?とばかりにディアブロはあけすけに言う。


なるほど、放漫な種族でいらっしゃいましたか!


リタは魔族の風習を知った。百歩譲ってアイザックが悪かった事にしよう。それでもリタは存在を消される程のことかと理解が及ばない。諦められない。今のでまさかすぐ死んだと言うことはないだろう。


「アイザックを戻して」リタはディアブロを真っ直ぐ見て訴えかけた。ディアブロはリタにじっと見つめられているだけで気分が高揚し、嬉しくなる。そこまで言うなら、とディアブロは教える事にした。嫌われては敵わないからな、と自分にそっと言い訳をする。


「方法がない訳ではないぞ」


「教えて!どうしたら良いの?!」


「簡単な事だ。引き換えの命を渡せば良い」これぐらいなら言っても問題ないだろう、とディアブロは考えながら言った。何を言っても良いか、何は黙っておくべきか、思考を巡らせるように目線を上へ上げる。


「命?ええ?闇の世界ってそもそも何なの?意味がわからない……もうちょっと説明が欲しいわ」


「ネクロマンサー補佐をやっている癖に、そんなことも知らないのか?」


「ディアブロ殿下、闇の世界の存在は人族の王族しか知りません。実務をこなすネクロマンサーには、異なる表現で広まっています」リタが抗議するより前に、ヴァンピーロが説明を補足する。ディアブロの話ぶりと、ヴァンピーロの言葉から推測すると、既にネクロマンサーはそれを知っていなければおかしい、と言う事だ。これはもう、思い当たる節が一つしかない。


「もしかして、それって冥土の扉のこと?確か、詠唱する時レイズはへハーデスゲートって言っていた気がする……」


「なんだ、知ってるじゃないか。へハーデスゲートを通ると、闇の世界に辿り着ける。そこに落ちた者は輪廻の輪に加えられるのだ。それは知っているだろう?」


「でもそれをなぜ、魔族が管理しているの?人族の魂を送り出す場所でしょう?」


「魔族が管理する事になったのは、大昔の事だ。それこそ、この世界が創り出されたばかり頃。今や伝承になっている事は事実だったとされている。少なくとも、魔族の伝記にはそう記されている」


ディアブロはそう言うと、指をパチンと鳴らした。すると、どこからともなく椅子とコーヒーテーブルが出現した。ディアブロは3つ出現させた内の椅子一つに座ると、リタとヴァンピーロにも座るよう促した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ