57 スライムさんのお湯
よろず屋のまわりには、まだ雪がたくさん残っていた。
今日こそスライムさんと一緒に雪だるまをつくろうかな。
昨日のお茶を思い出す。
寒い日に温かいお茶は、とてもおいしかった。
そう考えながら、ふと思った。
あれはどうなっているんだろう。
私はよろず屋の横の雪の中を、ずぼ、ずぼ、と長靴で歩いていく。
たしかこのへんに……。
「あった」
お店の裏手にある水場。
雪の間に、いつもは流れてくる水があったけれども、今日はカチカチに凍っていた。
たぶん、昨日もこうだったんじゃないだろうか。
私はよろず屋に入った。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
スライムさんがカウンターの上にのった。
「あ、帽子」
「ふっふっふ。おしゃれでしょう」
スライムさんは、毛糸の帽子をかぶっていた。
白い、雪のような色だった。
「うん。とってもきれい」
「ふっふっふ。では」
スライムさんは帽子をとって、カウンターに置いた。
「あれ? どうしたの?」
「ちくちくするので。みためはすきなので、おいておきます!」
スライムさんは、帽子をぽんぽん、とさわった。
「あ、そうだスライムさん。ききたいことがあったんだけど」
「おかねを、たくさん、もうけるほうほうですね? えいむさんも、すきですねえ」
「全然ちがうから」
「ねえスライムさん、昨日、お茶をいれてくれたよね」
「はい。さいこうでしたか? さいていでしたか?」
「最高」
「やりました!」
「それで、水ってどうしてるの?」
「みずですか?」
「みんな凍ってるでしょ?」
「こうしてます」
スライムさんが用意したのは、やかんだった。
「ここに、こうです」
スライムさんはやかんを持って出ていくと、中に雪をたくさん入れた。
それを引きずってもどってくる。
途中から私が代わりに持ってきた。
「えいむさんには、いつも、くろうをかけますねえ」
「なに言ってるのさお前さん」
私たちはよくわからないことを言い合って、やかんをよろず屋の床に持ってきた台に用意した。
そしてスライムさんが、火の魔法石がついているという杖をくわえてきた。
「ふぉれれふ!」
私は受け取った。
「これです!」
「これで温めたの?」
「そうです!」
杖の先を、やかんの雪に向けると、みるみる溶けていった。
「おー」
「すごいでしょう!」
「うん」
どんどん溶けていくと、今度は中の水がぷくぷくと沸騰してきた。
「これをつかえば、みずはむげんだいですよ!」
たしかに、これなら外に水がずっと置いてあるようなものだ。
「スライムさん、これは便利だよ!」
「ふっふっふ! もっとほめていいですよ!」
「すごいよスライムさん!」
「ふっふっふ!」
「すごいよスライムさん!」
「はっはっは!」
「でも、スライムさんはふだん、どうやって持ってるの? 杖」
「はっはっ……、それはですね」
スライムさんは、私から受け取った杖を、頭に突き刺した。
「え!」
「そして、こうです!」
スライムさんはおじぎをするみたいにすると、杖の先がやかんに向く。
「なるほど……」
「ふっふっふ」
スライムさんは笑っている。
そうすると、スライムさんの体がぷるぷるゆれて、杖の先がだんだん下がってきた。
やかんの、水を入れる口に、杖の先が入ってしまう。
ぽん!
「わっ」
スライムさんが、ぴょん、と顔を上げた。
やかんの中の水が全部、蒸発していた。
「やっちゃいました」
「これは……?」
「ちかづけすぎると、こうなります」
「そう。危ないね」
「だいたい、さんかいに、にかいは、こうなります」
「危ないね!」
私はスライムさんから杖を受け取って、お湯をつくった。




