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287 スライムさんと雨宿り

「しゅっ、しゅっ、しゅっ」


 スライムさんが、よろず屋の入り口の屋根の下から、ちょっと出たり、ひっこんだりしていた。

「もふひはほ、ふらいふはん」

「えいむさんは、くいしんぼうですねえ」

 私は、口の中の薬草を飲みこんだ。


「どうしたの、スライムさん」

「なにがですか? しゅっ、しゅっ、しゅっ」

 スライムさんが、すばやい動きで出たり入ったりする。


「その動き」

「これは、ぬれてるようでぬれてない、でもぬれてるスライムです」

「ほほう。くわしく聞かせてもらおうか」

「ちょっと、あめがふってますよね?」

 私は空を見て、手を出した。

 するとたまに、ぽつり、ぽつりと手に雨粒が。


「降ってたんだね」

 今日は朝からどんよりと空がくもっていた。


「ぼくは、ぬれないように、でたり、はいったりしていました」

「そんなことが?」

「ぼくならできます!」

 スライムさんは、しゅっ、しゅっ、と屋根の下と外を行ったり来たりした。


「じゃあ私も」

 ちょっと出ると、顔に雨粒があたった。


「ぐわ」

「どうしましたか?」

「当たった」

「ふふ。まだまだですね! しゅっ!」

 スライムさんが、すばやく出入りした。


「すごい!」

「ふふ。まあ、あたりましたがね」

「当たったんだ! 全然そう見えなかった!」

「おっと。こつが、わかってしまいましたね」

「コツ? ……そうか。雨粒が当たっても、当たってないように見せかければ……」

「あたってないように、みえます!」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「こうしちゃいられない!」

 私は、屋根の外に出て、上を向いた。

 顔にすこしずつ、雨粒が落ちてくる。


「……」

「えいむさん?」

「……」

「さすがに、あたっているのでは?」

「当たってないのだ」

「あたってない……!? それで……!?」

「やってごらん」

 私はスライムさんを見た。

 さっきまでより、じわじわと、雨が強くなってきた。


 スライムさんがおそるおそる外に出てくる。

「! ふってますよ!」

 スライムさんはおどろいたように空を見ている。


 私はこっそり屋根の下にもどる。

「えいむさん、ふってますよね!?」

「そのようだね」

「はっ!?」

 スライムさんは私が雨宿りをしていることに気づいた。


 私は、そんなスライムさんを抱きかかえて、屋根の下に連れていった。

「ぬれちゃうよ」

「えいむさん……!? どのくちが、いっている……!?」

「ふふ。これは、対決だよ」

「どういうことですか?」

「雨にぬれないようにすばやいスライム、すばやイムさんに対して、雨に当たるかどうかよりもぬれないほうがいいから雨宿りはありがたいエイム。雨宿りはありがたイムの、対決」

「なんと!」

「どっちが、勝ちかな?」

 私が言うと、スライムさんはすこし考えていた。


「……すばやく、あまやどりをすれば……!?」

「!?」

「りょうほう、できる……。どっちも、かち……!」

「!?」

「どうですか!」

「……やられたね。さすが、スライムさんだよ!」

「はい! こうしちゃ、いられない!」


 スライムさんはすばやく、屋根の下と外を、出たり入ったりした。

「これが、すばやくあまやどりはありがたいむです!」

「私も!」

 私たちは、スライムさんがちょっと大きくなってくるまでその動きをくり返したのだった。

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