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魔族の王太子 ディアブロ

「……はい。……え?いやいやいや。……はい?」


「そうか、承諾してくれるか。さあ、魔王へ報告に行くぞ」


「ちょーっと待ったー!今のは返事をしただけだから!」


「何が不満だ?ああ、分かった。プロポーズの言葉は甘いのが良いというやつだな?女という奴は……仕方がない、やり直してやろう。よく人族の国から遥々来てくれた」


「う、うん」とりあえず聞いてみよう。


「俺こそが次期王の中の王、魔王となる者だ。 俺は待っていた。其方のような女が現れる事を……。 もし俺の嫁になれば、世界の半分をリタにやろう」


どっかで聞いたことのあるようなセリフだな?とリタは思いながらそれを拒否した。


「いいえ」


こういう奴にはハッキリとイエスかノーを示す必要がある。まるでゲームの選択肢のような返答だがそれも致し方ない。


「俺の嫁になれば世界の半分、闇の世界を与えようというのにか?」


これ絶対はい、って言ったら目の前が暗転して、「はい」って言った言葉に突然メッセージ欄が現れて赤くなったまま、以降私の意思を一切受け付けなくなるパターンじゃない!こうなるとゲーム機本体の電源を切るかリセットボタンを押すしかない。ゲームじゃないんだから、そんな事で・き・る・か!心の中でリタは絶対はい、と言っては駄目だと確信する。


リタは勢い良く拒絶の言葉を口にした!


「いいえ!……ん?闇の世界?」


「興味があるか。流石俺の見込んだ女だ」


「うー……うん、興味はある」これは『はい』の選択肢では決してない!興味があると言うだけで、イエスとは言ってないから大丈夫!と誰が聞いている訳でもないのに心の中で弁解する。


ニヤリと悪巧みをする顔をしたディアブロは嬉しそうに口を歪める。ディアブロはリタの顎を持ち、グイッと上を向かせた。ディアブロの藍色の髪と赤い目のコントラストがリタの目線を捉えて離さない。


「教えてやろうか?」


近い!リタは足を一歩後退させる。


「闇の世界が何だか知らないけど、4種族以外にそういった国が存在するってこと?私の持っているアイザックさんから貰った本にはそんな事書いてなかったわ」


誰が書いたかも分からない『コロンバス連合世界の歩き方』様様だ。大体の事は落ちて来た最初の頃にアイザックから貰ったこの本に書いてある。


「本?もしかして落ちて来た時に貰うあの本のことか?」


どうやらあの本は世界中の異世界を繋ぐ魔法陣が設置されている場所で、異世界人を拾った担当者が渡す事になっているようだ。もしかしたら異世界人が落ちて来た時の説明書を作る製作委員会みたいなものがあるのかもしれない。王太子であれば異世界人の事は聞かされているのだろう。ならば話が早い。


「そう。そこには闇の世界だなんて記述はなかったわ」


闇の世界と聞くと、レイズが浄化する際に開ける冥土の扉と似た響きがある。魔族の王が代々守っている秘密とはもしかしたらこの事かもしれない。やはり人の魂を浄化させねば輪廻の輪に加えられない事と、闇の世界は何か関係がある気がする。


「そりゃあ、そうだろう。闇の世界は魔族の王族のテレトリーだ。魔族の国の一部と言っても過言ではない。『魔族の国』で一括りだ。そう簡単に行ける場所でもないから、その存在を知るのもごく僅かな者だけだ。今回人族はそれを条件に、魔族は人族の豊満な土地の一部を交換を条件に、戦争に発展しようとしている」


「ええ?!そんな重要な世界だったの?異世界みたいなもの?それ私に言っても大丈夫なの?聞かなきゃ良かった系じゃないの?!」リタは知ってはいけない事を知ってしまった気がして狼狽える。


「俺の嫁になるのなら闇の世界の存在ぐらいは知っていても構わないだろう。これ以上詳しく知りたければ俺の嫁になるしかないがな」


「ぐぬぅ!知的好奇心が疼く……!気になって夜も眠れません!」元より本を読んだり、気になる事を自分で積極的に調べたりと知的好奇心旺盛なリタだ。興味を唆られる話を聞いては黙ってはいられない。素直に気になる事を前面に押し出した悔しそうな顔を見せた。


「俺が其方の夜を相手してやれば、そんな事も言ってる暇もなく毎晩グッスリだぞ?」


それには返事をせず、リタはうーん、と頭を悩ませた。まだ異世界に落ちて来て1年も経っていない。年齢は17歳でこの世界で成人もしていないのに、既に結婚の話が出ている。前世では全く縁がなく、結婚のけの字も出た事がなかった。異世界転移するとこんな特典があるのか!と浮き立つ気持ちもあれば、求められているのはリタ自身ではなく、その魔力である所を鑑みると気持ちは複雑だ。


「まあ、良い。じっくり考えろ。其方の結論が出るまではこうして共に行動してやる。ここにはどのぐらい滞在する予定だ?」


「用事が済んだらすぐにでも帰らせて頂きます!」


「実家に帰るみたいな言い方するなよ。寂しくなるだろう?」


ディアブロが不意に見せた陰った表情にキュンと来そうになる。強かそうな王太子だ。リタを懐柔するための演技に違いない、と激しく脈打つ鼓動を落ち着かせる。


「私の疑問が出来るだけ解消したら帰ります……予定は未定です……」しかしあまりキツイ言い方をして傷つけるのは本意ではない。若干の罪悪感を覚え、控えめにリタは予定を告げた。


「ならばそれに付き合おう」


「え?!なんで?」リタはディアブロの申し出に驚いた。出迎えが終わったらすぐ去って行くものだと思っていただけに、驚きを隠せない。本当は優しい人なのかもしれない、とこれまでの印象を見直す。傲慢そうで、強かで、目的のためなら手段を厭わないように見えたが、本当は違うのかも……。


「そうでもしないと其方の気を引けぬであろう?なぁに、仕事は調整が効く。其方が手に入るならなんの不都合もない。まずは羽生草からか?」


そんな理由からか!意外と優しいのかも、とか思った私の気持ちを返せ!今すぐ返せ!倍返しだ!


リタが呆れた顔でディアブロを見ると、楽しそうにディアブロは笑った。リタの顎に置いていた手を離し、髪を一筋とって口付け、リタを上目遣いで見つめる。


「っ!」リタはディアブロの妖婉さに慄いた。お、恐ろしい美形!わかってはいたが、間近で意識して見ると破壊力が違う。ついオドオドして何を返せばいいのか分からなくなり、固まってしまった。そんなリタに構う様子はなく、ディアブロは首を傾げてリタの羽に触れた。


「やっ……!」


「防御魔法を羽に付与していないのか?俺に気を許すとは、其方は案外可愛い奴なのだな」


リタが固まってしまったことで反応を確かめる為に、羽に触れたようだ。通常、妖精族の羽に触れると弾かれるが、そうはならなかったことにディアブロは、おや?と関心を持った。柄にもなく、リタが羽の防御魔法をディアブロに発動させなかった事に感情の昂りを感じた。少し顔を赤らめ、ディアブロはシルクのような羽の手触りを楽しむように、所々穴が空いた部分を執拗に弄る。


「ちがっ!今は魔力が定まっていなくてっ!あん!」


「ならば、ここもか?」


「きゃっ!」


羽に触れている手とは異なる、もう片方の手でディアブロはリタの耳に触れる。急に触れられたことで触れられた箇所がカッと熱くなるのが分かった。


「其方に触れると温かい気持ちになる。不思議な感覚だ」ディアブロは訳が分からない、といった顔をした。自分の感覚を確かめるように、羽を触れていた手をリタの背中から腰へ移動させ、ぐっと自分に引き寄せる。お互いの腰が密着した形になり、リタは離れようと両手でディアブロの胸を押すが、ビクともしない。リタがもがく様子をニヤニヤ楽しそうにディアブロは見つめる。


「んんっ!」


リタが一々小さく声を上げる様子が可愛らしく、つい楽しくなってディアブロはリタの額にキスを落とした。


「ひゃっ!」


「初心な反応だな。まだ男を知らぬのか?」ディアブロはリタの耳元で意地悪そうに囁く。


「あっ……!」男を知らないのかと言われ、羞恥で顔がかあっと顔が熱くなる。その様子も気に入ったのか、ディアブロはフッと、と笑みを零す。


「耳が弱いようだな……」そう言ってリタの耳元で囁く。グッとリタの腰を持って逃れようともがくリタを近づける。その反動でふわっとスカートが捲れてしまう。太腿が露わになり、リタはスカートの裾の位置を直そうとする。


「キャッ!ちょっと、スカートがっ!」


「ここに傷痕があるな……」ディアブロはリタの太腿に傷があるのを見つけた。ディアブロは傷を確かめるようにそっと触れ、リタは傷口にチクッと痛みが走り体が反応する。


リタは体重を後ろに倒してディアブロから逃れようとした。しかし自分の足の間にディアブロが足を挟み込む。リタは意図せずディアブロの脚の上に座る形になってしまった。魔族は身体能力にも優れている。リタが片足の上に座った所で体勢を崩す様子はない。お互いの体温が服越しに伝わって来る。


「っ……!」リタは叫び声を上げようにも、上手く声が出せない。ディアブロが耳に触れていた手を羽に移し、さわさわと優しく撫で上げているからだ。ディアブロは癒すように優しくリタの羽を何度も手で触れる。


「ああ、このまま俺の魔力を其方に流し込んでしまおうか……?」


魔力を流し込む?ディアブロは他者に魔力を譲渡する方法を知っているのか?!リタはディアブロから背けていた顔を向き直した。


「え……?魔族は他者に魔力を譲渡できるのが普通なの?」


「魔族の王族は代々、その方法を闇の世界と共に引き継いでいるからな。なんだ、知りたいのか?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] もう、リタの旦那はディアブロで良いのではないでしょうか。めっちゃ萌える。
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