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ヨアフパロ王国での最終日

「キャッ!なんで皆同じ部屋で寝てるのよ!」


リタは昨晩、意識を失って倒れてしまったイルの様子を見ながらソファーで眠ってしまった。夜中にレイズとジルクの2人がパーティーから帰って来た声を聞いた覚えがある。眠りに落ちた際、どうやら鍵をかけ忘れていたようだ。目を開けたらソファーを背に、床で座って眠るレイズがリタの目の前におり、ジルクがリタの足元で寝ていた。


カクン、と傾き、一瞬リタの声で目を覚ましたレイズはくるん、と体を捻る。寝ぼけてソファーと対座したかと思うと、まだ仰向けに寝転がっていたリタの首の上に腕を置き覆い被さり、腕の体重を乗せてきた。


「わあー!レイズ!うううっ!重いよー」


「うーん、朝は寝る時間だろー。動くな枕めー」


寝ぼけてる!


「私は枕じゃないー!」


首元にキュッと抱きつかれ、リタは顔を赤らめる。レイズの程よく締まった腕の筋肉が美しい流線を描いている。リタはレイズの腕を退けようともがく。しかしリタを枕だと勘違いしているレイズはリタが逃れようとする度にギュウギュウとリタの首に抱きついて来る。


「んんん……」


カーテンから漏れ出る光が眩しいのか、レイズはリタの首元に顔を埋めようとモゾモゾしている。耳元に触れるレイズの息遣いがくすぐったい。まるで猫のようだ。


「えっ、ちょっ!どうしよう……」


そうだ、ジルクを起こそう!


ジルクはリタの足元でソファーを背に、先程までのレイズと同じような格好で寝ている。リタは心の中でごめん、とジルクに謝り、足の親指でジルクの頬を突く。


「ジールークー?起きてー?」


パシッ!


リタの足の親指がジルクの頬を掠めた時、ジルクが素早い動きで足首を掴んだ。


ガブ!


「あ!」


口の中に足の親指を入れられ、驚いたリタは声を上げた。


「もうはへへはいおー。へもおいひー(もう食べれないよ。でも美味しい)」


ジルクは夢の中で何かを食べている!


「いやーん!それ私の足よ、ジルク!やっ……!だ、だめ!食べないで!」


「んんー」


寝ぼけて足の指をもぐもぐし始めたジルクから足を取り返そうと懸命に動かそうとするが、ジルクがガッチリと足首を握っていてびくともしない。


「お願い、足を離して!」


「こんなに食べれない……」


「ちがっ!ちょっと!そこはっ……」


ジルクはぐいっと手を伸ばし、太ももに手をスルッと滑らせる。そのままリタの足を一本、両腕で抱きかかえると、顎をリタの膝小僧の上に置く。


「こらあっ!」


ジルクの両手がリタの太ももを掴んだ。すると内腿が気に入ったようだ。


「ストレス緩和ボール?」とか呟いている。よく知ってるな、とリタは呆れた顔を見せた。


体を捻ってソファーから起き上がろうとも試みるが、今度はレイズがリタの首筋に顔を押し当て強く抱き締めてくる。枕の位置が変わると、どうやら嫌なようだ。しきりにリタの首筋に顔を埋め、うーんと唸っている。唸るたびにふわっとレイズの息が首筋に当たり、くすぐったくて笑い声を上げそうになるのを堪える。一生懸命眠る様子が子どもの様で可愛い。リタはふふふっ、と小さく微笑むだけに止めようとする。


「……リタ?」


「!!!!」


可愛いと思う心の内がバレたような気がしてリタは顔を真っ赤にしながらレイズの方に顔を向けようとするが、レイズが首筋に顔をまだ埋めているので動けない。


「レイズ!起きてたの?!」


「いや、今目が覚めた。おはよう」


恥ずかしさでリタは声を出せない。何かを言おうとしてまたやめる。リタは声にならない言葉を言おうと、口をパクパク動かした。


それを見て満足げにレイズはふっと笑った。


「そ、それよりジルクが私の足を……その……止めてくれない?」


リタは潤んだ瞳でレイズには振り向かずに言った。それを聞いてレイズはいきなり体をガバッと起き上がらせる。ジルクの手がリタの太腿の上にあるのを確認する。ジルクは今、夢の中で握力を鍛えるハンドグリップと戦っている。レイズは声を荒らげた。


「ジールークー!」


レイズはジルクの髪を乱暴に掴み、リタの足から引き剥がした。


「んあ?」


腕に持っていたリタの足を無理矢理奪われ、ようやく目が覚めたようだ。ジルクは髪の毛をレイズの手で掴み上げられている状態になっている。


少し目が覚めて来たジルクが目をゴシゴシと擦る。すると目の前のリタは顔を赤らめ、目を潤ませている!


レイズはジロリとジルクを目線で射抜かんばかりに睨んでいる!


ジルクは混乱している!


「お、おはよう?」


ゴツン!


「いてえええええ!」


寝起きで油断していたジルクはレイズから拳骨を食らわされた!


・・・

・・


帰る用意をし始めてから2時間が経とうとしていた頃。ジルクはまだ頭を痛そうに摩っている。


「イルがまだ目を醒まさない。予定通り、今日、ニチアメリ王国に戻ろう」


話し合いの結果、イルには状態維持魔法をリタがかけて、イルをレイズの屋敷に連れ帰ることが決定した。


「態勢を整えよう。リタもここからすぐに魔族の国に向かうよりは、一旦ニチアメリ王国に戻ってから準備を整えたほうが良い」


「レイズ、力強すぎ」ジルクはまだ愚痴っている。


「お前が悪い」レイズは不機嫌そうに、ジルクから何かを言われる度にそれしか返さない。



そんな中、帰る準備が終わり、王族に別れの挨拶として旅立ちを告げる時間を迎えた。その場にはパトラも同席していたので、パトラにも話しかけようと口を開く。リタが言葉を発する前に、パトラが話し出した。


「あの後、夜中に騎士団がここら一帯を捜索してくれたの。ベスティアの行方が分からなくなったから……。でも見つかったのは公爵家の森にある、不自然なまでに清掃された廃屋だけだったわ。突然朝方になって廃屋があることに気がついた騎士がいて、報告があったの。きっと魔法で存在を隠していたんだわ。だからごめんなさい、結局リタとイルを襲った犯人は見つからなかったの……」


「そっか……仕方がないね。でも捜索してくれてありがとう。後は私達で調べてみる」リタはパトラを気遣うように言った。


「力になれなくてごめんなさい。きっと魔族の国に戻っているに違いないわ。気をつけてね。また会いましょう」




また新たな問題を抱えてヨアフパロ王国の訪問は終わり、リタ達は意識のないイルを連れてニチアメリ王国に帰って行った。帰りは向かうときにあったような事件に巻き込まれる事もなく、平穏に馬車は進んだ。


ニチアメリ王国に戻ってからは慌ただしく日々が過ぎていった。王様への報告が終わって、レイズの屋敷に訪れたジルクはリタにこう言った。


「リタちゃん、ヴァンピーロを連れて魔族の国に向かって欲しい。ついでにアイザックも一緒に」


「うん、良いけど……なんで急にアイザックとヴァンピーロなの?」


「ヴァンピーロは魔族側の使者としてアメリゴ都市のギルドにいるんだ。いわゆる外交官みたいなものだから、ヴァンピーロが一緒だと何かと都合が良い。アイザックについては、レイズが身元保証人になる前にアイザックが保証人だったからだな」


「え?でも保証人ならレイズがいるでしょう?」とレイズを見ると、残念そうに首を横に振る。理由を聞いて見ると、レイズは休暇の3ヶ月を使い切り、当分休みが取れそうにないようだ。


「ジルクは?」


「オレは暫く報告で忙しくなると思う。獣人族で分かったことの報告とか、それ以外にも種族間の関係が悪化してきて今騎士団を離れられそうにないんだ。でも、リタちゃんは早く羽生草を取りに行ったほうが良いだろう?」


2人の一緒に行けない理由を聞いて、リタは寂しそうな顔を見せる。その様子を見てレイズとジルクは俯き、何かを堪えるような顔をした。


『『オレだってリタ(ちゃん)と一緒に行きたいんだよ……』』


心の声をぐっと堪えたレイズはその代わり、別の頼み事をした。


「冥土の扉について探ってくれ。あと、イルを戻す方法も魔族なら知っているかもしれない。魔族の女がリタと同じ魔法を使っていたのを見ると、魔力の原理について何か詳しいことを知っているような気がする」人族における霊魂の浄化の必要性を疑問視する件についてレイズから話を聞いていたリタは、承知した、と言うようにコクリとうなづく。


イルはまだ昏睡状態にある。魔法石で状態維持魔法を継続して発動させるように変更はしたが、まだ目覚める気配がない。イルもレイズの屋敷でお留守番だ。


「そうだね。それじゃあ、まだ向こうから手紙は来ていないけど、羽生草も取りに行かないといけないし、手紙は待たずして向かおうかな」


「わかった、アイザックとヴァンピーロにもオレから話しておく」ジルクは用件だけ伝えると、早々にアメリゴ都市に向かう準備を始めた。


「そうしたら国王への報告は公爵家を通して俺がやっておく。リタは早急に羽生草を取りに、魔族の国へ向かった方が良い。魔族の王からの連絡は待たずに先に行くんだ」


「それが一番早そうだな。人族の国王からの紹介状を持って、魔族の国に行っておいで」


「分かった。私が不在の間はイルの事をお願いね、レイズ」


「俺も一緒に行きたかったんだが、すまない。何かあればすぐに書物伝令を飛ばしてこい」


ふふふ、とリタは微笑みを返す。


「レイズもジルクもありがとう。それぞれから連絡が来るのを待ってるね」


ジルクはレイズの屋敷からアメリゴ都市に戻ると、手早くリタの出発に必要な準備を整えた。幸いアイザックは副ギルド長に必要な事項を共有済みだったようで、喜んで同行を承諾してくれた。ヴァンピーロは表情を変えず、お館様の執事ですから、お館様が向かわれる所にはどこでも私は参ります、と言っていた。レイズにも公爵家を通して国王にリタが魔族の国に入りやすいよう、紹介状を書いて貰った。

それぞれから連絡があり、リタが魔族国に旅立つ日が近づいてきた頃、事態は急速に進んだ。


とうとう魔族が人族に宣戦布告をしてきたのだ。元々、魔族の国は資源が少ない。魔道具などの輸出量が激減したことで、人族の領地を奪うことにしたのだ。今にも戦争が始まりそうな緊迫した気配が街中に漂っている。幸い、まだ戦争は始まってはいない。


そんな情勢の中、こうしてリタはアイザックとヴァンピーロを連れて魔族の国に出発した。

まだ続きますが、ここまでいかがでしたでしょうか?次は魔族の国に行きます!

これからの章を続ける原動力になりますので評価やブックマークもよろしくお願いいたしますm(__)m感想も頂けると嬉しいです(´;ω;`)


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