252 スライムさんとノーメル賞
「のーめるしょう、ほしいです」
スライムさんにもらったお茶を飲んでいると、スライムさんが急に言った。
「飲める賞?」
「のーめるしょうです!」
「ノーメル賞?」
「はい。すごいひとに、あたえられる、しょう、らしいです!」
「ふうん」
聞いたこともない賞だけれど、世間にはいろいろな賞がある。
きっとノーメル賞というのもあるのだろう。
「賞だったら、だいたい、すごい人に与えられるんじゃない?」
「ちがいます。そんじょそこらのしょうとは」
スライムさんが倒置法で言った。
「のーめるしょうは、せかいいちです!」
「なるほど。スライムさんは、世界一の自信があるんだね?」
「ざんねんながら、ぼくといえど、せかいいちかどうかは、わかりません。せかい45、くらいかもしれません」
「すごいね」
「すごいですか?」
「世界45だったら、世界一みたいなものじゃない?」
「! やりました!」
スライムさんが、流れるように横に動いた。
「でも、ノーメル賞は、世界一なんだよね」
私の言葉に、スライムさんは、いいえ、と言った。
「のーめるしょうは、いろんな、ぶんやがあるので、どうりつ、せかいいちが、いくつか、あります!」
「同率?」
「はい! のーめる、あしがはやいでしょう、とか、のーめる、ちこくしないでしょう、とか、だとおもいます! ですから、せかい45でも、かのうせいが、あるのです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「ノーメル頭がいいで賞とか?」
「でしょう! おそらく!」
「スライムさんは、なにを狙ってるの?」
「おそらく……」
スライムさんは、ちらっとまわりを見て、声をひそめた。
「のーめる、すらいむしょうが、あるとにらんでいます……!」
「ノーメルスライム賞が? それは、スライムさんにぴったりじゃないか……!」
私も声をひそめた。
スライムの中では、スライムさんはかなりのものだろう。
スライム賞。現実味をおびてきた。
「そうなんです……! でも、きになっていることが、あります……」
「なに?」
「それは、のーめるしょうの、うんえいが、ぼくが、ここにすんでいることを、しらないのではないか、ということです……!」
「それはたしかに問題だね……!」
「でも」
スライムさんは、またちょっとまわりを見た。
「ぼくは、あえて、だれにも、おしえないつもりです」
「どうして? ほしいんでしょう?」
「えいむさんと、いっしょに、じゅしょうします!」
「私と?」
「はい!」
スライムさんは、力強く言った。
「えいむさんと、どうじ、じゅしょうです!」
「でも、私はノーメル賞なんてもらえないと思うよ。世界45どころか、世界何百万かもっとか、ずっと下だと思うし」
「のーめる、えいむしょうができたとしたら……?」
「! エイムの中で、私が、一番になれる瞬間が、来るかもしれない……!?」
「……きづきましたね……」
スライムさんが、おごそかに言った。
「えいむさん。そのときには、いっしょに、のーめるしょうの、うんえいのところまで、いきましょう」
「わかった!」
私たちは、固い決意をして、外を見た。
それからいつものように、薬草を食べた。
なにを努力したらいいのか、わからないので、いつもどおりにしてみた。
どうだろう。
もらえるだろうか!




