ー 人影 ー
消えて。
出てきて。
また消えて。
ある日、私は暗い夜道を歩いていた。
すると、
「・・・?」
裏路地に人影が見えた。
興味本位で見に行った。
が、
「あれ・・・」
誰もいなかった。
さっきのあれは人だったはず。
何だろう・・・?
ある日、俺は建物の裏の小道を歩いていた。
すると、
「なんだ・・・?」
先にある曲がり角で誰かがこっちを見ていた。
(何だあいつ・・・)
そのまま進んでいく。
ある程度進んでいくと、こっちを見ていた誰かが曲がり角から姿を消した。
そして曲がり角を曲がると、
「何だよ・・・行き止まりじゃねぇか・・・」
そして、俺を見ていた誰かは姿を消していた。
ある日、私は友達数人と暗い裏道を歩いていた。
男2人、女3人の計5人だ。
すると友達のうち一人が前を指差しながら、
「この先に誰かいるよ」
と言った。
皆その一人が指差した方向を見る。
私も後ろから覗いた。
すると確かに誰かが立っている。
「こっち見てない・・・?」
「なんだろあれ・・・」
皆口々に言う。
しばらくそれを見ていると、突然消え、皆騒然とした。
私はあれを知っている―――
ある日、僕は塾から帰っていた。
すると突然、すぐ右にある歩道の隅の路地から甲高い金属音が響いた。
「!?」
びっくりして音のなったほうを向く。
向いた方向には路地が続いており、その途中に人が一人立っていた。
(あの人が鳴らしたのかな・・・)
そして歩くために向きを変えると。
次は破裂するような音が路地から響いた。
また振り向くと、立っていた人はいなくなっていた。
ある日、私は霧の住宅街の中を歩いていた。
横にあるコンクリートの壁が見えないほど霧が濃い。
しばらく歩いて、曲がり角があるはずのところで曲がろうとすると、壁に頭をぶつけた。
「いたぁ・・・」
ここに壁なんて無かったはず。
とりあえず戻ろうと後ろを振り向くと、霧が薄くなって、その先に人影が見えた。
こっちを向いてただただ立っている。
(いや・・・歩いてる?)
ほんの少しだが足を上げてこちらに近づいているように見えた。
するとその数秒後、霧が物凄く濃くなった。
そしてさらに数秒後、霧が晴れて、さっきの人影はいなくなっていた。
あるときふっと現われ、
すぐにふっと消える。
世界中どこでも現われる。
路地の中、裏道の中、森の中、霧の中。
水の中、穴の中、家の中、町の中。
いつか、見る。
いずれ、見る。
消える人影。
異界の人。