表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
281/414

281 スライムさんと爆破ボタン

「これ、なに?」

 よろず屋の、カウンターの端のほうに小箱が置いてあった。私の手のひらにのるくらいの大きさだ。

 箱の上部、中央に円形の段差がある。


「ほごほご」

「待ちましょう」

 私は、口いっぱいに薬草をつめこんでいるスライムさんがもぐもぐするのを、見守った。


「ふう。おまたせしました!」

「ほごご? ほごごご?」

「えいむさんが、やくそうで、くちがいっぱいに!」

 今度は私の口が薬草でいっぱいになっていた。


 私がもぐもぐするのを、スライムさんは見守っていてくれた。


「おまたせ!」

「はい!」

「それで、これはなに?」

「これは、ばくはぼたんです!」

「爆破ボタン?」

「はい!」

「あぶないよ!」

「それが、そうとは、かぎらないのです!」

「どういうこと?」

「ふふ」


 スライムさんは、また薬草に近づいた。


「口の中を薬草でいっぱいにする気?」

「しそうでしない、でもしそうなすらいむです!」

「それを止めはしないけど、その前に、これがなんなのか教えてくれる?」

「ばくはぼたんです!」

「聞きまちがいではない……」

「はい!」

「でも、そうとはかぎらないって?」

「どこが、ばくはつするかは、わかりません!」

「ええ?」


 スライムさんによると、爆発することはまちがいないのだけれど、どこで起きるのか、わからないのだという。


「それは、どのくらいの範囲の話?」

「せかいです」

「大きく出たね」

「せかいのどこかで、ばくはつがおきるので、あんぜんです」

「スライムさん。それはおかしい」

「!?」

「スライムさんは、自分が爆発しなければそれでいいっていうの?」

「!!」


 スライムさんは、ぷにゅ、とつぶれた。


「ぼくは、じぶんさえよければいい、そうおもっている、すらいむやろうでした」

「わかってくれた。わかってくれた?」

 スライム野郎?


「こんなものを、きがるにおしたら、いけませんよね」

「気軽でも、気重でもだめだよ」

「わかりました。じゃあ、さいごにいっかいだけいいですか?」

「だめだよ」

「わかってます!」

「なんでそんなこと言ったの?」

「……いまのは、えいむさんをためしました!」

「!?」

「えいむさんが、さいごだったらいいよ。そんなことを、いうひとだったら、ぼくは、ゆるさないところでした! でも、えいむさんは、えいむさんでした! よかった!」

「そっか」

「はい!」

「じゃあ、これはどうするの?」

 私は、爆発ボタンの箱を横から持った。


「あっ」

 スライムさんが言ったとき、私の体がすこし浮いた。

 下から押されるように、ちょっとだけ。せいぜい、手のひらの厚みくらいだろうか。


「えいむさんの、したで、ばくはつしました!」

「ええっ!?」

「ぼたんは、よこにあります!」

「ええっ!?」

 私は急いで爆破ボタンを置いた。


「上の、ここじゃないの!?」

「それは、ささやかな、かざりです!」

「迷惑な!」

 押した感触もなかった。


 私は床を見る。

 目立った傷はない。


「いまのが、爆発?」

「はい」

「小さくてよかったよ」

「おおきさも、いろいろな、しゅるいがあります!」

「絶対あぶないから、なんとかしないと」


 私は、スライムさんに凍らせる魔法石を出してもらって、爆発ボタンを完全に凍らせてから、ふかふかの箱に入れて、しっかりと封印した。


「絶対に開けないようにしないとね」

「はい! ぜったいに!」

「絶対にね」

「はい! ぜったいに! えいむさんも、きをつけてくださいね!」

「私にも責任が!?」


 絶対に開けちゃだめだぞ。

 絶対だぞ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ