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259 スライムさんと作家

「うん?」


 よろず屋の外に誰かいる。

 スライムさんだ。

 

 草原で、スライムさんが、空き箱を転がしている。

 体当りするように、どん、とあたって、箱がころころ。

 どん。

 ころころ。


「なにしてるの?」

「あ、えいむさん!」

 スライムさんが、しゅっしゅっ、と左右に動いた。


「このすばやいうごきは、てをふっているうごきを、ひょうげんしています」

「なかなかだね!」

「はい!」

「こんにちは」

「こんにちは!」

「それで?」

「あ、これは、ぼくが、さっかになるれんしゅうです!」

 スライムさんは言った。


「作家?」

「しりませんか?」

「本を書いたりする?」

「そうです! そのさっかです!」

 スライムさんはぴょん、ととんだ。


「じゃあ、なにか、かいたほうがいいんじゃないの?」

「えいむさん。さっかには、にしゅるいあります」

「二種類?」

「ほんをかくさっか。それと、なにかを、けとばすさっかです」

「けとばす?」

「はい。さっかというのは、まじめになにかかくひと。そのほかに、けとばすひともいるんです!」

「そんな人が」

「はい。おちているものを、けって、しかも、それをみているひとが、よろこびます」

「どういうことなんだろう」


 けったら、それを見ている人が喜ぶ?


「それをきいたとき、ぼくは、こうおもいました」

「なに?」

「なにかを、かくより、なにかを、けったほうが、らく……。らく……!」

「たしかに……!」


 書くには、いろいろ調べたりしなきゃいけない気がするけど、けるなら、ければいい。

 

 スライムさんが、しゃっ、しゃっ、と左右に動いた。


「手を振ってる?」

「これは、きぶんがもりあがって、はしゃいでいるだけです!」

「……でも、けるのもむずかしいんじゃないの?」

「えっ?」

 スライムさんが止まった。


「見てる人が、喜ぶけりかたなんでしょ? それはそれで、いろいろ、調べたり、練習が必要なんじゃない?」

「そういえば、くにと、くにの、あらそいにも、なるとか……」

「国と国の争い!?」

 なんだか大事になってきた。


「それを、みているひとが、もりあがりすぎて、あらそいになったり……」

「やめなよスライムさん! それなら、ただ難しいだけの作家のほうがいいよ!」

「そう、ですかね?」

「国の国の争いって、戦争なんじゃない?」

「!」


 スライムさんは、きりっ、とした。


「せん、そう……」

「スライムさんが戦争に関わるの、嫌だよ」

「そうですね! ぼくも、いやです!」

「それに、スライムさんは、よろず屋の店主でしょ?」

「はっ」


 スライムさんは、きりりりっ、とした。


「忘れてたの?」

「あたりまえのものほど、わすれてしまう……。いま、ぼくは、ぼくをとりもどしましたよ!」


 ドン!


「やったねスライムさん!」

「はい! ぼくは、もっと、らくなしごとを、さがします!」

「スライムさん?」

「はい!」

「いい返事だね」

「はい!!!」


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