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ありがちな物語  作者: 二十六
序章─才能開花
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鏡に祈れば

「ガタッ。」

突然窓の方から聞こえてきた音に、私は驚いて振り返る。ろくに掃除もしていない部屋の中、テレビの前でぼーっとしながらソシャゲをするという最高の時間に身を委ねていた私は、そのことで一気に現実に引き戻された。私はそこにネズミかゴキブリでも居るのかと思い、手近にあった紙を丸めて持ち、ゆっくりと近づいて行った。

────────────────────────────────────

その日、私はいつも通り冒険者として森の中を探索していた。毎日毎日森に入っては薬草を採り、ギルドに行き、換金して、帰ってからは宿代の事を考えては鬱屈になる。普通の冒険者ならばすぐにそんな生活をやめて凶悪なモンスターを倒しに行くなりするのだが、私はそれが出来ない。なぜって?怖いからに決まってんだろうがこんちくしょう!なんだよモンスターって!そんな意味のわかんない生き物?と殺し合うなんてどうかしてんだろ世の冒険者!…とにかく私は怖いのだ。でもお金を稼ぎたいのだ…出来れば楽して…

────────────────────────────────────

私が慎重に窓に近づいて行ったが、何も変なものは居なかった。だが、私がホッと出来たのも束の間、私はすぐに窓の辺りの雰囲気がどこかいつもと違うことに気づいた。最初は気のせいだろうと思ったのだが、やっぱり少しおかしい。まず壁を見てみる。うんいつもと変わりない壁だ。次に窓を見てみる。なぜか自分の顔が映っている。しかもちょっと汚い…私ってこんなに汚かったのか?いやいやそんな筈はない私は汚くない汚くない…よしっ自己暗示完了!ビバ!プラシーボ!と、とにかく!窓枠に嵌っていたのはいつものすりガラスではなく、小汚い鏡だった。

────────────────────────────────────

楽して安全に稼ぎたいというのならもっと他の職業に就けばいいじゃないか!という人もいるかもしれない。でも私にはそれが出来ない理由があるのだ。私はエルフ、亜人の一種だ。この世の中では亜人種は大概差別されている。私だって基本的なことはなんでも…それこそ魔法だってできるのに種族がエルフだから…亜人だから…というだけでまともな職にも就けず、冒険者にならなければ良くて売女、運が悪ければ無実の罪で奴隷行きで、魔力だけはあるからと昼夜実験三昧だ。だから亜人の大半は冒険者になる。そう、亜人はまともな職に就きたくても就けないし、人間族には常にビクビクしながらできるだけ目をつけられないように日陰を生きるしか無いのである。世界のどこかに亜人だけが住む亜人の里があり、そこでは亜人たちが仲良く暮らしているというからいつか行ってみたいと、日頃から思ってはいるけども、そのための資金も、時間も、勇気も足りない。

────────────────────────────────────

私はそれが誰かのいたずらかと思い、念の為部屋の中を隅々までしっかりと見渡してみたが、もちろん誰もいなかった。逆に誰かいたとしたらそれこそ発狂ものである。そこで今度は、誰かが外から窓を取り外して鏡に取り替えたのだろうかと思った。まぁ普通に考えてここ2階だしありえないけど最近の悪ガキはドローンとか使ってきそうだし…時折鏡がガタガタと音を立てているのも、きっとその悪ガキ共がドローンがっがつぶつけているからだろうな。うんそうに違いない!いきなりガラスが鏡になるなんてホラーすぎでしょ私昔っからなぜか鏡怖いんだから。

こういう訳で、私はそんな不届き者に一喝入れるため、自分の部屋の窓 (だったもの)を勢い良く開け、大きく息を吸って「コラッ!」…と叫べなかった。

────────────────────────────────────

私が森の木にピッタリとくっついた硬く綺麗な水面のようなものに近づいてみると、その水面の向こうから何だか声が聞こえてくるような気がした。でもその木のまわりを回って見ても誰もいないので、この水面から声が聞こえてきている事は

もしかしたらこの水面自体が、人の声を話す新手のモンスターじゃないかと思い、逃げようかとも思ったけど新種のモンスターを見つけた冒険者には多大な報酬が支払われることがあるというのを思い出し、勇気を出して力を入れ大きく息を吸って「えいっ!」と威勢よくその水面を引っぱろうとしたら…その水面がいきなりどこかに消えて、手に棒のようなものを持った変な人間の"男"が出てきた…


私は絶句した。窓を開けたらそこはなぜか森の中で目の前であのエルフがなんか凄く怯えているのだ。なんか小声で凄い謝ってる気がする。もしかしなくてもこれはあの今流行りの異世界転生ではないか。困ったぞ。私はなんか凄いことができるとか無いし…こんなことならもっと物理の勉強しとくんだったよガッデム。まぁ過ぎた事を後悔しても仕方ないしこのエルフに話を聞いて見よう。多分異世界補正で言葉は通じるだろうからね。こんな時でもクールに行くのが私の信条さ。

「ああああ、ああ、あのーー」

ホーリーシットッ!こんな時にコミュ症の特性発動してんじゃねーよこの役立たずが!

「■■■、■■■■、■■■■、■■■■■■!」

あれれー?おっかしーぞー?なんでこのエルフのお姉さんの言ってる事が聞き取れないのかなー?そういえばなんか私木の中に入ってるしこのお姉さんに見捨てられたら私詰みじゃね?

…なんだか泣けて来た。


突然現れた木の人は私を見るなり凄い驚きながらとてつもない早口で呪文のような言葉を呟いたあと、私の方を見て声をかけてきた。まずい。これは非常にまずい。この"男"はなぜか女のような高い声で私に話しかけてきた。どうせ人間のことだ。お前なにこっち見てんだぶっ殺すぞとか言っているのだろう人間やだよ人間怖いよお家帰りたい。そんな思考が頭の中を走馬灯のように駆け巡りながら、私は必死に今の状況から生き延びる術を考えた。人間は木の中にいてろくに動けないのであろうこちらに掴みかかって殴ろうとはしてこない。だがこの先なにが、起こるかはわからない。とりあえず話しかけられたからには返事をしておこう。

「わっ、私は、決して怪しいものではっありませんっ!」

いやいやどう考えたって怪しいのはこの木の中いる人間だし。ってかこの人間も何言ってんのこいつみたいな顔で見ないでよやめてねこれだけで死刑みたいなの。いやほんとに、本気ですいません謝るんで許して下さい。どうしようもうこの人間殺すしか生き延びる方法ないと思うんだけど。あんまり殺しは好きじゃないしましてや人間。バレたら死よりも辛い刑罰が待っているに違いない。うん。殺しは良くないよね。バレなきゃ良いとか、そんなの無理じゃん嘘くらい魔法で見抜けるからねこの世の中。しかも突然捕まるとかもザラだし…とりあえずこの人間を木から出してあげよう。話はそれからだよね。うん。…いきなり殴ろうとはしないでね?


なんか凄い安心した顔でこっち見てるんだけど…すっごいビクビクしながら木の中から私の事を出してくれて言葉が通じないって理解した瞬間へたり込むってどうなってんのこれ。とりあえずこの世界の言葉を早く話せるようになんないと死ぬな。うん。でも私そんなすぐに知らない言葉話せるようになるほど頭良くないし…英語いっつも2だったし…まぁ話せないと死ぬから死にものぐるいでやるっきゃ無いのかー。確か紙とかになんか書いて指さしてたら向こうが「何?」って言ってくれるからそれ使って「これ何?」ってやっていけばよかったんだよねテレビ見といて良かったー。お?ちょうどいいところに紙があるではないか?!これで

実践してみようではないか!


…この人間なんなの?私が親切・・で木の中から出してあげたのにお礼も言わ無いし、て言うかなんか言葉通じないっぽいし…確かこの世界って転生者?って言うの?がたまーに紛れ込んで来たりするらしいからこの人間も多分その部類だろうけど…なんか極限まで薄くした皮みたいなの指差しながら何かを伝えたそうにしてる…




















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