388 エイムと旧タイプ
「あ、えいむさん」
お店に通じる道を歩いていたら、スライムさんがいた。
なんだかふらふら歩いている。頭になにか、のせているようだ。
「こんにちは。どうかした?」
「これ、ぼくにはつかえないんで、あげます」
「これは?」
V、のような形をしている。
板かと思ったけれど、金属のようだった。中央の黄色の部分から、まっすぐな白くて短い角が生えているようにも見える。
「これをあたまに、つけてください!」
「頭に」
自分の額につけてみると、手を離してもくっついていた。
「おっ、さいのうが、ありそうですね!」
「才能?」
「に……、きゅーたいぷ、のです!」
「9タイプ?」
そのとき、頭の中で不思議な音がした。
私は振り返って手を握った。
手を開く。木の葉が入っていた。
「えいむさん!? きづいたんですか?」
「なんとなく。頭の中で変な音がして」
「へんなおと、ですか?」
金属が連続してぶつかるような音と、こもって響く金属音のようなものが混ざったような音、とでもいえばいいだろうか。
キリリリリン? ピリリリリン?
のような音というか。
「それが聞こえたら、なにか飛んできた気がして」
「かんぜんに、きゅーたいぷですね!」
「旧タイプ?」
また音がした。
「スライムさん、お店に入ろう」
私はスライムさんをお店の中に導いた。
するとほとんど時間がたたないうちに、ぽつ、ぽつ、と雨が降りはじめた。
屋根から、ザー、という音が店内に響き、外にはみるみる水たまりができていく。
「いまのもですか?」
「うん」
「さすがですね!」
「でも、旧タイプ? 古いのに、わかるの?」
「ふるいんですか?」
スライムさんが不思議そうにする。
「ふるいと、だめですか?」
「はっ」
例の音はしなかったけれど、ひらめいた。
「たしかにそうだね。古いから悪い、というのは、思いこみだよね」
「はい! このおみせも、ふるい、しょうひんのほうが、おたかいことが、おおいです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「私は、全然わかっていなかったみたいだ」
「だいじょうぶですよ! えいむさんなら、すぐわかります!」
「そう思う?」
「はい!」
「じゃあ、旧タイプ、がんばるね!」
「そのいきです!」
例の音がした。
私はカウンターの前でしゃがむ。
そのあと、スライムさんがぴょーん、とカウンターの上に乗った。でも、着地を失敗したのかよろけて落ちてくる。
私は、私の顔にぶつかるように落ちてきたスライムさんをキャッチした。
「わっぷ」
ふう、と腕の中をスライムさんを見た。
スライムさんが驚きのまなざしを向けてくる。
「えいむさん! やりますね!」
「ふふ、私、またやっちゃいました?」
「それはちがいます」
これはちがうらしい。
「あれ」
ぽろり、と角の片方が落ちた。
それをきっかけに、角みたいなもの全体が額から落ちて、カラカラ、と床で音を立てた。
「こわれちゃったかな?」
「そのようですね。ざんねんです、きゅーたいぷの、えいむさんが……」
「それ、なしでもできるようになったらいいね」
「! はい!」
スライムさんはその日、しばらく私に旧タイプの練習をさせていたけれど、私には、ちょっとむずかしかった。
「だい1わに、つづく……」
「え? なに?」
「なんでもないです! さあ、うしろから、やくそうがおちてきたときの、れんしゅうですよ!」
「はい!」




