表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/414

51 スライムさんと二度寝対策

 私はよろず屋に入ってすぐドアを閉めた。


「いらっしゃいませ!」

 スライムさんがカウンターの上に乗る。

「寒いね」

「そうですね。なかなかです」

「息が白くなってたもん」


 私は息をはいてみた。

 店内でも、息が白くなる。


「スライムさんは寒くないの?」

「あんまりさむいと、こおってしまうので、ふべんですね!」

「あ、そう……」

 さすがスライムさん。


「私なんて、寒いとなかなかベッドから出られなくて。ついつい二度寝しちゃう」

「さむいと、おきられませんか?」

「うん。ちゃんと、すぐ起きたいんだけどね」

「さむくて、おきられない……。それなら、いいものがありますよ!」

「あるの?」

「はい!」


 スライムさんは奥に行くと、箱を引きずってもどってきた。

「これです!」

 開けてみると、中にはふわふわのふとんが入っていた。

 と思って広げてみたら、なんだかちがう。

 全体は四角いけれども、穴が空いていたり、開けるところがあったり。


「これは?」

「きる、ふとんです」

「着るふとん?」

「そうです。それをきれば、べっとにいながらにして、おきられるのです! りょうりつです!」

「おお……」

 発想の転換だ。


「きてみますか!」

「うん」

 私は、服の上から着るふとんを着てみた。


「うわー、ふわふわであったかい!」

 足首くらいまでの丈があるので、ぽかぽかだ。

「でしょう!」

 ふわふわで、とってもあったかいのに、全然重くない。

 ちょっと厚手の上着を着ているくらいの感覚だった。


「それは、こどもようで、おとなようもありますよ!」

「これ売れてるの?」

「まだ買った人はいませんね」

「そうなの? これを売ってるって、みんな知らないんじゃない? 宣伝した?」

「えいむさん、しりませんか? いいものというのは、うれるものなんですよ! すぐうれます!」

「うーん……」

 私は腕組みをした。


「スライムさん。いいものは売れると思うけど、全然知られてないのは、売れないと思うよ」

「そんなばかな!」

「だって、売れてないんでしょ?」

「たしかに!」

「うーん。でも、どうしたら……、そうだ」

「なんですか?」

「そうだ。私がそれを着て、町を歩いてみようか。宣伝になるよ」


 そうすれば、みんなこの着るふとんに興味を持ってくれるかもしれない。

「なるほど! さっそくやりましょう!」

「そうしよう!」



 私はスライムさんと、ちょっと大きな通りを歩いていた。

「スライムさん……」

 私は小声で言った。

「えいむさん! もっとはりきってください!」

「えっと、スライムさん……」


 人通りのある方へ行ってみて、気づいたことがあった。

 みんな、じろじろ私を見てくる。

 それはそうだ。

 ふとんを着て歩いている人がいるんだから。

 うっかりしていた……!


「スライムさん、そろそろ、終わりに……」

「えいむさん、むねをはって、げんきに!」

「あの……、これは室内用だったよ……」

「このまま、まちを2しゅうくらいは、しましょうね!」

「!! ……スライムさん……!」


 私はそれからすこし歩いたけれども、がまんできなくなって、スライムさんを抱えてよろず屋まで走ってもどった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ