403 スライムさんと10連無料
「いらっしゃいえいむさん!」
お店に入ると、スライムさんはなんだか楽しそうだった。
「こんにちは! どうしたの?」
「きょうは、おいわいです!」
「なんのお祝い?」
「おいわいをしたい、というきもちの、おいわいです!」
「? なるほど?」
「おいわいがあるからおいわいをするのではなく、おいわいをしたいからおいわいをする。そんなおいわいがあってもいい。そうおもいませんか!」
「うーん。……そうだね!」
「はい!」
私たちは、納得した。
「それで、おいわいって、なにかしてるの?」
私は、お祝いはお祝いなので、なにもしていません! それがお祝いです! と言われることを予想した。
「10れん、むりょうです!」
「10れん? 10れんってなに?」
「10かい、れんぞくのことです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「ということは……。なにかを、10回連続、無料っていうこと?」
「そう、だとおもいます!」
「知らないの?」
「くわしくは、しりません!」
スライムさんによれば、大きな町ではいま、10連無料が流行しているらしかった。
「そっか。じゃあ、考えてみよう」
「はい!」
「そもそも、10回連続にすると無料になるのか、10回連続することそのものが無料になるのか、どっちかな?」
私は思った。
「おなじ……?」
「10回連続が無料になるのと、10回連続にしたあと、無料になるのか、って言えばよかったね」
「……なるほど!」
スライムさんは考えた。
私も考えた。
「……これはもしかして、考えてもわからないやつだね?」
「はい!」
私たちは、深く納得した。
「じゃあ、なにを連続でやるか、考えようか」
10回連続が無料。
「まとあて、ですかね?」
スライムさんは言った。
そういうのもありそうだ。
「でも、的あてを10回無料って、お店としては、ちょっと大変じゃない?」
そんなに無料にしてしまったら、もうかるものも、もうからない気がする。
「そうですか? ふつうですよ!」
「スライムさんは、もうちょっと商売を考えようね」
「はい!」
返事は良い。
「じゃあ、やくそうが、10かい、むりょう……!?」
「それもダメだよ! と言いたいところですが、私は、このお店で、そんな感じで薬草を食べてしまっているので、あんまり強く言えないところはあります」
「えいむさんは、あじみも、かねているので、いいんですよ!」
スライムさんがなぐさめてくれた。
「10回連続っていうところにも意味があるのかな?」
「といいますと?」
「連続でやるものってなんだろう」
私は考えた。
「……きんとれです!」
スライムさんは言った。
「筋トレ?」
「きんにくを、きたえるために、とれーにんぐをする! それは、10かいせっとが、おおいです!」
私は、腕立てふせ、腹筋、などを想像した。
「つまり、10連とは、筋トレ10回連続だった……!?」
「おそらく!」
「でも、腕立てふせなら、無料だよね……?」
「……むむ!?」
「あ、ということは、町では筋肉を鍛えるのが流行してて、特別な器具があるとか……? それの使用料かな?」
「はいそうですそれです!」
スライムさんが、すかさず言った。
「本気で鍛える人が、試しにやってみるために10連は、無料。で、ものたりない人たちに向けて、そこからは有料……」
「! しょうばいの、けはい!」
「やりたくなってきた気持ちを、すくい上げる作戦だね!」
「しょうばいです!」
私たちは納得した。
「10連は、町の筋肉が生み出した仕事だったんだね」
「はい! えいむさんもやりますか!」
「やらない!」
「はい!」
私たちは、代わりに薬草10連をした。
「これ、ちょっとにがいね」
「はい!」
「大人の味だね」
「! はい!」




