275 スライムさんとエアコン
お店で、スライムさんが持ってほしいという大きな、でも軽い盾を片づけてあげた。
「くろうをかけますねえ、えいむさん」
「いいっこなしだよ、スライムさん」
「……こんなに、よくしてくれるんだから、えあこんを、あげたいですねえ」
スライムさんは言った。
「えあこん?」
「そうです。それさえあれば、どんなにあついときでも、さむいときでも、むしむししてても、かいてきにすごせるんです!」
スライムさんは、むふふふ、と笑った。
「そんなものをうれば、うれすぎて、せかいの、すべてのごーるどが、あつまりますよね?」
「それはわからないけど、たしかにすごそう」
「でしょう! それだけの、ごーるどがあれば、えいむさんを、いっしょう、あそんでくらせるようにしてあげます!」
「……一生遊んで暮らすって、遊ぶのが日常になったら、遊ぶっていうことがよくわからなくなりそうだね」
「! はい!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「それで、えあこんって、どういうものなの?」
「それは……」
スライムさんは、カウンターの裏に行って、薬草を食べた。
カウンターの上にもどってくる。
「ぐたいてきには、よく、わからないんですよ……」
「いまどうして薬草食べたの?」
「でも、そうぞうは、できます」
「薬草は関係ないんだよね?」
「まず」
スライムさんは、カウンターの上を、ゆっくり、いったり来たりし始めた。
「あついとき。すずしくなりたいですね?」
「うん」
「さむいとき。あったまりたいですね?」
「うん」
「これは、ぎゃくのことを、いっています。つまり?」
「どういうこと?」
「あ、そういえば、へやのくうきが、よごれていても、きれいにできるそうです」
「ここで効果の追加」
「ということは、どういうことか。こうです!」
スライムさんは、びしっ、と言った。
「ひとつのもので、ぎゃくのことはできない!」
「うんうん」
「ということは、これはおそらく、きもちのもんだいです!」
「気持ち」
「はい! えあこんとは!! きもちをととのえるものだ!!」
ドォォォォン! とスライムさんは言った。
「そうか。どうやって、そんな、いろいろなことをするのかと思ったら、気持ちの問題か」
「はい!」
「だとすると……。えあこんの正体は!」
「はい! ぼくたちの、こころのなかに、あります!」
「!」
そうだったんだ。
えあこんは、私たちの中に、最初からある。
「えいむさん。ぼくひとりでは、わからなかったとおもいます」
「スライムさんひとりでできてたけどね」
「だれかに、はなす。それは、そうぞうするよりも、おおきなことなのです……」
「なるほど……。でも、たくさんゴールドを稼げなくなっちゃったね」
「そんなものより、ぼくらは、たいせつなものを、てにいれたじゃないですか……」
スライムさんは、遠くを見た。
「そう、えあこんです……」
「えあこん……」
「ぼくらは、えあこんと、ともに、あります……」
「そっか……」
私も遠くを見た。
「でも、空気が汚れていても、きれいにできるって、なんだろうね……」
「! なんでしょうね……」
私たちは、心を落ち着けて、えあこんを感じた。




