391 スライムさんとおなら
「こんにちは」
お店の中に入ると誰もいない。
放りだしてどこかへ行ってしまった、というよりは……。
私はお店の裏手にまわった。
するとそこでは。
ぱん、という音とともにちょっと浮かび上がったスライムさんがいた。
「スライムさん!?」
「こんにちは!」
スライムさんが言った。
「いまの、なに? 新しい商品?」
「ちがいますよ! なまみの、すらいむです!」
スライムさんは言った。
「どういうこと?」
「ちょっと、おならをしてみました!」
「おなら!?」
「しりませんか? これが、おならです!」
スライムさんは言った。
「おなら? なんか、爆発した?」
「ちょっとしたものですがね」
スライムさんは、どことなくほこらしげだった。
「おならって、そんなに堂々とするもの?」
「? ぎゃくに、どうどうとは、だめですか?」
そう言われてしまうとわからない。
おならは、ちょっと間の抜けた音がするし、におうし、と考えるとあまり堂々とするようなものではなさそうだ。
でも、それが出ないと健康にも悪いという話も聞いたことがある。だとすると、においに気をつかう必要はあるけれど、堂々としてもいいのかもしれない。
私がそんなことを考えていると、スライムさんが、ぱくぱくと口を動かしていた。
「なにしてるの?」
「くうきを、あつめてます」
「空気を?」
「これがないと、おならがでませんからね!」
スライムさんは、ぱくぱくしている。
すると、スライムさんの体の中に、ちょっとずつ空気がたまっているのが見えた。
空洞が広がってきている。
スライムさんがぱくぱくをやめた。
空洞がさがっていく。
地面の近くまでいくと、ぽん、という音とともに、スライムさんがちょっと浮くほどの勢いで空気がはじけた。
「でました!」
スライムさんが、得意げに私を見る。
「すごい」
私は自然に言っていた。
「ふふ、そうですか?」
スライムさんがにやり。
「私の知ってるおならとはちがうかもしれないけど」
「ちがう……!?」
スライムさんが、びくり、とした。
「私の知ってるおならは、自然に出てくるよ」
「しぜんに! えいむさんのおならは、しぜんに!」
「ん? うん。でもスライムさんは、自分で体にたくわえて、出すよね」
「はい。えいむさんはすごいですね……」
スライムさんは、ちょっと力なく言った。
「え、どうして?」
「しぜんに。わたし、やっちゃいました? ってやるんですよね?」
「そんなやり方じゃないけど。においもあるし、迷惑になっちゃうから、こっそりだよ」
「ぼくにみせてください!」
「え、やだよ」
「どうしてですか! けちです!」
「ケチじゃないよ、だってくさいのに、スライムさんにしたくないもん」
「ぼくがいいっていってるんですよ! おねがいします!」
「やだ!」
私は走って逃げた。
「まってくださーい!」
スライムさんが追いかけてくる。
追いかけながら、ぱくぱくしている。
そして、ぱん! とはじけた音がすると、私の前にまわりこんだ。
「! 使いこなしてるね、スライムさん!?」
「えいむさんも、おねがいします!」
「……やです!」
「えいむさん!」
私とスライムさんの、おならをかけたおいかけっこが、いま、始まる……!!




