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召喚士、頑張ります。  作者: 泉あられ
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第二話 ー 賛同者

「はぁっ!? シェミィ、あんた本気で言ってんの!?」


 私が真っ先に思いを伝えたのは、親友の一人、ルアリーだった。


「あんなん追ってったって、死にに行くのと同じだよ!? どこにいったかわかんないし、せっかくレイさんが助けてくれたのに! あんた何言ってんの!?」


 怒鳴られるのも同然だ。

 私のしようとしている事は、あまりにも無謀で危険極まりない。自分でもわかっている。


「でも、またこの街をターゲットにするかもしれないよ!」

「そ、それは…。」


 ルアリーはう~ん、と唸って、


「今のところはどっかいっちゃったみたいだし、そこまでしなくても…。でもシェミィ、命は大事にしなよ。レイさんもシェミィがそういう事するの、望んでないよ。」

「ルアリー…。」


 ルアリーの言っている事はもっともだ。

 私にもしもの時があった時、天国にいるレイさんは決して喜ばないだろう。

 でも、


「封印が解かれたリザベルスは、またどこを襲撃するかわからないよ。私、襲撃される前に皆を助けたい! これ以上、レイさんのような犠牲者を出したくないっ!」


ーーオマエノセイデシンダノニ?


急に、心臓がドクリと音を立てる。


ーーマタオマエガヒトヲコロスマエニ?


「やめて…。」

「? シェミィ…?」



「やめてえええぇぇっっ!」

「ちょっ…シェミィ!」





「ここは…?」

「シェミィ! 意識を取り戻したのね! ここは病院よ。」

「病院…?」

「シェミィ、平気?」


 目の前に、お姉ちゃんとルアリーの姿があった。


「私、何で…?」

「あたしを説得中にいきなり崩れ落ちたの、覚えてない?」

「あ……! そうだ、こんな事してる場合じゃない!」


 私は慌ててベッドから立ち上がろうとしたら、二人に止められた。


「ルアリーちゃんから聞いたわ。 あなた、自分の命を何だと思っているの! あなただけのものじゃないのよ!?」

「……………。」


 私は何も言い返せなかった。

 当たり前だ。あんな大口叩いてたくせに、結局はこうして皆に助けて貰ったのだ。


「でもね、」


 お姉ちゃんは、はぁ、と深いため息をはくと、


「…賛同者がいたのよ。あなたの意見に。」

「え…。」


「入って。」


 ガラガラ、と扉を開けると、入ってきたのは銀髪で、年齢は私より大分上だろうか。

 腰にかけている剣が印象的な、クールな雰囲気を持つ女性だった。


「君がシェミィ・ユミアルか。」


 声も淡々しており、如何に冷静な人かと伺わせる。

 彼女は私の元へと近づいて来る。


「私の名はラクネス・アーレイド。君はこの街でも有名だからね。話はもう聞いている。」

「は、はぁ…。」

「私も大切な人が過去に”溶かされて”いる。今回の件で復讐も散々考えたが、それでは何も生まれない。そこで君の話を聞き、人々を守りたいと思ったのだ。…、もしかしたら、”復讐”を”守りたい”というように心の中で言い替えているのかもしれないがな。」


 彼女は苦笑した。

 意外だ。最初は落ち着いたイメージだったのに、こんな面もあったんだ。


「言い替え…。」


ーー先程助けたいと思った私も、もしかしたら心のどこかでーー


「よければ、私も同行させて頂けないか。」


 ラクネスと名乗った少女は、私に手を差し出してきた。

 考え事をしていた私は、思わず戸惑ってしまう。


「え? え、ええと…二人は…。」


 お姉ちゃんやルアリーは、呆れ気味に頷いた。


「…ありがとうございます。よろしくお願いします。」


 私は、彼女の手を取ったのだった。




「平気? シェミィ。 歩ける?」

「もう平気だよ、ルアリー。手間かけちゃってごめんね。」

「本当だよ。」


 私の旅の支度が済むまで、ラクネスさんには待ってもらっていた。


「お姉ちゃんも。」


 お姉ちゃんは深いため息をついた後、


「ルアリーちゃんと同じよ。心配して言ってるのに。全く、親の顔とあなたの頭の中を見てみたいわ。」


 頭の中まできたか。

 それは流石にラクネスさんにも失礼ではないだろうか。


「代わりに、ルアリーは私が送っていくから。

お姉ちゃんは私と一緒でいい?」

「好きにしなさい。」

「じゃあ置いてく。」

「…流石に私もそろそろ限界だわ。」

「ごめん、どうせ同じ家だもんね。」


 そうして、私はミスちゃんを召喚した。

 ちなみに、ミスちゃんは定員三名までだ。





「凄い…」


 空中から見る景色はまさに絶景だ。

 お姉ちゃんはミスちゃんに乗せた事がないから、特に感嘆している。


「なんで今まで乗せてくれなかったのよ、シェミィ。」


 やや不快そうに、お姉ちゃんは私を軽く睨んだ。


「え、誘ってもいつも忙しいって言ってたじゃん。」


 お姉ちゃんはため息をついて、


「…後悔したわ。空中から見る街の綺麗さといったら。」

「あ、そっか。お姉ちゃん魔法専攻だから鳥とか召喚できないんだっけ? 浮遊魔法とかは?」

「ちょっと浮ける位よ。こんな高さまでは浮けないわ。ルアリーちゃんは?」


 景色を眺めていたルアリーは、突然自分に話を振られ、少したじろく。


「え? あ、あたしも魔法専攻で、少しだけ浮ける位です。このミスちゃんには度々乗せて貰ってます。」

「ふふ、いいわね。あと、別に丁寧語じゃなくてもいいわよ。」

「は、はい」


 こんなあたふたしたルアリー、見た事がない。

 ルアリーも、景色を見ながらお姉ちゃんと私に遠慮していたのだろう。


「あ、あたしの家そこなので。失礼します。」

「またね、ルアリーちゃん。」

「はい。」

「オッケー、ミスちゃん、あの家まで!」

「きゅきゅ」







「準備はできたか」


 ラクネスさんの声が、閑静な路地に響く。


「お待たせしてすみません。」


 私がそう言うと、


「気にするな。あと、丁寧語でなくていい。私の事も呼び捨てで構わない。」

「え、では…ラクネス、よろしく。」


 ラクネスさんはぎこちなく振る舞う私を見て、微笑んだ。


「そんなにかしこまらなくていい。私達は既に仲間だ。仲間に遠慮するな。」


 つられて私も笑う。この人はとても優しい。


「話が反れるが、もう一人仲間に加えようと思う。」

「え?」


 思わず目が点になる。


「話は伝えてある。少し変わった奴だが…傷をおったら回復できる者が必要だろう。…出てこい、リーグ・フェンシア。」


 ラクネスさんが手招きすると、ボサボサの髪に眼鏡をかけた、リーグと呼ばれた男性が出てきーー


「イッヤホーウ! 君がシェミィちゃんね!」

「…はぁ」


 ラクネスさんの言う通り、変わった人だった。


「シェミィでいいです。あっと、あなたは…?」

「え、僕、知られてないの!? そんなぁショックだよ~、この聡明な僕を知らないなんてぇ~。」


 ……話が進まない。


「リーグは少し性格に問題があるが、腕は立つ。付き合いは長い。丁度魔導士を探していた時、話をしたら是非行きたい、と。だが、リーグが参加したいと言ってきた理由なんだがな…。」


 何やら、不穏な雰囲気が漂う。嫌な予感。


「”楽しそうだったから”、だ。」


 は?

 今なんて言いました?


「イエーイ! ズバリその通り☆ スリル最高ーー!」


 ラクネスさんは、やや申し訳なさそうに顔を伏せた。


「…すまない。 腕の立つ魔導士で、参加出来そうな者が彼しかいなくてな…。」



次回も日曜辺りに更新予定です。

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