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召喚士、頑張ります。  作者: 泉あられ
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第一話 ー 「リザベルス」

いきなり重い話ですm(__;)m

八話~九話程度で終了します。


暇潰しにでも。

 何年前だろうか。

その化け物は、やや液体に近い薄く広いものだった。

 特徴は、なんと「覆ったもの」を全て「溶かしてしまう」という非常に恐ろしい魔物だった。

 かつてない大惨事となった街。

 多くのものや、「人間」が溶かされてしまった。



 その化け物の名はー『リザベルス』。



 そこで街の人々は、今や伝説と言われた召喚士、メイス・クロイスに依頼をした。

 どうせ死んでしまうのなら、敵わないなら、やってみないよりずっといい。

 人々は、メイス・クロイスの召喚にかけたのだった。

 すると召喚されたのは、一匹の輝く「鳥」。

 この召喚獣のお陰で、「リザベルス」を封印し、人々は安心して暮らせるようになったのである。




「ってシェミィ、有名なこの話! 聞いてる!?」

「聞こえてるよ、お姉ちゃん。」


 私ーーシェミィ・ユミアルは、義理の姉であるフィレン・ア・レイジーにそう応えた。


「聞いてるってば。というより私が憧れているメイスさんの話、忘れない訳ないじゃん。」


 私は召喚士見習いの身だ。

 だから、人々を襲った魔物を封印したメイス・クロイスさんに憧れを抱いている。


「…まあ、それもそうだけど…。」


 お姉ちゃんはそれだけ言うと、身を翻がえして自室へと戻っていった。


「さて、と…」


 私は窓から外の様子を伺った。

 まだ朝で寒さも残るが、とても晴々としている。

 よし、親友と出かけよう!

 早速着替え、杖を持ち、足早に家から出ていった。



「いくよ、ミスちゃん!」


 そういって杖を前に突き出すと、地面に魔法陣が現れた。

 その中から光りながら出てきた召喚獣はーー鳥。

 この獣は、私が初めて召喚に成功した獣。

 そしてなんと、人の言葉を理解するという非常に賢い獣なのだ。

 私は周囲に「初めての召喚が人の言葉を理解する獣なんて、天才だ!」ともてはやされた。

 でも私はそういった事に興味はない。

 このミスちゃんといるのが、楽しくて仕方がないのだ。


 私は喚びだしたミスちゃんに飛び乗り、いつもの空の「散歩」へと飛び立った。


 元々、ミスちゃんは「ミスルヒーラ」という召喚獣なのだけど、私はミスちゃんって呼んでいる。

 だって私とミスちゃんは、『親友』なのだから。



 相変わらず空の旅は楽しい。

 街を一望できるので、とにかく心が踊る。


「あ、ミスちゃん! ちょっと下で止まって!」

「きゅきゅきゅ。」


 下降し、ミスちゃんが止まった。


「…あれ、シェミィじゃん!」

「ルアリー、久しぶり! 元気だった?」

「元気かと聞かれると…まあまあ元気かな。」

「今日は学校の帰り?」

「うん。シェミィはいいよね、特待生で。」


 かつて私達は、同じ魔導学校に通っていた。

 魔導といえど、魔法の勉強だけではない。

 ルアリーは魔法専攻だったけど、私は召喚専攻だった。

 幸い学校は帰りが遅くなったりはしなかったので、いつもルアリーと一緒に帰っていた。

 もう一人の『親友』である。


 ところが、私が召喚訓練時、先程述べたように初めての召喚で人間の言葉を理解できる獣を召喚し、賞賛された。

 学校からはもう何も教える事はないと言われ、特待生としてあっという間に卒業してしまったのである。


「偶々だと思うよ、ルアリー。」

「あ~羨ましい! 帰り寂しくなっちゃったじゃん!」


 冗談半分に笑ったルアリー。

 私もつられて笑う。


「じゃ、声かけてくれてありがとねー。散歩楽しんで~。」

「ありがと、ルアリー! またね!」


 手を振って、私はまた空の散歩を始めた。


(そうだ、久しぶりにレイさんにも会っておこう)


 私はミスちゃんに指示を出した。


「ミスちゃん、あの建物まで!」

「きゅ。」




 ーー神殿までようやく辿り着きーー

 ミスちゃんは入れないから、一旦消しておく。


「レイさん、お久しぶり!」

「ああ、シェミィちゃんか。久しぶりだね。」


 神殿の神官であるレイさんが応える。

 私よりずっと年上だ。

 そしてここは、


「リザベルス…恐ろしかったですね。」

「…そうだね。二度とあのような事がないよう、願うしかない。」


 ーーあの、『リザベルス』が封印してある神殿だ。


「いつまた復活するかわからない。僕が見守っているうちは平気だとおもーー」



 ビー! ビー!


 途端警報装置の音がなり、室内が赤、黄色等いろいろな色に忙しく変わっていく。


「レイさん、これって!?」

「まだわからない、一体何ーー」


 レイさんは、何か察したようだ。


「シェミィちゃん、逃げるんだ! これはリザベルスの封印が解けたんだ! 僕に構わず逃げて!」

「えぇ!? 待って下さい!」

「いいから逃げるんだ! 街の人々にも伝えて!」


 それじゃあレイさんはーー


「っ…」


 私は涙を堪えながら、神殿を出て、ミスちゃんを再召喚した。

 素早く、そして大声で叫ぶ。


「皆さん聞いて下さい! あの『リザベルス』が復活しました! 急いで避難して下さい!」


 避難と言っておいて、あの化け物から一体どうやって避難しろというんだ、と思いながら、私は一心不乱に叫んだ。

 街中の人々は玄関を開け、ザワザワとし始める。


 そこで、思いもしなかった展開が。

 リザベルスが、ひゅん、と飛び去ったのだ。


「え」


 今の、リザベルスだよね…?

 様子がおかしい。

 街の人々も呆気にとられている。


(他の星にでも飛んでいった…?)


 辺りを見渡す。

 街には被害はない、がーー


「!?」


 私は、驚嘆した。

 神殿だけが『溶かされて』いたのだった。



 私は急いで再度神殿へと向かった。

 間違いなく、この神殿だけが溶かされていた。


「レイさん、レイさん…っ」


 私はボロボロと涙を流しながら、”神殿のあった”場所で泣き崩れていた。


 私はーーー


レイサンヲミゴロシニシタノダ。


「ごめんなさい、ごめんなさいっ…」


 涙が止まらなかった。

 私が神殿に来なければ、レイさんが一人だったら、私を助ける為に時間を割かなければ、レイさんは助かったかもしれないのに。


「きゅ…。」


 不意に、慰めるようにミスちゃんが顔を寄せてくる。

 泣き止むのに何時間かかっただろう。

 ガタン、と扉が広く音がして。


「シェミィちゃん、落ち着いたかい。」

「ノカさん…。」


 私は泣きはらした目を擦り、声の主の方へ振り返る。私やレイさんをよく知る、年配の女性だ。


「君はよく頑張ったよ。それに、レイ君だって、君がそんなに自分を責める姿は望んでいないんじゃないかい?」

「…………。」

「レイ君に貰った命だ。どうするかは君次第だよ。」

「………私、次第……。」


 この時、私は決心したのだ。


 もう二度と、リザベルスのせいで犠牲になる人や、悲しむ人がいなくなるようにと。

 せめてー私がリザベルスと「決着」をつけようと。

 レイさんから貰った命、素直に生きていく為に使うべきだけどーー


 私は、リザベルスにぶつける。


 この命は復讐の為に使うのではない。


 ひとびとを、守る為に使うんだ。


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