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召喚士、頑張ります。  作者: 泉あられ
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第八話 ー 最後の四鳥(しちょう)


 気付くと、辺りはもう暗闇となっていた。

午後十時を迎えた頃だろう。


「ーーこれで三鳥さんちょう目か。」

「はい、何とか。」

「シャッフー! もう夜だネ☆」


 ラクネスさんが辺りを見て、


「ここは街からかなり離れた孤島だ。今夜はここで野宿だな。」

「ソウソウ、魔物も近くにはいないヨー!☆ お腹空いたー!」

「そうだな…何か食べるか。」


 リーグさんが魔法袋を出現させ、中にある水やチョコレート、カップ麺やらを取り出す。



「今度は鍋でも食べたいネ☆」

「偶にはいいか。」

「冬にはぴったりですね!」

「イヤッハー! 今度用意しておくヨ☆」



 楽しい食事の時間。

 どれくらいぶりだろう。

 仲間っていいな。



 時間はあっという間に過ぎてーー。


 やがて私を含め、三人は寝袋に入った。


「正当化…か。」


 寝る前、ラクネスさんが呟く声がしたが、風の中に消されていった。








 明け方。


「おはよう。」

「おはようございます!」

「ハァイ、おはよう☆」


 挨拶をしていると、



 ひゅんっ


 ”それ”は近くの方で、一瞬だけその姿を現した。


「!」


 私もラクネスさんも、ほぼ同時に気が付いた。


「今の…」

「リザベルス…か…?」

「ギャアア、スリルさ・い・こ・う☆」


 ラクネスさんはちょっただけ考え、


「皆、この説は間違っていないのかもしれない。時間がない、急ぐぞ!」

「はい!」

「リョカりょかーい☆」



 しかしーー


 あれから何度も最後の四鳥しちょうを探しても、全く見つからないのだ。

今までは本を参考に探していたが、どこにもその姿はない。

 時間がないというのが、私達を余計に焦らせていた。


「ヒャッホウ! 見当たらないネ☆」

「まずいな…。また街が襲われる前に見付けねば。」


 ラクネスさんにも、焦りが見てとれる。


「でも、まだ街にも行ってないですよね…? 巨

大な時に見つけたら戦えばいいのでは…?」


 私の発言に、ラクネスさんははっとして、


「そうか…その通りだったな。 焦ってばかりだった。すまない。」

「そんな、『仲間に遠慮はいらない』じゃないですか。」


 目を伏せ、ラクネスさんは微笑む。


「…そうだな。 ありがとう、シェミィ。」

「いえ、仲間の力になりたいですし!」

「…成長したな、君は。」

「成長…ですか?」


「以前は戸惑う事が多かったが、今では仲間の意見まで指摘できるようになっている。充分成長したといっていいと私は思う。だが、それに比べて、私は…。」


 ラクネスさんの声に元気がない。


「そんな…そんなのラクネスさんらしくないです! ラクネスさんがいたからここまで来れたんです! 私の相談も聞いてくれたし、ラクネスさんは大事な仲間です! もちろんリーグさんもです!」


「……そうか。 二度目になる。シェミィ、ありがとう。」

「そんな事ないです。」


 恥ずかしくなり、思わず顔が赤くなる。

 ラクネスさんも、いろいろ抱えてたんだ。


「ヘーイ! すすすと飛んでくよー☆」


 リーグさんは相変わらずスピードが早く、ぐるぐると回りながら私達を待っていた。



 ありがた迷惑かもしれないけど、もっと皆の力になりたい。





 その日の夜だった。


「今日はこの位にして野宿しよう。そろそろ夜の一時だ。」

「はい」

「イヤッヒャー! お鍋タイムだネ☆」



と思ったら、




 グワアアアッ!



 三人揃って吹き飛ばされた。


「っ、何だこの風!?」

「きゃあっ!」

「イェイフー! ごめん魔物察知気が付かなかったヨ、忘れてた☆」

「忘れてたって鍋に夢中になっていたからだろう!」



 現れたのはーー


 念願叶って、最後の四鳥。

 そう、ブラックバードだった。


「僕のお鍋~!」

「そんな事を言っている場合ではないだろう! リーグ、鍋の前に明かりを!」

「お鍋…」


 言いながら三つ程の光る玉を魔法で出し、それぞれの下へと運んだ。

 それだけでも充分な程の明かりだった。


 ビュウっ、という音。

 風圧だけでその場から海辺に吹き飛ばされそうになる。


「なるほど、暗闇によってその存在を隠していた訳か。」


 ラクネスさんは不意を付き、ブラックバードの上に飛び込む。


「ラクネスさん、飛ばなくていいですか!?」

「平気だ!」


 私はとっさにミスちゃんを呼び出し、飛行する。


「イックゾォウゥ、ブラックバードちゃんは色的に光属性に弱いカナ? それ☆」


 リーグさんは光の球を作ると、ブラックバードにぶつけ、貫いた。


「召喚、オーク!」


 私は召喚して援護に回る。


 やがて、ラクネスさんがブラックバードの頭を貫く。


「ギギギイキャガア!」


 ブラックバードはレッドバードと同様に雄たけびを上げ、


「後は頼んだ、シェミィ!」

「はい!」


 私は少しだけブラックバードの近くに寄る。



「ーー聞け、黒き輝く獣よ。 我が命に応えよ。我が名はシェミィ・ユミアル。いざ、我がものとなり、従え!」




 ーーブラックバードは、他の四鳥しちょうと同じように、球体となって私に吸収された。






「やりましたね!」

「ああ、召喚士とは見事なものだ。」

「ブラボー☆ これでお鍋が食べられるネ!☆」


 リーグさん、本当にお鍋が食べたかったんだんだな。


 資金や食糧等は、ブラックバードを見付ける過程で揃えてある。

 リーグさんが先程の光る玉を密集させ、明かりも充分。

 野宿だというのに、今夜は豪勢な夕食となった。





「オッハヨゴサマー!」


 私達はリーグさんのその大声で目が覚めた。


「今日は早いな、リーグ。おはよう。」

「おはようございます!」

 

 リーグさん、よっぽどお鍋が嬉しかったんだな。


「後はリザベルスを探すだけだ。」

「リザベルス、本当に出てきますかね…。」


 私は不安を募らせる。


「あ、そうだ。」


 リーグさんが魔法袋の中から回復剤ポーションを四つ取り出し、二つずつ、私とラクネスさんに渡した。


「今まで使わなかったけど、緊急時に使ってネ☆ 飲んでも傷に塗ってもオッケー☆」


 珍しくリーグさんが真面目にくれた。


「ありがとう、リーグ。」

「ありがとうございます。」

「イェイハー☆ 気にしなくて言いヨー!☆」



「後は、私が四鳥しちょうに乗って囮になります。いつになるかわかりませんが、頑張ります。」


 私は最初に従えたイエローバードを召喚した。

 その上に乗る。


「ラクネスさん、危険ですが乗りますか?」

「では乗らせて貰おうか。心配いらない。」


 ラクネスさんを乗せ、私達は広大な海の上で待ち伏せをする事となった。






「来ませんね」

「まだ一日目だからな。根気よく待とう。」



 二日目。


「来ないネ☆」

「楽しそうだな、リーグ…。」


 三日目。


「来なぁぁい!」

「まだ三日目です。焦らず待ちませんか?」


 四日目、五日目と続き、近くの平原で野宿をし、食事を取りながら飛行していると、待つ事十日間。




 ようやくだった。




 ”奴”が現れたのは。




次回、最終話となります。

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