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332 ゴールデンスライムさん

 涼しい風がふいていた。

 よろず屋に向かって歩きながら、今日のスライムさんはどんな表情をしているか考えてみる。

 笑顔、と見せかけて……。

 きりっ、だ。

 そう決めたときだった。


「うっ」

 目を細める。

 お店の前でなにかが光っていた。

 キラキラと輝いている。

 あれは……!


「スライムさんだ!」

「ふっふっふ! はっはっは!」

 スライムさんが高らかに笑っている。

 金色に光るスライムさんが笑っている!

 外の光を反射して、輝いている!


「えいむさん! いらっしゃい!」

「すごい!」

「はっはっは!」

「……」

「どうかしましたか?」

「ちょっとまぶしすぎるから、お店の中待っててくれない?」

「わかりました!」



「いらっしゃいませ!」

 お店の中では、スライムさんの輝きは抑えられていた。

「こんにちは。キンキラキラキンだね」

「はい! ごーるでんすらいむです!」

 スライムさんは、くるっとまわった。


 外では金一色で光っているように見えたけれど、どうやらそうではない。

 印象としては、スライムさんの中で、無数の、金色の小さい紙が動き続けているような感じだ。

 スライムさんは液体ではないけれど固体になりきっていないようなところもあるので、金が、ゆっくり、ただよっている。


「それ、どうしたの?」

「きんの、やくそうがあるときいて、たべてみたんですが……。じつは、やくそうに、きんをたくさん、はりつけただけだったんです!」

 スライムさんは、きりっ、とした。

 きりっとしたので、ちょっと正解としよう。


「にせものの、きん、やくそうです!」

「じゃあ、その薬草を食べちゃったからそんなことに?」

「はい! ぜんぶにせものでした!」

「全部」

 どれくらいあったんだろう。

 

「途中で気づいてたわけじゃないよね?」

「ごそうぞうに、おまかせします」

「体調はだいじょうぶ?」

「うわさによると、きんは、けんこうにも、ふけんこうにも、ならないようです!」

「そうなんだ。じゃあ、光ってるだけ?」

「はい!」

 本当だろうか。


「でも、このままなのも、ちょっと不安だよね」

「そうですね……。はねが、はえてきたりしたら、ちょっと、べつのすらいむっぽく、なってしまいますね」

 金で羽が?


「あれ?」

 よく見ていると、スライムさんが、ちょっと金色ではなくなっている。

 いや。


「頭の金がうすくなってきてるよ」

 金が、体の下側に落ちてきている。

 空中にあるわけではないからゆっくりとした動きだけれど、下に金が積もってきているのだ。


「あたまがうすくなってる?」

「そんなことは言ってないけど、もしかして、待ってたら金が集まってくるんじゃないかな」

「えっ!」

 スライムさんがぴょん、ととぶと、また金でいっぱいになった。



 しばらく待ったら、スライムさんの下側に金が集まった。

 スライムさんの下に薄く、濃い金が残っている。

「思ったより金はすくなかったね」

「そうですね?」

 スライムさんは自分の体をなんとなく見ていた。


「あと、ちょっと緑っぽいね」

 スライムさんの体が青く透き通っているからだろうか。


「みどりきんですね!」

「どうやったらいいかな。あ」

 私は、平べったい、大きなお皿を持ってきた。

 スライムさんに、その上に乗ってもらった。

 手で支えながらゆっくりと案内した。


 うつぶせになってもらう。

「ちょっと、口あけて」

「は」

 スライムさんは口を開けた。

 横から見ていると、スライムさんの下にたまった金が、ゆっくりと流れ始めた。


 口の中から、とろりと金が出てきて、お皿にたまっていく。スライムさんの青く透けた体でよく見えた。


 スライムさんの体から金が出てきた。スライムさんの体を通していない金は、想像よりも強い輝きを放っていた。


「出てきたね」

「はい!」

 スライムさんが、ぴょん、ととんだ。


「からだが、かるいです!」

 私はお皿を持ってみた。


「金って重いね」

「はい!」

「この金はどうするの?」

「……やくそうに、かけて、たべます!」

「だめ!」

 私は金を見て言った。


 ……私が食べたらどうなるんだろう。

「えいむさん、たべますか?」

「たべません!!!」

「!?」

 私たちは、薬草だけで食べた。

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